④−1 テケテケ
とある日、中学一年生の源時雨は学校への憂鬱を抱えながら登校していた。理由はクラスでいじめられているからだ。それも担任の見ていないところでやられている陰湿なことだからかついじめの主犯格は学級代表をしているリーダー的な存在で担任の信頼も勝ち取っているからである。親にいじめられている事をカミングアウトしたが"そんなのお前に問題がある"だったり"学校に行ってくれないと世間体が悪くなる"だったりとグチグチ行ってくるのでもう信用など消え去った。ふいに時雨は"今日はサボってしまおう"という気持ちになった。いじめられる為だけに行くなんて無意味だと思ったからだ。時雨は学校の方向に背を向け走り始めた。
適当なところで鞄をポイ捨てしてきたはいいものの行き先も決めていなかったのに気づきとりあえずそこら辺をフラフラしていた。"ああ今頃一時間目だろうな""みんなあのクソつまらん授業を受けてるんだろうな"と考えながら気づくと来た事ないところまで来てしまった。少し戸惑ったもののここまで来たら引き返せないと感じ走り出した。途中にあった公園で遊んでいるとどこからか視線を感じた。視線を感じた方を向くと公園の前の家の塀からセーラー服を着た時雨より少し年上くらいの子上半身だけを出しがこちらを見ていた。時雨は立ち上がりその子に声をかけた。
「何か用?」
「ううん、別に。この時間帯に君くらいの年齢の子がいるのは珍しいなって思って見てただけ。嫌に思ってたらごめんね。」
「全然!ちょっとびっくりしただけだから」
「ならよかった。私は関口凛子。16歳。貴方は?」
「源時雨。私は12歳よ。」
「12歳でその服装は中学生かな?学校はどうしたの?」
「サボったの。いじめられるためだけに行くのなんて嫌!」
「そうだったの…無責任に聞いてごめんね…」
「いいの。もう開き直っちゃった。」
そこから二人は意気投合し暫く話していた。時雨は塀を超えてこっちにくるよう言ったが凛子は断った。
「ところで時雨ちゃん。"テケテケ"って知ってる?」
「うん。確か上半身だけの妖怪?だったわよね。学校でもちょっと聞いた。」
「じゃあ、なんでテケテケってあんな姿になったかって知ってる?」
「知らないわ…」
すごくすごく寒い地域の話ね。とある踏切で女の子が電車に轢かれちゃったの。その時上半身と下半身が真っ二つになっちゃって…本来ならそこで死ぬはずなんだけどすごくすごく寒い地域って言ったでしょ?だから血が固まっちゃって生き返ったみたいな状態になったの。そしてその子は気を失っている間に無くなった下半身を探して今も彷徨っているらしいよ…
「そしてこの話を聞いた人は一週間以内にテケテケに会うって言われてるの」
「え…」
「時雨ちゃん、もしそんな子にあったら怖い?」
「怖いに決まっているじゃない!」
「そうだよね…怖いよね…」
そう言うと凛子はいきなり塀から飛び出した。その体に下半身はなく上半身のセーラー服の裾の部分には血がついていた。その瞬間時雨は悲鳴をあげ凛子から逃げた。時雨はかなりのスピードを出しているはずなのに凛子は腕しか使わず走り今すぐにでも時雨に追いつきそうなくらい速い。そしてついに追いつかれてしまった。時雨は怯え切ってしまい唯々悲鳴も上げられず固く瞳を閉じるしかなかった。
「…なーんてね!君に危害を加える気はグッハァ!」
そう。追いかけ始めてから今までのものは全て演技だった。凛子はそのことをおどけた口調で時雨に言おうとした瞬間横からすごい勢いで何かで殴られぶっ飛ばされてしまった。