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第13話 ようこそ”しんじつ亭”へ!

今までの主な登場人物

アラン/この物語の主人公 

リゼット/冒険者ギルドの受付嬢

レオン/同期の冒険者で魔術師

ティナ/同期の冒険者でハーフエルフの魔術師

メイア/先輩冒険者

ノラン/冒険者ギルド職員

ノルマ/元錬金術師の薬屋

夕暮れの王都リュミエール。

ギルドでの解体訓練を終えたアランとレオンは、汗と埃にまみれた一日を終え、石畳の道を歩いていた。


「明日は下水掃討の依頼だってさ。スカーボー、だったか」

アランが眉をしかめる。

「ねずみ型モンスター。素早くて群れる。油断すれば囲まれてやられる」

隣を歩くレオンが、冷静に補足する。


「うわあ……あんまりやりたくねえな」

その後ろから軽やかな足取りが追いついた。


「まったく、男ってどうしてモンスターの話になると熱くなるんだから」

ティナ・フレアベルが肩をすくめて笑った。


「ティナ、お前も一緒に行くんだろ?」

「えっ行かないけど?」

「下水なんて、行きたくないし、別の依頼あるのよ」


アランは大きく伸びをして、空腹を訴えた腹を押さえる。

「……それより腹減った! どっか飯行こうぜ。うまいとこ、ないか?」


レオンが思い出したように口を開いた。

「イリナさんが言っていた。“しんじつ亭”。安くてうまい定食屋。情報も入るとか」

(わざわざイリナさんが、教えるってことは何かあるかもしれない。)


「“しんじつ亭”に行ってみるか!」

腹と心を満たす場所であり、街の裏の動きも垣間見える、小さな交差点。

明日の依頼に備えた作戦会議と束の間の休息を求めて、三人は暖簾をくぐった。


  

《しんじつ亭》は、市場通りの外れにひっそりと佇む木造の食堂だった。

柔らかな灯りが窓から漏れ、心を落ち着けるような香草と出汁の香りが鼻をくすぐる。


扉を開けた瞬間、鉄鍋の音、木製食器が触れ合う音、冒険者たちの談笑が三人を包んだ。


「いらっしゃいませっ! 三名さまご案内しまーす!」

(あっきたきた!例の黒髪の子と魔術師の男の子ね)


元気な声が響き、現れたのは金髪ポニーテールの小柄な少女。皿を片手に動きは機敏で、目がきらきらと輝いていた。


「……君が店員さん?」

アランが思わず問いかけると、少女は胸を張る。


「ルル・ミント! しんじつ亭の看板娘で、最強の案内人だよ!」

あっという間に席へ案内され、水と注文票が運ばれる。


「本日のオススメは、“竜肉の生姜焼き定食”と、“空芋の煮っころがし”。三人とも、お腹ペコペコでしょ?」


注文を済ませると、ルルはくるりと振り返った。

「ねえ、あんたたち。明日の依頼、下水掃除でしょ? スカーボー相手のやつ」

「なんで知ってんの?」

アランが驚くと、ルルはウインクして答える。


「この店、情報が集まるの。とくに冒険者のは、ね」

「看板娘の観察眼は伊達じゃない、ってわけね」ティナがくすっと笑う。


ルルは少し顔を曇らせて付け加えた。

「最近、街の外でもネズミの様子が変なの。妙に数が増えてて、群れ方が不自然。まるで、何かに操られてるような。」


「本来の生態ではない、ってことか?」

(なるほど、イリナさんはこのことを)


レオンの問いに、ルルは頷く。

「それに、街の空気もちょっと変。陽気すぎる人たちが増えてるのよ。笑いながら泣いてたり、道端で踊り出したり……何か、妙なの」


三人の表情が引き締まる。そこに厨房の奥から、割烹着を着た屈強な男が料理を運んできた。

「竜肉定食三つ、空芋の煮っころがし二つ。……食ってけ」

ぶっきらぼうな声だったが、どこか温かみがあった。


「…あの人が“オヤジさん”?」

「うん。あれでも優しいんだよ」ルルが笑った。


アランは湯気の立つ竜肉に目を輝かせた。


「よし!まずは腹ごしらえ!そして明日はモンスター退治に街の異変の手がかり探しだな!」


「合理的だ」


木の器が手際よく並べられ、香ばしい匂いがふわりと立ちのぼる。

鉄板で炙られた竜肉は、外はカリッと焼き上がり、中はジューシーに仕上がっている。

表面に軽く振られた薬草塩の香りが食欲をそそる。


「うおっ……!


 すげぇ、いい匂い!」


アランは目を輝かせ、出された皿を前に嬉々として手を合わせる。

箸を取るなり勢いよく肉をかじり――目を見開いた。


「うっま……! なにこれ!肉っていうか……肉以上!」


 噛みしめるたびに肉汁があふれ、ほんのり苦味のある香草が後味を引き締める。


 空芋の煮っころがしは、表面に軽い照りを帯び、ねっとりとした甘さが口の中でほぐれていく。


 向かいのレオンは、アランほどの勢いはないが、ひと口、ふた口と静かに箸を進める。

 普段と変わらぬ表情――だが、竜肉をもうひと切れ多めに取っているあたり、気に入ったようだった。

「……文句なしだな」


「うんうん! オレ、明日からここ通うかも!


しんじつ亭の夜は、騒がしく、あたたかく、そしてどこか胸の奥に沁みるようだった。


明日もまた、彼らにとっての“冒険”が始まる。 そして街の影に潜む異変が忍び寄る


バロス(眉をひそめて)

「……おかしいな。今週の食材、三日分はもう無くなってる……」


リーゼ(元気に登場)

「あっ、それたぶんアランくんだよ!昨日もカレー7皿いってた!」


バロス(絶句)

「7皿……? うちの“冒険者盛り”を……?」


リーゼ(笑顔)

「うん!しかも“もうちょっと辛くしていいです”って♪」


バロス(腕組みしてため息)

「……あいつが一人で魔物一体分食ってどうする気だ」


リーゼ(ケラケラ笑いながら)

「でも、“おかわりの時の笑顔が輝いてた”って、おばあちゃんが言ってたよ」


バロス(ぼそっと)

「……笑顔で帳簿は埋まらんのだがな……」

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