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英雄を夢見た少年は、王国の敵になる ―リベルタス―  作者: REI
第3章 隠蔽された過去 南の都編

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第95話 溶け始めた時間

 焚火の音だけが、夜を刻んでいた。

 長い過去の話の終わりとともに、アランは静かに目を開ける。

 頬を伝う温かいものに気づき、指で拭う。

 それが涙だと、ようやくわかった。

「僕の余計な話まで、聞いてくれてありがとう。」

 アレンの声は、いつもより少しだけ優しかった。

「お前が背負う必要はなかったはずなのに、俺は知らなかった。」

 アランは笑おうとしたが、声が震えていた。

 知らなかった――自分の知らない弟の時間。

 封印の陰で、どれほどの孤独と戦ってきたのか。

 冒険者になりたいと言っていたのは、アレンのほうだった。

 そして、騎士に憧れていたのは、自分だった。

「皮肉なもんだな」アレンがぽつりと言う。

「兄さんが冒険者で、僕が騎士だなんて」

「ああ。でも……それでよかったんだ。今はお前の方がずっと騎士らしい」

 アランは夜空を見上げた。星々が、淡く瞬いている。


「俺は、どんな立場でも守る側でいる。

 国でも、仲間でも、民でも、もう、何も奪わせない。」

 アレンは黙って頷いた。

 その眼差しの奥で、長く凍てついていた氷が静かに解けていく。

 二人の間に言葉はなかった。ただ、焚火が小さくはぜる音が続いていた。

 やがてアレンが立ち上がり、マントの裾を整える。

「明日からだな」

「ああ。――嵐が来る」

 夜風が通り抜ける。炎が揺れ、影が重なった。

 その影は、もう過去に怯える兄弟ではなかった。

 リヴァレスを背負う、二つの灯だった。

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