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電子天女に嫌われたのは、Fランクの闇使い  作者: しるべ雅キ
濫觴の異能者達

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第88話【広さに驚いたのは、元Fランクの怪力男】

徹底的に情報を隠蔽しながら移動した翔星(しょうせい)達は、

大きな問題も無くゼロ番街へと降り立った

「なんつーか、ここホントにゼロ番街なのか?」

「案内板が違うだけで、他は何も変わらないね」

 先頭を歩くピンゾロが本部と変わらない廊下を不安そうに眺め、斑辺恵(はんべえ)も釈然としない表情で壁面を指差す。


「ゼロ番街の本部は地球の本部と同一の規格で建造」

「OBが移り住むだけなのに()()ね……」

 周囲を照らすようにサイカが手のひらに立体映像を浮かべ、両手を頭の後ろへと回したピンゾロは見慣れた光景と寸分(たが)わぬ壁に眉を(ひそ)めた。


「本部は行政機関の役割も担当」

「確かに、地球から公務員を引っ張り込む訳に行かないものね」

「ゼロ番街では元異能者(バディ)が色々な職に就いているそうですよ」

 画像を切り替えたサイカの説明に斑辺恵(はんべえ)が納得しながら頷き、焔巳(エンミ)も横から立体映像を浮かべた手のひらを差し出す。


「前にも聞いた気がするな~、(おれ)ちゃんにも出来る仕事があるのかね~」

「いざとなればわしが働くから、安心せい」

「コチョウ先生、それ一番やっちゃダメなやつだからね~」

 小さくため息をついてから頭を掻いたピンゾロは、大きく胸を張ったコチョウに曖昧な笑みを返した。


「本部の見学は後回しだ、地球とほとんど変わらないからな」

「それはそれで興味あるけどね」

 先頭の翔星(しょうせい)が立ち止って振り向き、斑辺恵(はんべえ)は複雑な表情と共に周囲を見回す。


「確かに(オレ)も興味あるけど、説明は山ほどあるからな」

「毎晩サイカさんと語らった成果、楽しみにしていますね」

「あのなぁ……」

 緩めた口元を引き締めた翔星(しょうせい)は、笑顔を近付けて来た焔巳(エンミ)に苦い表情を浮かべて言葉を呑み込む。


「そう照れるでないわ」

「貴官とのピロートークは実に刺激的、今後も期待」

「勘弁してくれ……行くぞ」

 豪快に笑ったコチョウの後ろからサイカがはにかんで微笑み、肩を落として背を向けた翔星(しょうせい)は逃げるような足取りで出口へと向かった。



「本部の外は結界街みたいな町になってるのね~」

「宇宙空間にゼロから造ったから、思う存分合理的な配置が出来るって訳だ」

 本部を出て大通りを前にしたピンゾロが懐かしむように街並みを見回し、翔星(しょうせい)は平面の上に建物を並べる立体映像をLバングルに浮かべる。


「だから狭いはずなのに、地球よりも開放的に見えるんだね」

「ここは硼岩棄晶(フォトンクレイ)から隠れる必要が無いからな」

 無邪気とも例えられるような笑顔を浮かべて立ち並ぶ商店を眺めていた斑辺恵(はんべえ)が大きく腕を伸ばし、翔星(しょうせい)は地球との違いを端的に説明した。


「その割には大鳥居があるのね~」

「生まれた時から見てる風景だから、無いと逆に寂しいよ」

 通りを見据えたピンゾロが遠くに見える大鳥居を指差し、斑辺恵(はんべえ)は冗談めかして安堵の笑みを浮かべる。


「それに、何事にも万が一はあるからな」

「確かに、迎撃基地が丸裸なんて洒落にならないね」

 涼しい顔で頷いた翔星(しょうせい)が上空を指差し、斑辺恵(はんべえ)は軽く肩を震わせて笑った。


「ところで翔星(しょうせい)ちゃん。お空が青いんだけど、どうなってんの?」

「上層は地球の大気と同じ成分で構成」

 翔星(しょうせい)の指に釣られて見上げたピンゾロが地球と変わらぬ様子の青空に首を(かし)げ、割って入るようにサイカが説明用の画像を手のひらに浮かべる。


「へぇ~、驚いた。まるで機械で造った第二の地球だね~」

「ゼロ番街の外が見える展望台もあるそうじゃ」

 空を見上げたまま複雑な表情を浮かべたピンゾロの袖を引いたコチョウは、元気付けるように展望施設の案内画像を手のひらに浮かべた。


「訓練の合間には休暇もあるぜ、2人で行ってこいよ」

「な!? 何を言ってんのかな、翔星(しょうせい)先生は」

 含み笑いを浮かべた翔星(しょうせい)が親指を立て、思わず声を裏返らせたピンゾロは平静を装って咳払いする。


「うむ、翔星(しょうせい)殿も気が利くようになったのう」

「今はそう言う事にしといてやるよ」

 腕組みをしたコチョウが噛み締めるように何度も頷き、ピンゾロは諦め混じりに大きく頭を掻いた。


「やっと宇宙らしくなってきたね、地球と全然変わらないから心配だったよ」

礼真(らいしん)の実家も、この中にあるだろうからな」

 コチョウと同じ案内画像をLバングルに浮かべた斑辺恵(はんべえ)が安堵のため息をつき、翔星(しょうせい)は思い出したように周囲を見回す。


翔星(しょうせい)さんの待機任務先にいた駐在員でしたね、ゼロ番街出身の」

「自分の事はほとんど語らなかったけど、自然に地球で暮らしてたよ」

 柔らかく微笑んだ焔巳(エンミ)が手のひらに顔写真を映し出し、翔星(しょうせい)は腰の(レイ)ガンに手を当てて頷く。


「ここで生まれた異能者(バディ)の教育施設も兼ねておるのじゃろうな」

「一度地球に降りる決まりなら、最初から環境を似せて置く方が便利なんだろう」

「何とも効率のいいことで」

 手のひらに画像を浮かべて情報を整理したコチョウに翔星(しょうせい)が同意して頷き、呆れ果てたピンゾロは大袈裟に肩をすくめた。


「そろそろ移動するか、こっちだ」

「訓練するのは本部じゃないのか?」

「専用の設備を用意したそうだ」

 大通りの先に見えるゲートターミナルに親指を向けた翔星(しょうせい)は、振り向いて本部を指差す斑辺恵(はんべえ)に曖昧な笑みを返す。


「随分と気前のいい話だね~」

「天女サマの計らいだ」

「そいつは何とも、いやな予感がして来たね~」

 気に留める事も無く笑ったピンゾロが翔星(しょうせい)の含み笑いにトーンを落とし、一行はゲートターミナルに向かって歩き出した。



「こりゃまた、随分と広い野っ原ね~」

「それだけ大規模な訓練になる訳か」

 転移先に建っていた飾り気のないコンクリート製の宿舎から出たピンゾロが遮るものの無い草原を見渡し、斑辺恵(はんべえ)も草原に立つ人数を想像しながら慎重に頷く。


「いや、ここを使うのは(オレ)達6人だけだ」

「何だって!?」

 続けて草原へと立った翔星(しょうせい)が静かに首を横に振り、等間隔で指を差していたピンゾロは思わず手を止める。


「ここが(オレ)達の担当する持ち場だからな」

「持ち場って、まさか!?」

 涼しい顔で頷いた翔星(しょうせい)が大きく伸びをし、斑辺恵(はんべえ)は宿舎と草原を見比べた。


「ああ、ゼロ番街を本物の地球だと思い込ませて硼岩棄晶(フォトンクレイ)を誘い込む作戦だ」

「それじゃ、ここと同じ迎撃ポイントがいくつもある訳ね」

 Lバングルに無数の硼岩棄晶(フォトンクレイ)を抱える光球群の画像を浮かべた翔星(しょうせい)が針路を示す矢印を曲げ、ピンゾロは得心の行った様子で建物に目を向ける。


「全部で8964区画、ここは第176区画」

「あのUFOの数を考えれば、妥当なのかも分からんね~」

 手のひらに一覧表を浮かべたサイカが宿舎の側壁を指差し、ピンゾロは浮かない表情で光球群の画像をLバングルに浮かべた。


「ここのOBも総動員したんだ、あとは足りるように底上げするしかないぜ」

「違いねえ、それにしてもゼロ番街ってどんだけ広いんだよ」

 Lバングルに浮かべた画像を名簿に切り替えた翔星(しょうせい)が静かに首を振り、軽く手を振って返したピンゾロは呆れ気味に果ての見えない草原を眺める。


「町はまだ本部周辺にしか無いけど、ゼロ番街全体は地球サイズだそうだ」

「おいおい、マジで第二の地球なのかよ!?」

 Lバングルに本部周辺の地図を浮かべた翔星(しょうせい)が更に画像を切り替え、ピンゾロは複雑な表情を浮かべて聞き返した。


「細かい構成は違うだろうけど、本質的にはその通りだろうな」

「それだけ大きいのに、地球から見えないのはどゆこと?」

 Lバングルの画像を数回切り替えた翔星(しょうせい)が笑いを(こら)え、腕組みをして頷いたピンゾロは新たな疑問を口に出す。


「ゼロ番街は地球の惑星軌道上、ちょうど対角の位置にある」

「お天道(てんと)様越しなら、見えないのも当然ね」

「飛来する硼岩棄晶(フォトンクレイ)も見えないのじゃから、地球側で気付く事も無かろう」

 手のひらに惑星軌道の立体映像を出したサイカの説明にピンゾロが深々と頷きを返し、コチョウも立体映像の地球から太陽まで指でなぞった。


「でもよ、硼岩棄晶(フォトンクレイ)が逃げちまったら元も子もないだろ?」

硼岩棄晶(フォトンクレイ)の誘導が終了次第、ゼロ番街を大規模結界で覆う作戦」

「平たく言えば、結界の牢獄だ」

 立体映像を眺めつつ聞き返した斑辺恵(はんべえ)にサイカが画像を切り替えて答え、翔星(しょうせい)は簡単に説明をまとめてから不敵な笑みを浮かべる。


「なるほど、それなら地球の安全は守られるか」

「内部も結界で区切るから、本部周辺に硼岩棄晶(フォトンクレイ)が入り込む心配も無いぜ」

 安堵のため息と共に斑辺恵(はんべえ)が何度も頷き、軽く頷きを返した翔星(しょうせい)はLバングルに地図を浮かべる。


「こっちはいつでも安全地帯で対策を練り直せるなんて、何とも効率がいいのね」

「それだけ人間を大事にしてるのさ、電子天女(マスターデバイス)は」

 作戦の意図に気付いたピンゾロが呆れ気味に頭を掻き、翔星(しょうせい)は複雑な笑みと共に大きく肩をすくめた。

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