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英雄を夢見た少年は、王国の敵になる ―リベルタス―  作者: REI
第3章 隠蔽された過去 南の都編

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第61話 砂漠に響く破砕音

そのときだった。


遺跡の入り口 乾いた石組みが陽光に白く浮かぶ静寂を、まず風が切り裂いた。空気が一瞬止まり、遠くの地平線まで届くような、低く重い音が腹に染みこんだ。


誰もがそれがただの風ではないと直感した瞬間、レオンの声が裂けた。


「アラン! 爆発だッ!!」


レオンの言葉が落ちるより早く、遺跡の門が内側から弾けた。


最初は小さな破裂音いや、それは錯覚だった。


瞬間、牙をむいた衝撃が四方に跳ね返り、黒煙の柱が一斉に噴き上がる。

石片が空を裂いて舞い、光が一瞬、眩く裂けた。


耳鳴りが鼓膜を押し、熱が顔を焼いた。


砂粒が刃のように頬を叩き、口の中に鉄の味が混じる。


視界は真っ白になり、目の前の景色が砂のヴェールに消えていった。



「伏せろォ!!」



ボリスの怒声が爆風の向こうからぶつかってきた。


彼の体が反射で飛び出し、巨大な鍋の盾で仲間をかばう。


鍛え上げられた腕が、吹き飛ばされそうな者たちを押さえつける。


アランは刹那、腕に走る痛みと砂の感触を確かめながら、体を低く沈めた。


アレンは後方でぐらりとよろめき、剣を握り直す指先に力を込めていた。


中景では、騎士たちの列が一斉に乱れた。

号令が飛び交うが、土煙のせいで声は千切れ、誰に届くかわからない。


門柱の根元が崩れ、一本が轟音とともに傾く様は、見開いた目にすら遅れて届いた。


地面がゴォンと低く鳴り、砂漠全体が一度息を飲んだように揺れた。


「な、なんだ!?」


「爆発……!罠か!?」


「待機部隊、全員散開!第二陣、右側の崖を確認しろ!」


指揮は混乱の中で断片的に続く。

だが、混乱の隙間を縫うように、別の動きが現れた。


砂煙の中、黒い布が流線のように走る──数人の影が低く、素早く遺跡へと向かっていた。


近づくにつれ、その輪郭が盗賊の黒装束だとリィナの目が告げる。彼女は瞬時に顔を細め、低くうなった。


「なっ……侵入者!?」


「ちがう、あれ……!」

「盗賊団だ――遺跡に向かってる!」


影は群れを成して、瓦礫を縫うように進む。

遠景で見れば、砂嵐の中で小さな人影が群れを作り、まるで砂そのものが意思を持ったかのように動いている。


遺跡を囲む輪郭が振動で歪み、広い砂漠の静謐が一点の破壊で割れたことが、遠くの丘の影にも伝わった。


「おい!お前ら、何をしている! あれを止めろ、追いかけろ!」


アレンが叫び、目の前の瓦礫を蹴って飛び越す。イダス、クローナ、オリヴァー

名を呼ばれた騎士たちが続くが、土煙で歩が鈍る。

視界を失い、敵か味方かの判別が遅れる中、アランは一瞬、後方で剣を固く握るアレンの背を見た。


その背中には、――今決着を付けるべきかという静かな問いが寄せられている。


だが彼の視線はすぐに下り、握った剣先に定めを戻した。


(弟との決着は――いずれまた。今は、俺たちのやるべきことを)


「俺たちも行くぞ!」

そう言うと、アランは仲間とともに砂塵の中へ駆け出した。

近景での足跡はすぐに風にかき消されるだろうが、中景の乱戦、遠景の揺らぎ


すべてが一つの潮流となって、遺跡と砂漠を呑み込もうとしていた。

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