表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

① 口裂け女

少し時が経ち、少年こと(あおい)は中学に入学した。難しい勉強に苦戦しつつも順風満帆な生活を送っていた。そんなある日、用事で少し時間がかかってしまい学校を出たのはもう五時半過ぎだった。

 用事を押し付けてきた同級生への愚痴を呟きながら歩いていると道の向こうから見覚えのある女の姿が見えた。女は葵を見るなり口角を恐ろしいほど上げたかと思うと高笑いをしながら葵の方に走ってきた。葵は鞄を放り出し必死に逃げたが女の脚力には敵わずあっさりと捕まってしまった。腕を強く掴まれ鎌を振り下ろされ葵が生を諦めたその時、突然上空から金色に光る矢と赤く光る斬撃が飛んできたかと思うと容易く女を貫いた。女は呻き声を上げながら倒れると少し低めだが女性と判断できる声が上から降ってきた。


「やっと見つけたよ。まさか人間に手を出しているなんてね…しかも私達より年下の子を。」


葵が咄嗟に声のした方を見上げると金髪で背が高く弓を持った高身長で大人っぽい人と薄い茶髪で赤い剣を肩に担いだ葵と背丈が同じくらいの人がいた。しかも二人とも種類は違うが制服らしきものを着ており金髪の方は焦茶のハイネックの下着の上に白いワイシャツ、薄茶色のVネックセーター、紺とグレーのチェックスカート、その上に白いパーカーを着ており薄い茶髪の方は白い学ランとスラックスを着ていた。二人は葵の前まで降りてくると金髪の方が手を伸ばし葵が起きるのを手伝ってくれた。葵は二人にお礼を告げ、鞄を取りに行こうとするといきなり薄い茶髪の方に呼び止められた。


「待って!ちょっと話をさせてくれる?」


葵は一瞬怪しい勧誘かと疑ったがさっき助けてもらった事を考えるとこのまま話をせずに帰るのは気が引けたので仕方なく話をすることにした。


「君、このままでいると数え切れないほどの怪異に襲われるよ。」


葵は真面目に話を聞こうとした自分がバカだったと思った。なにか怪しい勧誘をされるような導入だったからだ。葵は肩に置かれた手を半ば強引に振り払いさっさと鞄を取りに行こうとすると金髪が葵の進行方向に立ち塞がった。葵は押し除けようとしたがどういうわけか金髪は一ミリも動かないしよろめく気配もない。この状態で薄い茶髪は話を続けた。


「…さっきも言った通り、君はこのままでいると数え切れないほどの怪異に襲われる。さっきの口裂け女だってわざわざ君の通学路を調べ上げて待ち伏せしてたんだよ?!」


薄い茶髪からその言葉が飛び出すと葵は一瞬にして固まってしまった。口裂け女が、自分の通学路を、調べ上げた?頭の中はそんな意味不明な言葉でいっぱいだった。薄い茶髪は話を続ける。


「だから、その度にボクらが出向くのは難しいの。こっちも暇じゃないし超人スーパーマンとかそういうのじゃないからね。君の場合、怪異に狙われる可能性が尋常じゃないほど高い。だから自分で自分の身を守れるようにならなくちゃいけないの。そのための…」


「絶対怪しいやつじゃねえか!そもそもなんなんだお前らは?!」


薄い茶髪の次の言葉を遮るようにして葵は叫んだ。薄い茶髪が呆気にとられると、今度は金髪が話し始めた。


「ごめんね、いきなり怪異とか一生襲われるとか言っちゃって。私達は、身の回りの怪異、妖怪みたいなものだね。それを調べて人間に手を挙げるようであれば倒す、"怪異調査団"っていう組織なの。組織って言っても二人だけの同盟みたいなものだけどね…」


金髪は困ったように笑うと説明を続けた。


「そして、今日も情報収集をしていたらいきなり怪異が暴走したって警鐘が出て急いで行ったら君がいたっていうこと。本来、ちょっとオーラが強い人は怪異に襲われる傾向が強いんだけど君はその…桁違いのオーラなんだ。逆に怪異を呼び込んでしまうほどオーラが強いんだよ。もしかして、一度口裂け女に会ったことがある?」


葵が金髪の問いに対して頷くと、金髪はやっぱりと言いをして続けた。


「やっぱりそうだったんだ。一回会って遠ざけたことであいつの君に対する執着が高くなっちゃったみたいだね。さっきあの子も言っていた通り、私達も君が襲われる度に行くのは難しいから死ぬのを避けたいなら怪異調査団に入って訓練する方が妥当だと思うんだけど…どうかな?」


金髪の説明に納得してしまった葵はその提案に頷きざるを得なかった。怪異調査団に入る事を伝えると金髪は安堵したような表情をして薄い茶髪は嬉しそうに目を輝かせた。そのあと金髪が口を開き、自己紹介を始めた。


「よかった。私は榎本祐希(えのもとゆうき)。こっちは横山光希(よこやまみつき)。よろしくね。」


斎原葵(さいはらあおい)です。こちらこそよろしくお願いします。」


「制服と武器は明日君の分も用意するよ。待ってて。」


そして金髪と薄い茶髪は飛び去っていった。葵は奇妙な感覚に浸りながらも口裂け女の存在を思い出し、足元を見たがすでに消えておりそのまま家に着くまで見ることはなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ