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君がいる世界を僕は必ず奪取’する  作者: 粟生深泥
第4章 選択の刻
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幕間④

 実験は順調に進んでいた。

 この世界の情報を波動として記録を書き出し、ゼロ・ポイントを経由して別の世界へと出力する。出力先を調整することで、疑似的に四次元的な移動ができる。

 ゼロ・ポイントを経由して情報を飛ばせることまでは確認できている。


「問題は狙ったポイントに飛ばせたかどうか確認ができないことですね」


 実験の結果をまとめた資料から顔を上げると、宮入博士は苦笑を浮かべていた。多分私も似たような顔をしているだろう。


「飛ばせるのは情報だけだからね。こちらから観測するにはせめてビーコンみたいに発信させる機構が必要だけど、そこまでやってるとどれだけ時間がかかるかわからないなあ」


 結局、最後は実際に人が行ってみるしかないということだ。

 宮入博士はそれをやるつもりでいる。それは傍から見れば酔狂であり、マッドサイエンティストの領域なのかもしれないけど、彼はそのために半生以上の長い時間を費やしてきた。

 そこまでして宮入博士が救おうとしている女の子は、かつて高校生の頃の宮入博士を助けるために“呪われた”ということだった。

 宮入博士をここまで突き動かしてきたのは「彼女がいなければ、目を覚まさないのは僕の方だったかもしれない」という恩返しということも含まれていて。

 不謹慎な話だけど、宮入博士が一生を費やしても構わないと考えるほど想われている彼女のことが少しだけ羨ましくなってしまう。


「これからは、更に精度を上げていかないといけないな」


 宮入博士の顔には少し疲労が滲んでいるけど、それ以上に希望で溢れていた。


「過去の自分自身と転送の座標を合わせられなかったら、波動として世界を彷徨い続けることになるし、こっちの論文とかのデータも送れるに越したことはないからね」

「論文、ですか?」

「うん。何かあった時の為に、使える手段は多い方がいいし。かつて並行宇宙説が選択の無限性に苦しんだように、僕らの一つ一つの選択が未来にどんな影響を及ぼすのかなんて、一つの未来を知っているだけじゃ予想もできなければ対処のしようもないからね」

「なるほど。理由はわかりましたが、また難しい課題ですね」


 送った情報がどこに辿り着いたかわからないのに、その精度を上げる。どうすればそんなことが出来るのか、皆目見当もつかない。

 それは宮入博士だって同じはずだけど、宮入博士は珈琲を口にしながらリラックスした様子で笑う。


「大丈夫だよ。僕たちなら、きっとできる。だから、これからもよろしく、博士」


 笑顔で頷きながら、胸の辺りがギュッと苦しくなった。

 もしこの研究が完成したら、宮入博士との日々も終わりを迎える。

 そのために頑張ってきたはずなのに、永遠に“これから”が続けばいいなんて、そんな矛盾した思考を、宮入博士が好きな珈琲のほろ苦さで意識から追い払った。


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