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第75話 襲撃、不都合なもの達

「……来たな。」

 アレンが剣を抜いた瞬間、闇の奥から仮面の群れが姿を現した。

 黒布の外套、無機質な白い仮面。

 その背後には、冷たい魔力の波がうねる。


「くそっ……奴ら、また――!」

 リィナが身をかがめ、指先で床に罠の符を刻む。

 カチリと魔導線が走り、彼女の周囲に淡い光輪が展開された。


 仮面の一人が、前へと進み出る。

 その声は、男とも女ともつかない、不気味な響きを帯びていた。

「――知ってはならぬ真実を知ったな。

 残念ながら、ここで全員終わりだ。」


 冷たい声が、広間に響く。

 それは怒りではなく、任務を遂行する機械のような静けさだった。


「“宰相の犬”か……!」

 ラースが唸り声を上げる。

 だが仮面の奥の瞳は何の感情も宿していない。ただ、破壊と沈黙だけを命じられた者の目だった。


「配置が違う……前とは比べものにならん。戦力を分けて、包囲してやがる。」

 ラースの低い声に、アレンが頷いた。


 アランは剣を構え、視線を前に向ける。

 宰相の影が脳裏にちらつく。――あれほどの情報を掴んでしまった以上、口封じに動くのは当然だ。


 次の瞬間、仮面の一人が印を切り、魔力を放つ。

 烈風が爆ぜ、瓦礫が吹き飛ぶ。古代装置の外殻が、悲鳴のような音を立てた。


「装置は回収するぞ!持ち帰らないと証拠にならない!」


 レオンが叫び、両手をかざす。

 瞬時に幻術の陣が展開され、空間そのものが歪む。

 敵の視界が狂い、互いに誤射を始めた。


「……さすが、頭脳派。」

 リィナが軽口を叩きながら、縄を投げ放つ。

 魔力を帯びた縄がうねり、二人の仮面兵の手足を絡め取った。

「ほら、じっとしてな!」


 だが、拘束された仮面兵はなおも暴れ、手のひらに紅い紋章を浮かべる。

「あれは!?自爆符か! 離れろッ!」

 ハルクが素早くリィナの腕を掴み、床に引き倒す。

 爆発の衝撃波が掠め、髪が舞う。


「……危ねぇ。お前、いつもギリギリだな。」

「そっちこそ、ナイスフォロー。」


 背後で金属音が響く。

 ボリスが巨大な鍋盾を構え、二人を庇っていた。

「遊んでる場合じゃねぇ! ラグナさん、下がれ! こっちは俺が持つッ!」

「助かる!」


 ラグナは手元の装置を抱え、制御盤の魔法陣を保護する。

「これ以上の衝撃は危険だ! あと一撃で崩壊するぞ!」


 アレンが剣を振り抜き、仮面兵を弾き飛ばす。

「ラース! 右側の通路を押さえろ! 退路を確保する!」

「了解だ、公爵殿!」


 かつて仲間同士だった二人が、今は背中を預け合う。

 

 幻影と煙、火花と呪文の連鎖。

 遺跡の空間全体が、まるで古の戦場を再現するかのように揺れていた。


 ――そして、装置の紋章が閃光を放つ。

 アランの瞳が金に染まり、世界の音が一瞬、遠のいた。


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