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君がいる世界を僕は必ず奪取’する  作者: 粟生深泥
第4章 選択の刻
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第4'章 選択の刻④

 その翌日は久しぶりに晴れて、昼休みに教室で永尾町の歴史に関する本を読んでいると、突然背後から首に手を回された。


「ぐえっ」


 呪いだなんだで俺にヘッドロックをかけてくる相手なんて数えるほどしかいない。だいたい指一本あれば容疑者を数え終わる。


「あーあ。翔太、いっけないんだー」


 予想通り、俺の首をがっつりホールドしているのは時乃だった。ギブアップの意で俺の首に回った時乃の手を数回タップすると、あっさりと解放される。一息ついてから振り返ると、腕を組んで時乃がジトっとした目で俺を見ていた。


「ダメじゃん。二人乗りなんかしたら」

「いや、あれには深いわけが……」


 ちらっと神崎の席を見るが、昼休みに入るとすぐに購買に向かってから教室には戻ってきていない。部室に行ったか、あるいは久しぶりに晴れ間が広がっているからと校庭端のいつもの場所で昼食を食べているのかもしれない。


「理由があったって犯罪は犯罪でしょ」

「犯罪って、何か大袈裟にしてねえか?」

「うるさい。証人はいっぱいいるんだからね」


 時乃の言う通り、俺が神崎と二人乗りしている様子は陸上部にまるっと見られてしまっている。いや、だから何だって話ではあるんだけど。

 とはいえ、時乃だって昼休みにわざわざ来たからには何か目的があるんだろう。


「それで、口止め料でもせしめる気か?」

「お、珍しく物分かりいいじゃん」


 時乃がニヤリと口の端をあげる。


「じゃあ、来週の土曜日予定空けといて」

「来週の土曜日?」

「うん。その日は陸上部休みだから。今度こそちょっと遊び行きたいなって」


 ゴールデンウィークに誘われたときは部活があるからと断ってしまった。

 思わず再び神崎の席を見てしまう。


「何、また部活なの?」

「いや、土曜日に深安山行って、また試料を取ってくるつもりで……」

「香子ちゃんと?」

「ああ」


 時乃の視線が険しくなる。その反応は予想してたけど、嘘をつくわけにもいかない。下手に誤魔化す方が、時乃に対して悪い気がした。

 時乃は少し考えるようにちらっと外を見る。天気を確認するような素振りの後、よしっと小さく頷いた。


「試料って四月に採りにいったあれのことでしょ? じゃあ、今日私が取ってくる。それなら土曜日は空くよね」

「は、今日? でも、時乃、部活は?」

「今日はフリーだから、深安山のふもとまで自転車で行って山頂まで走って登ればそれなりに練習になるし」

「でも、試料の集め方とか……」

「そんな難しいことしてなさそうだったし、香子ちゃんに聞いてから採りに行く」


 時乃の思いは揺らぎそうにない。こうなった時乃は中々止まらないし、無理に止めれば爆発しかねない。

 仕方ない、神崎には放課後までにことのあらましを伝えておこう。

 ここ数日では珍しく青空が広がっているのに、どことなく嵐の前のような不穏な気配を感じた。


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