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第72話 遺跡の奥、光を求めて

砂煙がまだ薄く漂う遺跡の廊下。瓦礫が散乱し、崩れた天井の影が不気味に揺れていた。


「アラン……どこだ?」


レオンは掌を前に突き出し、薄い光を纏った魔法陣を床に展開した。

小さく脈打つ幻影魔法が、遺跡内の空気を鋭く裂き、仲間たちの位置を浮かび上がらせる。


赤い点が二つ――アランとアレン。

倒れかけのラースの傍に立つ二人の姿が確認された瞬間、レオンは眉をひそめた。


「いた……無事か」


瓦礫の山を駆け抜け、リィナが静かに足音を立てながら進む。トラップ解除のために手先を滑らかに動かし、崩れかけた通路も、障害物もものともせず進む。


「ここまで……来たぞ」


ボリスは大きな盾を前に構え、倒れた岩や飛び出す瓦礫を次々と払いのける。


「心配すんな!俺が盾になる!」


その横をハルクが軽やかに駆ける。


ラグナは測量用の道具を片手に進みながら、古代文字や構造の変化を読み取り、通路の安全を逐一確認する。


「こちら、足元注意。崩落の兆候がある」


瓦礫の山を一つ、また一つと越え、レオン達はついにアランとアレンの視界に入った。


血まみれの兄弟を目にした瞬間、誰もが一瞬息をのむ。だが、すぐに互いの目が合い、無言の確認が交わされる。


「無事か……」


「ええ、まだ立ってる」


緊迫した沈黙の中、砂埃を払いのけるようにアランが剣の柄を握り直す。


その背にはアレンが並ぶ。


二人の姿に、レオンたちは自然と身構えた。


戦場の空気が、瓦礫の隙間を駆け抜ける風のように、全員の神経を研ぎ澄ませていた。


「さあ、先に進むぞ。まだ終わってはいない」


声をかけるレオンに、リィナがうなずく。ボリスは盾を構えながらもゆっくりと歩みを進める


一瞬の静寂が破れる戦いの余韻を背負いながら、チームは遺跡の奥へと歩を進めた。


砂煙がゆっくりと下がり、瓦礫の隙間に光が差し込む。


アランとアレンの血まみれの姿を目にした一同は、思わず息を呑んだ。



「……ちょっと待て。お前ら、無理すんなよ」



レオンが眉を寄せ、真剣な目でアランとアレンを見やった。


「これ以上奥に進むなら、まずは傷を癒すべきだ。無理して進むのは危険だぞ」


アランは剣を握り直し、肩の痛みに顔をしかめつつも首を振る。


「……ここで引き返すなんて、できない。真実が、この先にあるんだ」


レオンは少し困ったように肩をすくめた。



「……そりゃそうかもしれないが、無茶はするなよ。君らの命が危ない」



そこへボリスがふざけた笑みを浮かべ、両手を広げて言った。



「ほらほら、アラン兄貴、アレン、ここは俺に任せて先に行っちゃえ! 俺が盾になって……って、盾がボロボロだなぁ!これじゃ俺も先に進めねぇや!」


「ボリス……本気で言ってる?」


リィナが眉をひそめ、容赦なくツッコミを入れる。


「ふざけてる場合じゃないでしょ! そんなこと言ってるから、あなたはいつまで経ってもデブって言われるんだってば!」



ボリスは手を挙げて、笑顔でごまかした。



「えー?俺、デブじゃなくてムードメーカーだから……。」


アレンは血だらけの体で微かに笑みを浮かべ、アランの背を押しながら言う。


「兄さん、俺はもう動けない。だから、頼む……兄さんだけは、この先に進んでくれ」


アランは背筋を伸ばし、弟の言葉を胸に刻む。


「……わかった。俺がやる」



ラグナも測量道具を抱えながら、瓦礫の隙間を慎重に進む。


「……無茶は禁物ですよ。でも、先に進むしかなさそうですね」


一同は互いに目を合わせ、短い頷きで意思を確認した。

その時、 瓦礫と砂煙に包まれた通路に、再び足音が響く

アレンの肩越しに見える影が近づき、次第に形を現す。



「副団長、無事か!」


声の主はオリヴァーだった。体格は大柄で、筋骨隆々。


白牛騎士団らしい堂々たる立ち姿で、岩のような拳を軽く握りながら通路を駆けてくる。


「……オリヴァー……よく来てくれたな」


アレンは血に塗れた手をわずかに振り返し、安堵の表情を浮かべる。


続いて、クローナとイダスも姿を現した。


「大丈夫……?」


黒亀騎士団のイダスはおっとりとした声で問いかける。

小柄ながらも背筋は伸び、柔らかな笑みの奥に覚悟が宿っていた。


「もう大丈夫だ。仮面の連中は逃げていった。このまま先に進めるぞ」


金馬騎士団のクローナは短く頷き、少し不器用ながらも決意を表す。


アレンは力なく笑った。

「兄さん、、、アランは、もう進む気でいる。肩を貸してくれないか?俺も真実が見てみたい。」


アランは剣を握り直し、アレンを支える騎士達に向かって微かに手を挙げた。


「頼んだぜ、弟を」


オリヴァーが笑い、通路を踏み固めるように歩きながら言う。


「心配すんな。俺たちがついてる。ここで止まるわけにはいかないんだろ?」


クローナは足元を確認しつつ、慎重に進む。


「瓦礫がまだ不安定ね。気をつけて」


イダスはアレンの隣に並び、そっと肩に手を添える。


「支えが必要なら、遠慮なく言って。みんなで進みましょう」


一同は目を合わせ、互いの存在を確認する。

砂煙と瓦礫が入り混じる通路に、息を合わせて足音が重なる。

ボリスはいつもの調子で、やや間を持たせながら声を張った。


「おっと、ここで俺が前に出るべきかな。まさかの“イケメン”登場!?」


リィナが即座に突っ込む。


「ボリス、さっきも言ったでしょ! 冗談ばっかり言ってないで、先に進むのよ!」


ラグナは測量板を抱えながら、通路の奥を慎重に観察する。

「……ここを抜ければ、最深部だ。気を緩めるな」



アレンは小さく息をつき、微かに笑みを浮かべる。


「……何があるんだ。俺たちの手に負えるものなのだろうか。」


アランは弟に頷き返し、剣を握り直す。


「一緒に行くぞ、みんな。ここで止まるわけにはいかない」


一同は互いに頷き、瓦礫の間を縫うように進む。

砂煙が残る通路の奥、深まる闇の中で、彼らは再び一致団結し、遺跡の核心へと足を踏み入れた。

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