②−2 メリーさんの電話
葵は跳ねるような気持ちで家に帰ると家のベッドに寝転がった。暫くゴロゴロしていると急に一階の固定電話が鳴った。現在家には葵しかいなく、無視しようかと思ったがやけにしつこいので仕方なく応対した。
「はい、斎原です。何か御用ですか?」
『わたしメリーさん。今駅にいるの。』
相手はそれだけ言うと電話を切った。葵はこの都市伝説に覚えがあった。"メリーさんの電話"だ。話では、メリーさんは電話を使ってどんどん相手に近づき最終的に相手の後ろへくるというものであった。葵は早速もらった銃を構え待ち伏せすることにした。
三分後、また電話が鳴ったので受話器を取り応対すると相手はこう言った。
『わたしメリーさん。今雑貨屋の前にいるの。』
雑貨屋といえば通学路の途中であった筈だ。やはり、メリーさんはどんどん近づいてきている。
また三分後、電話が鳴り葵は食い気味に受話器をとった。
『わたしメリーさん。今貴方の家の前にいるの。』
ついに家の前まで来てしまった。唾を飲み込み待っているとすぐ後ろに気配を感じた。過呼吸になりそうなのを抑えているとまた電話が鳴った。葵は慎重に受話器を取る。
『わたしメリーさん。今貴方の後ろにいるの。』
その瞬間葵は勢いよく振り向き声の方へ拳銃を撃った。パァンと何かに当たったような音がして葵はソレから少し距離を取った。煙が落ち着き姿を確認するとウェーブがかった茶髪に真紅のロリータ服を着た少女がうつ伏せになって倒れていた。葵は急いで少女を拘束すると祐希に連絡をとり怪異調査団の拠点へ運ぶことになった。
「だいぶ近かったんだね。見事にみぞおちに当たってる。」
光希は少女の容態を確認するとこう言った。葵は少女に怪我をさせてしまった事を反省したが祐希にあまり気にしなくていいと言われ少し落ち着いた。数分後、拘束されたままの少女は目を覚ますと辺りを見渡しこう呟いた。
「ここ、どこ?マリは?」
その言葉を聞き逃さなかった葵は少女が目を覚ました事を祐希と光希に伝えた後少女の元へ行った。
「おはよう。ごめんね、いきなりあんなことして。痛かったよね。」
「全然。むしろそれで正気を取り戻したと言う感じよ。ところでここはどこ?マリは?」
「ここは"怪異調査団"って言う組織の拠点だよ。まあ組織といっても俺含めてまだ三人なんだけど…そして、マリという子は多分ここにはいないよ。見たことも聞いたこともないし…」
「そう…」
少女の質問に葵が答えると少女は分かりやすく落ち込み声も弱気になってしまった。
「ところで、縄解いてくれる?逃げる気はないから…」
少女の頼みに答え葵が拘束を解くと少女は自身の名前とどうやってここに来たかを話した。
「ありがとう。わたしはメリー。元々普通の人形だったの。今は意思持って人型にもなってるんだけど。」
「わたしを買ってくれたのがマリっていう子だったの。すっごく優しくて可愛いの!でも…マリったらうっかりさんでわたしを忘れていっちゃったの。今はもうどこにいるかわかんない…」
メリーはそう言うと泣き始めてしまった。葵はどうしていいか分からず慰めの言葉もかけられずただ黙っているしかなかった。
「…行こう」
「え?」
「探しに行こう。マリちゃんを。」
「本当?」
「どう言う子か教えて。できれば細かく。」