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君がいる世界を僕は必ず奪取’する  作者: 粟生深泥
第5章 turning point
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第5'章 turning point①

 あれから週が明け、深安山で起きた出来事が実際に起きたのか、丸ごと夢のようなものだったのか段々と確証が持てなくなっていった。

 それくらい、あの日の出来事は衝撃的過ぎた。

 時乃は山頂の社で意識を失ってから麓で目を覚ますまでのことは何も覚えてなかったし、何が起きたか詳しくは伝えていない。

 そして、あの日以降、神崎からはあからさまに避けられていた。学校には来てるのだけど、休み時間に話しかけてくることもないし、部室にも顔を出さない。こちらから話しかけてみてもすぐに会話を切り上げれてどこかに行ってしまう。

 聞きたいことが山ほどあったし、伝えたいこともいっぱいあった。時乃にもあの時あの場所で何が起きたかきちんと伝えないといけないと思うけど、正確に伝えるためには神崎の話を聞く必要がある。

 6限の授業中、席替え隣同士から前後になった神崎の後ろ姿を見る。何か変わった様子はない。部室に顔を出さないことについて、筑後には体調不良だと伝えているようだけど、具合が悪そうな感じではない。


「よし、じゃあ今日の授業はここまで。あと二週間で期末試験だけど、今日のところはテストに出すからよく復習しとけよー」


 化学の授業が終わって、石川先生の言葉に教室がザワザワと反応する中、神崎だけはそそくさと荷物を纏めて席を立とうとしていた。


「神崎」


 声をかけると神崎はビクリとして俺の方を向く。ここ最近はずっとこんな調子だった


「宮入君。どうしたの?」

「今日も部室行かないのか?」

「うん。テスト勉強しないと」


 そう言って神崎は逃げるように教室を後にする。

 テスト勉強、とは言うけど。毎日のように部室に顔を出していた中間試験では神崎は学年でもかなりの上位に入っていたし、それこそ化学なんて学年一位だったはずだ。

 そんな神崎が今更テスト勉強の為に部活を休むとは考えられなくて。だけど、何でそんな言い訳をして帰ってしまうかがわからない。深安山でのことが後を引いてると思うけど、どうすればいいのか。


「あれ、今日も香子ちゃんいないの?」


 いつものように時乃が教室に入ってくる。あの日、社の中で息も絶え絶えな様子の時乃だったけど、特にその後遺症もなさそうだった。白い靄が出てからの記憶は曖昧らしく、俺が来たことまでは何となく覚えているようだったけど、次に目を覚ました時にはもう山の麓だったと言っている。


「ああ、テスト勉強だって」

「まだ二週間以上あるのに?」


 時乃の言葉に曖昧に頷く。一週間前からは大体の部活がテスト休みに入るから、大体の生徒はそのタイミングで試験勉強に打ち込む。オーパーツ研究会では神崎も筑後もそのあたりゆるっとしてるから、中間試験の時は一週間前になっても神崎はいつも通りの様子で、俺と筑後が時々思い出したように参考書を捲る程度だった。


「それで、ばあちゃんからのおつかいのメールでも来たのか?」

「えっと、今日はそれじゃなくて」


 時乃は少し教室を見回してから俺を廊下の方へと連れ出した。いつもは教室の中で特に気をつかうことなく話しているから、こんなことは珍しい。


「今度の土曜日の話したくて。先週、翔太に迷惑かけちゃったみたいだけど、久しぶりだしやっぱりどこか行きたいなって」


 今度の土曜日。時乃が試料を取ってきたらどこか遊びに行くという約束をしていた。時乃の視線はそわそわと動いていて、楽しみにしてくれてるんだなということが仕草からも伝わってくる。

 だけど、あの日の出来事をすべて曖昧にしたまま楽しめる気はしなかった。怒らせるかな、とは思ったけど、このまま何もなかったことにし続けるのは神崎に対しても時乃に対しても裏切りだと思うから。


「あのさ、時乃。いまちょっとだけ話いいか?」


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