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電子天女に嫌われたのは、Fランクの闇使い  作者: しるべ雅キ
濫觴の異能者達

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第96話【絡め取ったのは、元Fランクの怪力男】

訓練を重ねる中で斑辺恵(はんべえ)は、

新たな技を編み出す決意を固めた。

「ミストデバイス起動、硼岩棄晶(フォトンクレイ)の反応を確認」

「さーて、今回は何が来るのかにゃ~?……っと、ワーム級とハウンド級だ」

 手のひらに浮かべたパネルを操作したサイカが草原の遥か遠くを見据え、足元に意識を集中したピンゾロはLバングルに該当する硼岩棄晶(フォトンクレイ)の画像を浮かべる。


「まさか地面の振動をキャッチ出来るようになるとはね」

「地面に触ってた時もあったけど、これならしゃがまなくていいから便利だぜ」

発想(はっそう)()びの思わぬ副産物じゃの」

 手放しで称賛する斑辺恵(はんべえ)にピンゾロが軽く(こぶし)を握って見せ、ベルトの左側に取り付けた筒に手を当てていたコチョウも笑みを浮かべた。


「今までは手から出す事しか考えなかった異能力(トーチ)を足からも出せるなんて、ホント目から鱗だね~」

「うむ、見事な成長じゃ。ところで数は分かるかの?」

 握った(こぶし)を開いたピンゾロが鼻の頭を指で掻き、深々と頷いたコチョウは言葉に含みを持たせて聞き返す。


「もちろんだ。ワーム級が10体に、ハウンド級が6体?」

「ワーム級とハウンド級か……まさかな」

 自信満々に親指を立てたピンゾロがしばらく意識を集中してから数に眉を(ひそ)め、翔星(しょうせい)は緩む口元を抑えながら腰の(レイ)ガンに手を当てた。


「ん? どしたの、翔星(しょうせい)先生?」

「前に取り逃がした奴等を思い出しただけだ」

 (わず)かな空気の変化に気付いたピンゾロが聞き返し、翔星(しょうせい)は事も無げに答える。


「初めてケルベロス級に遭遇した時か」

「今にして思えば、あれは(オレ)の闇を(かわ)す慣らし運転だったんだろう」

 後ろで聞いていた斑辺恵(はんべえ)がLバングルに過去の記録を表示し、軽く頷きを返した翔星(しょうせい)は記憶を辿りながら不敵な笑みを浮かべる。


「まさか今回も合体するとか?」

「それは来てからのお楽しみだ」

 身構えた体に緊張を走らせたピンゾロに翔星(しょうせい)が肩をすくめて返し、一同は各々の装備を確認しながら迎撃態勢を取り始めた。



『『キエェェーッ!』』『『アオーン!』』

「なんだぁ? あいつら、こっちに来ないのか?」

 硬い殻を被った筒状の硼岩棄晶(フォトンクレイ)と頭に布のようなものを巻いた犬型の硼岩棄晶(フォトンクレイ)の動きが突然止まり、ピンゾロは呆れつつもすぐに動けるように身構える。


「どうしましょう? ここからでは攻撃が届きませんね~……」

「では、こちらから行くかの?」

「何か企んでるのかもしれない、迂闊に飛び込むのは危険だ」

 手にした円盤を構えながらも狙いを定めあぐねる焔巳(エンミ)にコチョウが不敵な笑みを返し、半歩前に出た斑辺恵(はんべえ)は道を塞ぐように腕を広げた。


「なあ、斑辺恵(はんべえ)先生。そんな正論、うちの大将やお(ひい)さんに通じると思うか?」

「思ってないよ、だから自分はここで後詰めを務める」

 後ろから斑辺恵(はんべえ)の肩に手を乗せピンゾロが静かに首を横に振り、当然の如く首を振った斑辺恵(はんべえ)は力強く足を踏みしめる。


「それなら(おれ)ちゃんは、翔星(しょうせい)ちゃんのお(もり)と行きますか」

「好き勝手言いやがって……」

 しばらく肩を震わせて笑ったピンゾロが大袈裟に膝を曲げてみせ、翔星(しょうせい)は密かに笑いを堪えながら(レイ)ガンを抜いた。


「でも行くんだろ?」

「そのつもりだったが、どうやら時間切れのようだ」

「ん? あいつら急に光って……」

 慣れた様子で聞き返した斑辺恵(はんべえ)に首を横に振った翔星(しょうせい)が前を指差し、ピンゾロは(まばゆ)い光を放ちながら折り重なる硼岩棄晶(フォトンクレイ)をしばらく眺める。


『『キキキ……』』『『グルルル……ゥ』』

「やっぱり合体しちゃったよ……」

「データ照合。ヒドラ級、及びケルベロス級」

 太い胴体から5本の首が伸びるヒドラ級とふた回り大きくなった胴体に頭を3つ付けたハウンド級にピンゾロが呆れ、サイカは淡々と手のひらに画像を浮かべた。


「あいつら全部の首にコアがあるから、同時破壊しないと駆除出来ないんだよな」

「問題無い、合体硼岩棄晶(フォトンクレイ)は何度も駆除して来た」

「ヒドラ級もケルベロス級もコアをつなぐバイパスが弱点」

 しばし懐に意識を向けてから手のひらに力を込めた斑辺恵(はんべえ)翔星(しょうせい)が不敵な笑みを返し、サイカも手のひらに硼岩棄晶(フォトンクレイ)の立体映像を浮かべる。


「ここで闇を使うとケルベロス級のリアクションが未知数だ、このまま行くぞ」

「了解した。台刻転(だいこくてん)、起動」

 (レイ)ガンを構えた翔星(しょうせい)の合図に頷いたサイカが胸部装甲から転移ゲートを展開し、2人はゲートを通って上空に転移した。


「ヒドラを同時に駆除する気か! 焔巳(エンミ)さん、自分達はケルベロス級を!」

「かしこまりました、斑辺恵(はんべえ)様。緋翼(ひよく)、起動」

 翔星(しょうせい)達の転移地点から逆算した斑辺恵(はんべえ)が手のひらに爆風を起こして跳び上がり、焔巳(エンミ)も赤い翼状の機器を広げて飛び上がる。


「ほれ、わしらも行くぞ。サイクロンマフラー、起動じゃ」

「あいよ! コチョウ先生、いっちょ頼んだぜ」

 マフラーから(はね)状の機器を広げたコチョウが伸ばした両手にピンゾロが掴まり、2人はケルベロス級に向かって飛び立った。



『『キィァ?』』『『キィェ?』』

「ちょうど2体の真上か、前回と同じだな」

「節約は大事」

 2体のヒドラ級を眼下に捉えた翔星(しょうせい)が落下しながら感心し、サイカは含み笑いを返す。


「上出来だ、そっちは任せた!」

「了解した、虎影灯襖虚(こえいとうおうきょ)起動」

 (レイ)ガンを撃って落下を加速させた翔星(しょうせい)が片方のヒドラ級に向かい、サイカは懐中電灯の先端に光の刃を出しながらもう片方のヒドラ級に向かった。


「バイパスは覚えてる、もう逃げられないぜ」

『『キィェアッ!?』』

 異能力(トーチ)の足場を使って駆け下りた翔星(しょうせい)は、ヒドラ級の背に立ちデータと合致する位置に銃口を突き付ける。


「目標確認、瑞雲(ずいうん)出力上昇。攻撃を第一段階に移行」

『『ギィァッ!?』』

 飛行装置を加速させたサイカも目標地点に光の刃を突き立て、ヒドラ級は一斉に悲鳴を上げる。


「これで、終わりだ」「路接(ろせつ)連続射出」

『『キギョェーッ!!』』『『キギョァーッ!!』』

 (レイ)ガンの引き金を引いた翔星(しょうせい)が闇の針を流し込むと同時にサイカが光の刃を撃ち込み、2体のヒドラ級は口々に断末魔の声を響かせた。



「さすがは翔星(しょうせい)達だ、こっちも負けては……」

『『アオオォーンッ!』』

 崩れたヒドラ級を確認した斑辺恵(はんべえ)に向け、ケルベロス級が一斉に衝撃波を放つ。


「……っと、あぶなかった~」

「ケルベロス級の衝撃波は、ハウンド級の比ではありません。ご注意ください」

「ありがとう。でも、この程度ならひとりで行けるかな?」

 手のひらからの爆風で大きく下がりながら竹とんぼの羽を取り出した斑辺恵(はんべえ)は、両手に円盤状の武器を構えた焔巳(エンミ)に手のひらを向けてから跳び立った。


「行くよ……多重鎌鼬(たじゅうかまいたち)

『『ギャインッ!?』』

 靴底に出した異能力(トーチ)の炎を足場に跳び回った斑辺恵(はんべえ)が縦横無尽に竹とんぼの羽を振り、首のコアを同時に切断されたケルベロス級は短い悲鳴と共に倒れる。


「まあ、こんなものかな?」

「さすがは斑辺恵(はんべえ)様、訓練の成果が出ましたね」

「ありがとう、焔巳(エンミ)さん。でも、まだまだかな」

 灰となって崩れるケルベロス級を確認しつつ着地した斑辺恵(はんべえ)は、称賛の眼差しを向けて来た焔巳(エンミ)に複雑な笑みを返した。



「残るはケルベロス級1体じゃ、このままわしが蹴り砕こうかの?」

「ああ、派手なのを一発頼むぜ」

 やや遅れて到着したコチョウが最後に残ったケルベロス級を指差し、ピンゾロは親指を立てて応える。


「うむ、まかせるのじゃ……むっ!?」

『『アオォォーッ!』』

「タイフーンステッキ、起動! すまぬ、油断した!」

 手前でピンゾロを降ろしたコチョウは、ケルベロス級が集束して放った衝撃波を咄嗟に棒状の防御装置で受け止めながら遠くに吹き飛ばされた。


「ありゃま~……(おれ)ちゃん達とは別の隊に披露した芸かねぇ? コチョウ先生が戻って来るまで待ってはくれないよな?」

『『グルルル……』』

 初めて見る直線状に飛ぶ衝撃波を軽く分析したピンゾロが不敵な笑みと共に振り向き、ケルベロス級は低い(うな)り声と共に次の衝撃波を放つべく身構える。


「だよな~……ならば!」

『『アォッ!?』』

 自嘲気味に笑った笑ったピンゾロが眼光鋭く踏み込み、ケルベロス級の下に滑り込む。


「もらった! 潜入喉輪締(せんにゅうのどわじ)め!」

『『ギャィィンッ!?』』

 手早く腹のバイパスを掴んだピンゾロが(ひね)りながら引き、ケルベロス級は(たわ)んだ自らのバイパスに絡み取られたコアを同時に締め潰されて断末魔の悲鳴を上げた。



「まさか、ケルベロス級をひとりで駆除出来るようになるとはの」

「バイパスを潰さず掴んで、そのまま全てのコアを同時に締め上げるとはな」

 急ぎ合流したコチョウが呆れ気味にピンゾロを称賛し、バイザーを外した翔星(しょうせい)も映像を分析しながら感心する。


「隠し技だけど所詮はイマジントリガーの範疇、オーバーサークルにはな……」

「ピンゾロまで何を……訓練したいのなら、コチョウさんと相談してくれ」

 硬く握り締めた(こぶし)をしばし見詰めていたピンゾロがお手上げの仕草を返し、疲れ切った様子でため息をついた翔星(しょうせい)は投げ遣り気味に頭を掻いた。


「オッケー。今夜はよろしくね、コチョウ先生」

「では、教師らしい服装でも探すかの?」

 翔星(しょうせい)に親指を立てて返したピンゾロが大きく伸びをし、コチョウは冗談交じりに衣服の購入リストを手のひらに浮かべる。


「冗談は、もうちょい色気が出るようになってから言ってくれよ」

「言っておれ、はよミーティングに行くぞ」

「へいへ~い」

 視線を逸らして頭を掻いたピンゾロは、弾むように宿舎へと向かったコチョウの背中を眺めながらいつもの足取りで歩き出した。

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