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第12話 命の重さ、夕餉の灯り

今までの主な登場人物

アラン/この物語の主人公 

リゼット/冒険者ギルドの受付嬢

レオン/同期の冒険者で魔術師

ティナ/同期の冒険者でハーフエルフの魔術師

ダグラス/ベテラン冒険者

ガロス/先輩冒険者 自称天才

リーゼ/定食屋店員

バロス/定食屋店主

メイア/先輩冒険者

ノラン/冒険者ギルド職員解体専門

イリナ/ギルド職員鑑定専門

ノルマ/元錬金術師の薬屋

こうして、ふたりは初めて“命の重さ”を学んだ。

ナイフの切っ先に込める意味が、ほんの少しだけ変わった。


そして、昼下がり――


解体場の隅から、騒がしい足音が聞こえた。

「2人とも頑張って……って、なにこの空気」


くせっ毛の金髪に、赤いケープをなびかせた少女――ティナ・エルドレインが姿を現す。


「あれ、ティナ? 迷子の猫探しじゃなかったのか」

アランが声をかけると、ティナは肩をすくめた。


「依頼主の婆さんが、三匹も猫飼っててさ……しかも一匹はまさかの“ぬいぐるみ”だったのよ! 笑えるでしょ?」


くすくす笑う彼女を横目に、レオンが淡々と指摘する。

「それは依頼主の記憶違いではなく、認知の問題では?」

「うっさい! いいのよ、猫が無事だったんだから!」

いつものようにレオンに突っかかるティナに、場の緊張がほどける。


アランは二人を見て、ふっと笑った。


作業がすべて終わる頃には、空が茜色に染まりはじめていた。

血と汗にまみれた初めての解体訓練。その重さも、静かに沈んでいく陽に包まれていた。


ギルドの受付に報告に行く、アランは腕をぐるりと回しながら伸びをした。

「……疲れたけど、いい一日だったな」

「有意義だった。命を知るというのは、記録よりも実践が大きい」

レオンの言葉に、アランは「だな」と笑って頷いた。


リゼットがカウンター越しに顔を上げ、二人を見て目を細めた。


「……ふふ、ちょっとは上達した?」

穏やかな口調に、どこか試すような響きが混じる。


アランは自信たっぷりに胸を張った。

「次は期待してるって、ノランさんに言われたぜ!」

それがよほど嬉しかったのか、顔には素直な喜びが浮かんでいる。


隣でレオンが腕を組み、淡々と補足した。

「……少しは効率化できた。手順も無駄が減ってきたな」


リゼットは満足げにうなずき、小さな束の依頼書から一枚を選んで差し出す。

「なら、次の仕事。明日はこの依頼よ」


アランが紙を受け取り、文字を追って眉をひそめた。


「“下水の清掃”? これ……なにすんの?」


思わず声に出したその疑問に、リゼットは肩をすくめるように笑った。

「名前どおりよ。点検、清掃、異常があれば報告。ただし、たまにモンスターが迷い込むの。出会ったら討伐もお願いね」


「下水にモンスター……?」アランの眉がさらに寄る。


だが、すぐに横からレオンが静かに言葉を挟んだ。

「放っておけば、住処にされる。そうなれば被害も広がるってことか」

「そういうこと。滅多には出ないけど、出たときが厄介なのよ」


リゼットの声は、軽やかでいながら、責任の重みを含んでいた。


依頼の表面は地味で単調に見えても、街を支える仕事に変わりはない。

それを、彼女はきっと何よりよく知っているのだ。


そのとき、ぽんと誰かの指がアランの肩を叩く。

振り返れば、白手袋の手を払うようにしてイリナが立っていた。

「お疲れさま。少しは手つきもマシになったかしら?」

(下水の清掃ね、リゼットも意地悪ね。ちょっと手助けしてあげようかしら)


そんな彼女がふと何かを思い出したように、目線を上げる。


「……ところで、夕飯は?」


「え?」

 不意に問いかけられて、アランが目を瞬かせる。


「まだ食べてないなら、“しんじつ亭”に行ってみるといいわ。ギルドの連中にも評判の店よ。安くて腹いっぱい食べられるし、味も悪くない」

 イリナはそう言いながら、わずかに口元を緩める。


「それに――看板娘の観察眼は侮れない。気づけば、情報のひとつやふたつ拾えるかもしれないわよ」

 そう言って、イリナはほんの一瞬だけ、淡く微笑んだ。


「情報……?」

(情報が必要な依頼なのか?)

レオンが目を細める。その隣で、アランは目を輝かせた。


「飯もうまいなら、行くしかないだろ!」


ティナが後ろから追いついてくる。

「“しんじつ亭”? あー、聞いたことある。街角の小さい店だよね? ルルってかわいい子が働いてるとか」


「へえ、ティナも知ってるんだ」


「ま、噂くらいはね。……ただの定食屋じゃないって話」

夕暮れの街路を、三人の影が伸びていく。


次なる目的地――その名は、「しんじつ亭」。

腹と心を満たす場所であり、街の裏の動きも垣間見える、小さな交差点。

明日の依頼に備えた“作戦会議”と、束の間の安らぎを求めて。

三人は、店の灯りを目指して歩き出した。

〜間話〜

メイア(ニコッと笑って)

「アラーンくん、今日は私が“特別に”訓練してあげよっか♡」


アラン(真面目な顔)

「本当!?お願いします、メイアさん!」


メイア

「じゃあまずは反射神経テストね!目を閉じて…じーっとしてて?」


アラン(目を閉じる)

「はいっ!」


(…数秒後)


メイア(ニヤッ)

「――いっくよー♡」


(ドンッ! ※アランの顔がメイアの胸に激突)


アラン(大混乱)

「うわあああっ!?な、何か当たった!?やわらか…い!?えっ!?」


メイア(わざとらしく)

「きゃっ♡き、きゃあ〜アランくんったらどこ触ってんのよぉ〜♡」


アラン(真っ赤)

「わ、わざとだーっ!?絶対わざとだーッ!!」

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