③−2 コックリさん
「え?」
「どういう…うわっ!」
そのうち周りの机や椅子も暴走したようにどんどん浮かんであちこちにぶつかっていった。
「何が起き、危ない!」
光希が葵に飛びかかり元々葵がいた場所の窓に教卓の机が当たった。
「うわ…ありがとうございます横山さん。」
「今お礼はいいから、それより見える?」
光希が指した方を見ると元々机を合わせていたところに黒煙を纏った大きい動物の影が見える。あれがコックリさんの正体であろう。迫り来る机や椅子を避けながら影へと向かい近くなったところで発砲した。弾は影に命中したものの倒れる様子はない。祐希が弓を打ったり光希が斬撃を影に当ててもダメージが入った様子は無かった。葵達の体力もそろそろ切れかけ殆ど絶望的な状況に陥っていたが、葵が急に影に対して怒ったような表情で向いたかと思うと思いきりこう叫んだ。
「お前!何があったか知らないけど何か言ってくれなきゃ何も分かんねえだろ!いいからこんなふざけたことやめて俺たちと向き合え!話くらいなら聞いてやる!」
葵がそう叫ぶと机と椅子は暴走をやめ葵達も武器と制服ををネックレスに戻した。影は人の形になると黒煙は勢いよく解け姿を表した。
「すまん。やりすぎてもうた…」
「やりすぎもクソもあるか!びっくりしたぞ!」
「いや、本当にすまん。少し動揺してしまって…」
「それで…なんでこんなことしたんだ」
葵がため息をつきつつそう言うと男性は"狐狗狸"と名乗り自身の歴史を話し始めた。
狐狗狸は元々とある村で祀られていたお稲荷さん的な存在だった。しかし村長が変わり祠は潰され居場所を失った狐狗狸はその後も村を転々としていったが時が経つにつれてお稲荷さんを信じる人も少なくなり狐狗狸も消えかけていた。しかしその後コックリさんが流行り出し狐狗狸は再び姿を保つことができた。ちなみに自分が怪異になったという自覚はなく子供達を怖がらせるつもりもなかったらしい。
「あの現象もびっくりしてやってしまったのじゃ…まさか大ごとになってるとは思わんかった…本当、すまなかった…」
「ボク達は死ななかったしもういいけど、もう子供達を怖がらせたり怪我させたりするのはやめてね。」
「分かった。今後気をつけるよ。」
こうしてコックリさん事変(通称)は幕を閉じた。狐狗狸はメリー同様怪異調査団の拠点に住まわせておくことにした。祠も新しく拠点の近くに建てたという。