④−2 テケテケ
その日、光希はたまたま学校が早く終わった為拠点に先についておくことにした。裏山への道を歩いていると遠くから悲鳴が聞こえ光希はその方向へ走っていった。悲鳴が聞こえる場所に近づくと近くの家の屋根に飛び乗り辺りを見回すと凛子に追いかけ回される時雨を見つけた。そして凛子が時雨を捕まえた時点で凛子の真横に降り攻撃したという。
その後時雨は気を失った凛子を抱え、光希の案内で怪異調査団の拠点へと出向いた。
「で、君の勘違いだったと」
「ごめんなさい…」
「いいよいいよ!時雨ちゃんを怖がらせちゃった私も悪いし!」
あんなに強い打撃をくらったにも関わらず凛子はピンピンしていた。光希は勘違いした事をしっかり謝り反省した。凛子にテケテケになった経緯を聞いたが、本人は何かにぶつかった記憶はあったがその時に頭を強く打ってしまいよく覚えていないと言う。
「しかし、びっくりしたよ。人間が自らの意思でここに訪ねてくるなんて。」
「凛子は…私に唯一優しくしてくれた人だから…」
「12歳ってことは葵と同い年か…葵、この子のこと知ってる?」
「はい、一応幼馴染なので…もうここ数年挨拶すら交わしていませんが…」
「ところで時雨、凛子に仲良さそうに話しかけてたと言うことは少なくとも会ってから数時間は経ってるよね。もしかして学校行かなかったの?」
「ッ…」
光希が聞いた瞬間時雨は体をこわばらせた。瞬時にその場にいた凛子以外の全員は地雷を踏んでしまった事を悟った。次の瞬間時雨は吐き捨てるように言った。
「アンタらなんかには分からないわ。私がされてきたことなんて。」
「分からないって…そもそも話してくれなきゃ分からな、」
「誰かに話すことができたら私だって学校サボったりなんてしてないわよ!」
「…つまり、学校をサボることは君にとっての反抗だったんだね。」
「…そうよ…私は…こんなことしか…できないのよ…」
時雨の声は段々と弱くなり遂には声を殺して泣き始めてしまった。そんな時雨の頭を祐希は優しく撫でながら尋ねた。
「何をされたか言える範囲で教えてくれる?それを聞いて私達は君を責めることはしないし何かするわけでもないよ。」
そう聞くと時雨はぽつりぽつりと今までされた事を話し始めた。それは人間の所業とは思えないほど酷く残酷なものであり聞いているだけで吐き気が込み上げてくるほど陰湿で気持ちの悪いものだった。時雨の話聞き終えたその頃には葵と光希と凛子は怒りに満ちた表情で座り込んでいた。祐希もいつもの彼女からは考えられない程真剣な表情をしており、ゆっくりと慎重な声で時雨に尋ねた。
「君、これからどうしたい?一応その子達を痛い目に合わせることはできるけど…」
「正直あいつらとはもう関わりたくないわ。でも…何かやらないと気が済まないわ。」
「それなら…君と凛子ちゃんでそいつらを反省させよう。いい考えがあるんだ…」