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君がいる世界を僕は必ず奪取’する  作者: 粟生深泥
第2章 その一滴は波紋となって
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第2'章 その一滴は波紋となって①

 神崎が転校してき手から数日がたち、週末を迎えた。

 気になっていたのは天気だけど、降水確率0%と心配する必要はなさそうだった。

 かくして、俺にとって曰く付きの山――深安山――に向かう閑散としたバスの最後列には、窓側から神崎と俺、それから時乃の順で座っている。


 神崎が転校してきたあの日の約束通り、深安山の山頂付近の祠に行くことになったのだけど、それを時乃に伝えたら自分も行くと言い出した。その時乃は俺の隣で高校名が入った臙脂色のウィンドブレーカーを着ている。時乃の所属する陸上部のものだ。

 深安山の入口までは、自転車で行ってもそんなに苦ではないのだけど、神崎が自転車を持っていないということで三人仲良く並んでバスに揺られている。

 そう、仲良く、である。


「部活が休みの日くらいゆっくりしてりゃあいいのに」

「運動と無縁の翔太にはわからないだろうけど、休みの日だって体を動かさないと鈍っちゃうの!」


 何気なく言葉を振ったつもりだけど、思った以上にツンとした言葉が返ってきた。触らぬ神に何とやら、ハイハイと聞き流すと今度はムッと眉間を寄せる。今日の時乃はやけに刺々しいというか、ピリピリしている。


「そ、れ、と、も。翔太は私が邪魔だった? 可愛い転校生と二人きりを邪魔されて」

「まさか。時乃の想像力が豊か過ぎるんだよ」


 当の神崎は俺たちのやり取りなんてそっちのけで窓の外に広がる田園風景を瞳をキラキラさせて眺めている。そんなに珍しい風景でもないと思うけど、こっちに来る前はこんな景色が珍しいくらいの都会にでも住んでいたのだろうか。


「むう、翔太のくせに生意気!」


 神崎の方を見ていたら、ギュッと意識を時乃の方に戻された。頬をつねって引っ張るという極めて物理的な方法で。結構容赦なくつねってきて普通に痛い。


「お前さ、足だけじゃなくて手まで早いのかよ」

「んん?」


 時乃の手に更に力がこもる。あ、これ、ヤバいやつだ。


「痛たたたたっ! 悪い、俺が悪かったって!」

「ふん。ちゃんと反省した?」

「おおー、山が近づいてきたー!」


 俺たちのてんでバラバラな言葉を乗せてバスは進んでいく。全然平和な道中ってわけじゃないんだけど、それでも普段学校にいる時よりもずっと肩の力は抜けていた。

 春の穏やかな日差しに包まれながらハイキングっていうのも、たまには悪くない、か。


「次は深安山ー。お降りの方はお近くのベルでお知らせください」

「わーっ! このベル、なんだか懐かしー!」


 神崎が窓際のベルを押すとピロリンとどこか間の抜けた音が鳴り、間もなくバスは山の麓で止まった。


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