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「第一章」独りきり

「もし時間と空間が形を変えることができるなら、私たちは一体、何が本当だと信じることができるのでしょうか?」と、新一は疑念を震わせながら言った。


車椅子に座り音楽を聴きながら、 方程式を解く。 彼にとっては、 これ以上似つかわしい状態はないだろう。 一見退屈に見える公式も、 新一にとっては美しい風景であり、 魅力的なメロディーだった。 彼は孤独であっても、 決して流されることはなかった。その生活は普通の人には想像もできない。 すでに午前五時を回っていたが、 彼の脳は疑問を解き明かそうと高速で動き続けていた。 長い徹夜の末、目はくぼみ、 肌はくすみ、机にはたくさんの白髪が落ちていた。 謎が解ける度に喜びを感じていたが、その喜びを理解できる人はほとんどいなかった。すべては、新一の世界が壮大な夢に支配れていたからだ。その夢に近づくために、彼は恐れることなく目の前の障害を取り掃おうとしていた。それがどれほど困難で手が届かないものだったとしても、それがどんなに遠くにあるつかみどころのないものであったとしても。


時間は巻尺のように、 時に心の痛みを和らげるために内側に縮まり、 時に未知の答えを測るために外側に伸びる。 新一の体は自由を失っていたが、 彼の思考は両足に縛られることなく、他の誰も見えない場所まで到達していた。おそらく、 外界に染まらない心は、 人知れぬ細部を発見するのが容易なのだろう。その行動の不便さゆえに、 彼は心を落ち着かせ世界を観察することができた。その週末の夕方、新一は銀河系の運行を正確にシミュレートできる量子コンピュータを独自に発明した。一連のアルゴリズムによる綿密なシミュレーションを通して、 彼はこのコンピュータを使って瞬間的な潜在暗粒子を予測した。それは人類がまだ発見していない物理現象であり、彼はその奇妙な物質を「フレームクコア」と名付けた。


全能の人間は驚くべきことを成し遂げるだろう。この発見は、 彼に大きなことを成し遂げようとする動機を与えた!フレームクコアの存在を確認するために、新一は特殊な顕微鏡を取り急ぎ必要としていた。世界の真実をさらに明らかにすることができるスーパー顕微鏡だ。 彼はこの最先端の観測装置を自ら開発しようとしていた。ただし、それには高い精度が必要で、 製造コストも高くつくため、 十分な資金援助がなければ実現できなかった。そこで、彼はベンチャーキャピタルからの投資を受けてプロジェクトを進めようと考えた。しかし、長々とした事業計画書は、学術論文のように見えた……


「あなたがターゲットとしている市場は、最先端のニッチなグループです 。市場の観点からも、技術の観点からも、我々は評価できません。」

「みんなが微視的な科学にもっと投資すれば、より多くの物理学者が参加するようになる。その時になって初めて、これが真値を発揮する!」

「それはあなたの個人的な理想だ。 世界は常に市場によって動かされている。 それは私たちのあずかり知らない未来だ……」


最先端の研究プロジェクトであっても、 商業の本質から逃れることはできない。 冷静な資本市場は、その紙に書いただけの創想に投資しようとはしなかった。 新一は、 彼のプロジェクトの隠れた価値を理解できる人を必要としていたが、この地球上では、 その人はおそらく彼自身しかいないのだろう。 資金援助がなければ、 彼の研究プロジェクトは一歩も前に進めなかった。


「家賃の支払い期限です!」

「もう少し待ってもらえませんか?仕事を見つけたので、すぐに給料が入ります。」

「わかりました、一週間だけ待ちます……」

「どうもありがとうございました!」


彼は世俗を捨て、すべてを無視したが、世間は彼を痛烈に打ちのめした。現実は、彼が現金化できない理論を証明することを拒んだ。 世界もまた、 彼を文明システムに引き戻して生きるよう求めた。 母親が残してくれた生活費はすぐに底をついた。 彼は学歴も職歴もない履歴書をいくつかの研究機関に送った。しかし、 数週間が過ぎても、 受信箱には返信がなかった。基本的な面接要件を満たしていなかったため、すべての雇用主に拒否された。 最終的に、 障害者雇用サービス機関を通じて、 新一は非正規の職を見つけた。その仕事は特許庁で発明特許の初審を担当するものだった。 比較的簡単な仕事だったが、 いつの間にか気が付くとまた月曜日になっていた。 彼は生活するために理論研究を中断し、 出勤しなければならなかった……


新一は普段から交友関係が非常に限られており、 極度に内向的な性格だったため、これまで一度も恋愛を経験したことがなかった。なぜなら、 彼を好きになる女性はいなかったからだ。しかし、 最近、隣の文書資料課に新しく来た同僚の女性が、 彼に特別な関心を寄せていた……


「週末、一緒に映画を見ない?」

「残念だけど、週末は家で実験をするんだ」

「また忙しいの?それ、どんな実験?」

「マイクロ波に関するものだけど、興味ある?」

「見せてもらってもいい?」

「ちょっと無理かな……」

「どうして?」

「あぶないから。 」

「あなたがあぶないの?それとも実験があぶないの?」

「どっちも。」

「はは!どうせ立てないんだから、私をどうこうできないでしょう!」

「本当にごめん……」

「ごめんなさい、こんなこと言うべきじゃなかったわ。」


二週間後、 その女性は新一がいつも同じ曲を繰り返し聴いていることに気づき、 その曲を書き留めることにした。 彼女はその音楽の魅力を理解してはいなかったが、その音楽を通じて彼と共通の話題を持ちたいと思った。


「この曲、好きなの?」

「ああ、君も好き?」

「理系男子がどうしてこの曲をそんなに好きなのか知りたいだけ、飽きたりしないの?」

「飽きないよ、一度その良さを知ってしまうと、癖になる。」

「じゃあ、私のよさもわかる?」

「うーん……そう言ってくれるのは嬉しいけど、君には近寄れない。」

「どうして?私、可愛くない?」

「いや、君は可愛いし、賢い!僕が言いたいのは……」

「それなら何で?もしかして…男のほうが好き…とか?」

「君は良い子だ、僕のように年上の病人じゃなく、もっとふさわしい人がいるはず 。君の両親も許さないだろう。 」

「でも、私は気にしない!」

「でも、僕は気にする。」「誰か好きな人でもいるの?」

「まあそんなところ。」

「それ、誰なの?」


彼の数千種類もの理解しがたい技術発明は、彼を人類史上最も偉大な無名の発明家にした。新一は特許庁で特許審査に携わっていたが、自分の発明を申請したことは一度もなかった。彼は非常に慎重で控えめな性格だったので、自分の発明の成果を世間に公表することを望まなかった。なぜなら、それらの発明は彼のコミットメントを実現するために、 興味の中で黙々と完成させたものだったからだ。 彼の発明のほとんどは、 商業的に応用できない技術だった。


「ホルモンの作用を取り除けば、誰が誰に興味を持つだろうか!」


新一にとって、 人類は遺伝子に操られ、 自然選択に利用され、 自我を失った真核生物に過ぎないのだった。 彼がその女性を拒絶したのは、 彼の世界には愛が存在しないからだった。 彼は伴侶を得ようとはせず 、生涯科学とともに歩もうと心に決めた。彼のこの強い拘りは、両親が彼に施した特異な遺伝子組み換えの賜物だった……


ピアノ物語の上巻は全40章、下巻も全40章です。当初は先にラジオドラマを公開する予定でしたが、制作に非常に時間がかかり、公開が遅れてしまいました。ラジオドラマの制作が遅れた主な原因は、経費の問題です。この小説はすでに2019年に完成していましたが、もし皆さんが興味があれば、コメントで教えてください。引き続き小説の更新を行っていきます。

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