第2'章 その一滴は波紋となって④
「ねえ、宮入君。相談があるんだけど」
深安山に登ってから約一週間後。いつもの校庭の端のベンチで焼きそばパンをかじりながら神崎が切り出した。毎日というわけではないけど、数日に一回は神崎に引っ張られるままここで昼飯を食べる流れになっている。そんな時はだいたい決まって“呪い”絡みの話だった。
深安山で採取した試料は神崎が色々分析しているらしいけど、詳しい経過は聞いていなかった。遂に何かわかったのだろうかと頷いて言葉の続きを待つ。
「部活に入るなら、どこがいいと思う?」
「……は?」
「だってだって! せっかくの高校生活だよ! 部活入って高校生っぽい青春してみたくない? でも、一年生と一緒に部活見学っていうのもちょっと恥ずかしいしっ!」
一生懸命腕をワタワタ振りながら力説する神崎の姿に思わず頭を抱えてしまう。真面目な話かと思って身構えていただけに完全に拍子抜けしてしまう。別に神崎が部活を始めるのは勝手だけど、聞く相手が間違ってる。
「帰宅部の俺じゃなくて時乃にでも聞けよ」
「時乃ちゃんに聞いたら、間違いなく陸上部に引きずり込まれるから」
さもありなん。だけど、俺にアイデアが無いのは変わらない。高校に入った時点で部活に興味がなかったから去年のこの時期に部活見学もしてないし、各部活の評判なんかもほとんど知らない。というか。
「神崎は前の高校では何部に入ってたんだ?」
どの部活がいいかよりも、転校前に入っていた部活があればそれを続ければいいんじゃないか。部活だ青春だって言うんだったら何かしらやってたんだろうし。
「え、帰宅部だよ」
さっきの今で再び頭を抱えることになった。さっきの熱弁はなんだったんだよ。時々その思考回路に着いていけなくなって、本当に神崎が宇宙から転校してきたような気がしてきた。
「とりあえず、石川先生にでも相談してみたら?」
石川先生が部活に詳しいのかは知らないけど、担任だし何か力になってくれるんじゃないだろうか。
「なるほど、いいかもしれない。じゃあ、早速放課後聞きに行ってみよっか?」
俺が一緒に行くのは神崎の中では既定路線のようで、当然のように言い切ると焼きそばパンの最後の一欠片を口の中に投げ込んで立ち上がり、俺の返事も聞かずに校舎に向かって歩いていってしまう。
ああ、なんかそんな気はしてたよ。石川先生のところに付き合うくらいは構わないんだけど、それで済むとも思えない。どうしようかと考えながらベンチの背もたれに体を預けて目を閉じる。サワサワと揺れる木の葉の音に身を鎮めるのは心地よかったけど、良案は何も浮かばなかった。




