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第11話 ひとひらの風

今までの主な登場人物

アラン/この物語の主人公 

リゼット/冒険者ギルドの受付嬢

レオン/同期の冒険者で魔術師

ティナ/同期の冒険者でハーフエルフの魔術師

ダグラス/ベテラン冒険者

ガロス/先輩冒険者 自称天才

リーゼ/定食屋店員

バロス/定食屋店主

メイア/先輩冒険者

ノラン/冒険者ギルド職員

ノルマ/元錬金術師の薬屋


翌朝、まだ街にひんやりとした空気が残る中、ギルド本部の広間はすでに活気に包まれていた。

陽光が差し込む大理石の床には、冒険者たちの足音と談笑が反響している。

いつもと変わらない、穏やかな朝。

……けれど、その賑わいの裏側に、何かが少しずつ軋んでいるような――そんな空気が、どこかにあった。


受付のリゼットが書類を捌きながら、手を挙げる。


「おはよう、二人とも。ちゃんと来たのね、解体の補助ね」


「……思ったより朝から混んでるな」


「依頼の取り合いだもの。新人さんには地道な仕事しか残らないかもね。」


そこへ、重たい足音と共に大柄な青年が近づいてくる。


「おーい、アラン兄貴に魔術師! 朝から気合い入ってんな!」


銀灰色の耳と尻尾を持つ格闘士、ドラン・マグノス。同期登録の新人冒険者。

「今日は依頼?」

「そう!装備の手入れさ。地味だけど大事な仕事でな。魂が染みついてるんだよ、道具には」


「魂、か……」

アランの脳裏に、ガレスの木剣やノルマの古びた道具がよぎる。


「俺も、そういう想いを大事にできる冒険者になりたいな」

「ハハッ、いいねぇ! そういうの、俺も好きだぜ!」

そのとき、受付の奥から、硬い靴音が響く。

白手袋に銀縁眼鏡、凛とした佇まいの女性が姿を現した。


「ふむ。昨日の素材提出者は……君たちね?」


ギルドの鑑定士――イリナ・メルフィ。

冷たい眼差しでアランたちを見据えた。


「また、後でね。」


朝の陽光がギルド裏手の解体施設に差し込み、石畳の上に影を落とす。

「ふん、時間どおりか。ついて来い」


無骨な背中で先導するのは、解体職人ノラン・ヴェリス。

作業服、鋭い眼光、職人気質の男だ。


中は冷気と血の混じった匂いに満ちていた。

いくつもの解体台に、狩られたモンスターが並ぶ。


「今日は六体。スカラーハウンド、シャドウキャット、グラストウィスプ、スカーボー、フラットスネーク、フェザーラ」

「肉の切り方、骨の流れ……力任せじゃダメだ。解体は“命の処理”だ。分かったな」


「……はい!」

「理解した」


ナイフを手に、まずアランが挑む。

勢いよく切りかかるが、毛皮を裂き、牙の根元を台無しにしてしまう。


「……チッ、それは“破壊”だ!商品にならねぇ」


レオンは丁寧に筋を追い、素材を剥ぎ取るが、遅い。

「遅い!丁寧すぎて腐るぞ。戦場じゃ間に合わねぇ!」


軋む音とともに、扉が開いた。

イリナが静かに入ってくる。

足音は控えめだが、その存在感は空気をぴんと張り詰めさせる。


「昨日提出された素材……確認したわよ。ひどい出来だったわ」

(リゼットの期待してるって2人か、初心者にも程があるわね)


低く、抑えた声。それだけで、場の温度がわずかに下がる。

アランが身じろぎし、レオンは黙って視線を落とす。


「――今日はどうかしら?」

 イリナは手袋をはめたまま、無言で素材を受け取る。

 一つひとつ丁寧に取り出し、光に透かし、指先で触れ、微かな香りを確かめる。

 その目は職人のものだ。甘さも妥協もない。

「スカラーハウンドの牙、ヒビあり。Dランク。使えない。」


「シャドウキャットの毛、魔導反応が低下。C」


「グラストウィスプの皮……悪くない。Bランク」

アランが歯を食いしばる。レオンも悔しげに眉を寄せた。


「ただの“素材”と思って扱わないで、それは“奪った命”。

――その重さを忘れるなら、扱う資格はない。」


ノランが低く笑いながら言った。

「初めはみんなそんなもんだ。だがな、素材を殺さず、活かす手を覚えた奴だけが“一流”になれる」


アランは一呼吸置き、静かにナイフを握り直す。

「次は、もっとちゃんとやります!」


その目には、ただの“やる気”ではない――責任と、敬意が宿っていた。


イリナは淡々と続けた。

「スカラーハウンドの牙は、状態がよければ一対で銅貨12〜15枚。毛皮は軽くて加工がしやすいから、冬服や小物に使われる。

フラットスネークの毒袋は、上質なものなら銀貨1枚以上。鍛冶や錬金術で重宝されるわ」


「高いんだな」

アランが小声で呟くと、イリナがちらりと横目で見た。

「値段の話じゃない。街で誰かの命を守る薬や、防具になるのよ。素材は、次の命に繋がっている」


アランはその言葉を聞き、胸に刻み込んだ。


自分が今、解いているのは“命”であり――誰かの未来でもある。

レオンも静かに頷き、心に刻みつけるようにナイフを動かした



リーゼ(元気よく)

「ねぇメイアさん、アランくんってさ――」

メイア(ニヤリ)

「うん?」

リーゼ(首かしげて)

「――バカ?」

メイア(即答)

「うん、バカ♡」

リーゼ(笑って)

「だよねー!昨日、剣の柄と刃を逆に持ってたよ!」

メイア

「おまけに“これ切れ味悪いな〜”って文句言ってたわよ」

リーゼ(目を輝かせ)

「でも、ちょっとかっこよかったんだよね!」

メイア(ため息)

「バカはかっこよく見える呪いかしら…」

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