第61話
──そのときだった。
遺跡の入り口から、轟音が響いた。
「アラン! 爆発だッ!!」
レオンの叫び。
アレンもすぐさま気配を察知し、後方を振り向く。
遺跡の門が、内側から爆裂する。
衝撃波とともに、黒煙が吹き上がり、石片が空を裂いた。
視界が真白に染まる。熱と砂の嵐が襲いかかる。
「伏せろォ!!」
ボリスの怒声と同時に、爆発が周囲を呑み込んだ。
砂漠の静寂は、盗賊団が仕掛けた大爆発によって完全に吹き飛んだ。
――ゴォン、と鈍い地鳴りが響いた。
直後、遺跡の入り口を中心に、爆風が轟いた。
「ッ――!?」
アランとアレンが一斉に身を引き、周囲を警戒する。
舞い上がる土煙。視界を覆う赤茶けた砂塵。
天を突くような爆音とともに、崩れた石材が飛び、門柱がぐらりと傾いだ。
「な、なんだ!?」
「爆発……!罠か!?」
「待機部隊、全員散開!第二陣、右側の崖を確認しろ!」
騎士たちが怒号を上げながらも混乱に包まれていく。
その中を、数人の黒装束の影が、砂塵を縫うように駆け抜けた。
「なっ……侵入者!?」
「ちがう、あれ……!」
リィナが目を凝らして低くうなる。
「盗賊団だ――遺跡に向かってる!」
「なにィ!」
アレンが叫ぶ。
「おい!お前ら、何をしている! あれを止めろ、追いかけろ!」
だが、騎士たちはすぐに動けなかった。土煙の中で敵か味方か見分けがつかず、地形も崩れ、足元が不安定になっている。
「ちっ指揮が乱れている!イダス、クローナ、オリヴァー、俺と来い!」
アレンは地を蹴って、瓦礫を乗り越え、剣を構えたまま遺跡入口の方へ駆け出す。
背後から数名の騎士が続く。
その時、レオンがアランのもとに駆け寄り、口を開いた。
「アラン!あのままじゃ遺跡の中が盗賊団に荒らされるぞ!どうする!?」
アランは、一瞬アレンの背中を見つめ、それから視線を落とした剣に移す。
(弟との決着は――いずれまた。今は、俺たちのやるべきことを)
「俺たちも行くぞ!」
アランたちもまた、爆風の残る砂塵の中を駆け出していった。