第79話【振り回されたのは、元Fランクの異能者達】
再び虫食い地点を感知した翔星達は、
近付いて来る脅威を迎え討つ覚悟を決めた。
「サイカ、お客さんの来る方向を虫食いの位置から割り出せないか?」
「現在電子天女との接続途絶、交信履歴から分析……」
周囲を見回す翔星に頷いたサイカは、一旦空を見上げてから目を閉じる。
「……分析完了、あの方角から接近すると予測」
「迎撃ポイントはここがいいか……簡単な配置を考えた、今から送信する」
目を開いたサイカが斜め前方を指差し、翔星は即座にLバングルを操作した。
「配置を確認した、ワシも参加する」
「いいのか?」
「どの道、ゲートが壊されれば終わりだ」
Lバングルで地図を確認した造酒がゲートにつないだ端末を操作する手を止め、慎重に聞き返した翔星に同じく作業の手を止めた博士が肩をすくめる。
「違いない、後ろは任せていいか?」
「ふっ、お安い御用だ」
思わず吹き出しかけた翔星がゲートに親指を向け、博士は余裕の笑みを返す。
「リーレちゃんと氷騰ちゃんは先生とハカセを守ってくれるかな?」
「もちろんです!」
軽く伸びをしたピンゾロが親指を立てて片目を瞑り、氷騰は大きく頷いた。
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「今回も敵は2体、南方剣士と赤い闘士と見ていいだろ」
「赤い闘士は輝士械儕のコピーだそうじゃな、わしらに任せてもらおう」
配置の先頭に立った翔星が記録映像をLバングルに浮かべ、同じ記録映像を手のひらに浮かべたコチョウは腕組みをして頷く。
「異論は無いが相手次第だ」
「確か報告では、翔星さんにも攻撃したようですね」
「特例を除いて人間に手出しできぬ輝士械儕の常識は通じぬようじゃな」
曖昧な表情を返した翔星を焔巳が心配そうに見詰め、コチョウは緊張を誤魔化すように大きく伸びをした。
「これだけ輝士械儕がいれば異能者には手出しできない」
「ありがとよ、頼りにしてるぜ」
手のひらに地図画像を浮かべたサイカの口元がゆるみ、翔星は愛想笑いを返す。
「割り振りはいいとして、南方剣士は倒せるのか?」
「分からん、避けるので精いっぱいだった」
「そっか、楽しそうで何よりだ。そろそろ来るぜ」
画像を閉じたピンゾロは、静かに首を横に振った翔星に笑顔を返してから全身のバネを溜めた。
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『目標確認、ガジェットテイル展開』
「赤い闘士が前衛か、コピーも定石通りとは恐れ入る」
「油断するな、剣士の踏み込みも相当だ」
一定の距離を取って立ち止まった赤い闘士を斑辺恵が呆れ気味に観察し、翔星は緊張を最大限滲ませながらRガンを下に向ける
「なるほどね」
「来るとしたら……」
『マシラビローズ起動、吽猛棍射出』
静かに頷きを返したピンゾロと斑辺恵が同時に身構え、直後に赤い闘士は鞴状の機器を踏んで吹き出した炎を圧縮して作り出した三節棍を手に取った。
『キィェェエーイッ!』
「っと……思った通り、輝士の動きに合わせたか」
一同が赤い闘士の挙動に気を取られた刹那、音も無く目前に迫って来ていた南方剣士が振り下ろした杖を察知した翔星大きく跳んで躱す。
「次が来る前に波状攻撃だ! 向こうの連携を潰す!」
「任せろ! パームブラスト!」
『……ッ!?』
着地と同時に指示を出した翔星に応えた斑辺恵が両手のひらから空気弾を交互に放ち、南方剣士は乱れ散る爆風に足を止めた。
「柩連焔刃、ニードルモード!」
『フンッ……!』
斑辺恵と背中合わの焔巳が両手に1枚ずつ手にした円盤型の武器から火花の針を何本も撃ち出し、赤い闘士はその場で三節棍を振り回して針を落とす。
「悪いけど合流させないぜ! 真空金剛散弾!」
『キィェェ……ッ!?』
動きを止めた赤い闘士を確認したピンゾロが両手のひらで圧縮した空気の散弾を投げ、杖を振り上げていた南方剣士は空気の粒を躱すべく後方に跳ぶ。
「ライドハーケン、シュート!」
『……ハッ!?』
ピンゾロが作り出した死角から跳び上がったコチョウが空中で回し蹴りを放ち、脚部の機器から撃ち出した衝撃波が赤い闘士の三節棍を弾き落とした。
「いい感じだ。Rガン、ダブル……!?」
『ハァッ!』
好機と踏んだ翔星がRガンの引き金に指を掛けた瞬間、新たな炎の三節棍を作り出した赤い闘士が間近に迫る。
「くっ!……オーバーサークル!」
『ヘァッ!?』
咄嗟に翔星がRガンを回転させ、闇の円刃に新たな三節棍を弾き飛ばされた赤い闘士は大きく後方に跳んで体勢を整えた。
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「っぶね~……まさか初手から闘士が俺を狙ってたとはね」
「翔星殿、大丈夫か!?」
「何とかな」
Rガンを止めて周囲を警戒した翔星は、駆け寄ったコチョウに軽く手を振る。
「ところで今、あの闘士の攻撃を弾いたように見えましたが?」
「平たく言えば切り札だ、それより俺に構うな!」
続けて近寄って来た焔巳が首を傾げ、簡単に答えた翔星は突然語気を強めて手を大きく振り払った。
「それは、どういう?……!?」
『キィェェエーイッ!』
「ぬかった! 狙いはゲートじゃ!」
困惑した焔巳の疑問を南方剣士の奇声が遮り、コチョウは慌てて振り向く。
「させるか! 真空金剛散弾!」
『……ッ!?』
溜めていたバネを伸ばして跳び上がったピンゾロが空気の散弾を投げ、圧縮した空気の粒を上空から大量に浴びせられた南方剣士は大きく後方に下がった。
「助かったぜ、ピンゾロ」
「いいって事よ。それより厄介よね、獲物に執着しないタイプは」
息を整えた翔星が出来る限りの進路を塞ぐようにRガンを構え、軽く手を振って返したピンゾロは真剣な表情で遠くの人影を見据える。
「見た感じゲートも防衛ラインの中、迂闊に下がれないな」
「南方剣士がスピードで攪乱して赤い闘士が死角から一撃か……」
後方に目を向けた翔星が複雑な表情を浮かべ、斑辺恵も噛み締めるような表情で戦闘を思い返す。
「しかも剣士の攻撃も決定打。いやはや、先輩との戦いは勉強になるね~」
「冗談を言うとる場合か、このままではジリ貧じゃぞ?」
「前回の接触を参考に打開策を提案」
大袈裟に肩をすくめたピンゾロをコチョウが窘め、横からサイカが静かな口調で割って入った。
「サイカちゃん、それ本当かい?」
「個体名時影翔星が防衛ライン突破後、2体の消滅を確認」
思わず目を見開いたピンゾロが聞き返し、サイカは手のひらに記録映像を出して淡々と説明する。
「つまり今回も防衛ラインを突破すれば、何らかの変化があると?」
「あいつらは奥にある何かを守ってる、少なくとも攻撃は弱まるはずだ」
反対側から映像を見ていた斑辺恵が杖を構え直した南方剣士を睨み、翔星はジワジワと間合いを詰めて来る赤い闘士を睨みながら頷いた。
「何か策はあるのでしょうか?」
「一応な。ゲートにいる連中を呼んで来るから、しばらく足止めを頼めるか?」
斑辺恵を庇うように摺り足で動きながら焔巳が聞き返し、ため息交じりに頷いた翔星はゲートを設置した方向に親指を向ける。
「任された」
「なる早で頼んだぜ」
「善処する」
頬を綻ばせて片目を瞑ったピンゾロと斑辺恵が同時に親指を立て、親指を立てて返した翔星はゲートに向かって走り出した。




