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君がいる世界を僕は必ず奪取’する  作者: 粟生深泥
第1章 この世界に足されたもの
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第1'章 この世界に足されたもの③

 神崎のせいで頭がいっぱいで殆ど記憶に残っていない始業式が終わり、石川先生からホームルームの続きがあった後、ようやく昼休みになった。

 この永尾高校は一応県内で進学校を名乗っていて、伝統やらなんやらということで始業式初日から早速午後の授業がある。普段ならそれをどうこう思うことはないのだけど、今日は朝から色々あったせいか既に肩の辺りにドッと疲れがのしかかっていた。


「香子ちゃんの制服、長部田高校のだよね! いいなー、可愛いー!」

「高校の途中で転校って大変だね。何かあったらいつでも言ってね」

「ってか、香子ちゃんスゴイ可愛いよね。ほら、見てよ。男子がずっと話したさそうにこっち見てる」


 昼休みに入ると待ちに待ったというように神崎の周りに人だかりができる。朝の続きでタイムトラベルがどうこう聞かれたら面倒くさいなと思っていたけど、これならその心配はなさそうだ。


「あ、そうだ。香子ちゃん、お昼一緒に食べようよ!」

「えっと、まさか初日から午後まで授業と思ってなくて。お弁当持ってきてなくて……」


 隣の席での会話に何となく耳を傾けていたら、不意に視線を感じた。何気なしに神崎の方を見ると、ピッタリ神崎と目が合った。そのとたん、神崎はしてやったりとでもいうように口角をあげる。


「あ、そうだ。宮入君もお昼持ってきてないんだよね? せっかくだし購買案内してほしいな」


 突然、俺に対してそんなことを言い出した神崎に周囲の女子の顔に驚きとか若干の敵視のような色が浮かぶ。周囲の女子から「余計なことするな」というオーラを感じた。まさしく俺もそう思う。余計なことに首を突っ込みたくない。

 というか、なんで俺が昼飯持ってきてない事知ってるんだよ。


「いや、俺は……」

「ほらほら、早くしないと全部売り切れちゃうんじゃない?」


 どっちが転校生なのかわからないことを言い出した神崎は立ち上がると、周囲の女子の間をすり抜けるようにしてパタパタと教室の外へと駆けていく。


「ほら、宮入君。早く早く!」


 廊下に出た神崎が中の俺に向かってピョンピョンと手招きする。大人びた雰囲気と無邪気さが合わさって、神崎の周りには人を惹きつける世界が醸し出されている。

 いつまでもそうさせておくわけにもいかないし、ため息をついてみながら立ち上がる。朝もそうだったけど、神崎は人の退路を断つのが無駄に上手い。

 教室の中からの多種多様な視線を背中に受けながら廊下に出る。なんで神崎が俺を指名したのかはわからないけど、なにやらご機嫌な様子の神崎を先導して購買に向かった。

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