第57話【託されたのは、元Fランクの闇使い】
羽士の窮地を察知した聡羅と蔵は、
プラント級の上部へ向かった。
「ホーミングフレア~、発射ぁ~」
「来迎トマホーク!」
体と同様に巨大化した銃を両脇に抱えたマーダが火炎弾を撃ち、肩に乗った蔵も同時にスコップを振って先端に灯した斧型の炎を飛ばす。
『ギィアッ!』
「ぬぅっ!?」
「あれぇ~? さっきは当たったのに~」
飛膜を振って攻撃を弾き飛ばした歪なヒト型のモスマン級に蔵が小さく唸り、銃口を通してモスマン級を追うマーダは不思議そうに首を傾げた。
「ふむ……灯明トマホーク」
『ギェアッ!』
「今ですっ!」
新たな炎を灯したスコップを振った蔵は、規則正しく並んで飛ぶ炎の礫を弾き続けるモスマン級を確認して合図を出す。
「ガイドランサ~、射出ぅ~」
『ギィィアッ!?』
腕力で強引に銃口の揺れを止めたマーダが銃剣を射出し、綱につながれた巨大な銃剣は礫を弾く飛膜の隙間からモスマン級の胴を貫いた勢いで上下に引き裂いた。
「ようやく駆除出来ましたな」
「攻撃を弾く飛膜か……思った以上に厄介だな」
安堵した蔵が即座に気を引き締め、聡羅も折り畳んだスコップを構え直す。
「それなら! ライトニングブレイク!」
『ガァォーッ!『グォァーッ!』』
聡羅の背中に抱き着いたカーサが魔導書型の機器から2枚のページを取り外し、屏風のように畳んでから開いたページから雷の虎が飛び出す。
「電光石火の連撃を弾き返せると思わない事ね!」
『『ギィィエェーッ!?』』『『ギァァーッ!?』』
不敵な笑みを浮かべたカーサに合わせて2頭の雷の虎が空中を跳ねるように駆け回り、残っていたモスマン級は断末魔の叫びと共に次々と灰になった。
「モスマン級の殲滅確認、ざっとこんなものね」
「見事なもんだが、いつの間に空中でも使えるようになったんだ?」
帽子の先端に意識を集中したカーサが誇らしそうに胸を張り、呆然と眺めていた聡羅は我に返って聞き返す。
「雷を足場に使う輝士械儕がいるって、サイカに教えてもらったのよ」
「そうだったのか、おかげで助かったよ」
「ふみゃぁ~」
肩口まで身を乗り出しつつ手のひらに立体映像を浮かべたカーサは、聡羅に頭を優しく撫でられて嬉しそうに目を細める。
「そろそろ時間ですな」
「羽士くんと壬奈ちゃんならぁ~、きっと大丈夫よぉ~」
アラーム音に気付いた蔵がLバングルを確認し、マーダは目の前のプラント級を余裕の微笑みを浮かべながら見上げた。
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『グルァッ!?』『ギャインッ!?』
「雑魚ばかりだから苦労は無いけど、そろそろ時間じゃないのか?」
両腕を伸ばしてアント級とハウンド級のコアを同時に掴んだピンゾロは、ひと息ついてからLバングルを確認する。
『キェッ!?』
「コアの座標軸入力調整に2秒必要」
「分かった。周囲の安全を確保次第、調整を頼む」
光の刃でワーム級の喉元を貫いたサイカが手のひらに立体映像を浮かべ、翔星は周囲に注意を払いながら頷きを返した。
「ならば、アンテナスロウ、起動じゃ!」
「いつもの回し蹴り使っちゃうと、プラント級にも当たるんでないかい?」
「こちらも細工は流々じゃよ。タイフーンスティック、起動じゃ!」
周囲を確認してから額に手を当てたコチョウは、心配そうに聞き返すピンゾロに不敵な笑みを返しながらバックルの右側から棒状の機器を取り出して伸ばす。
「ん? それ、防御装置だろ?」
「防御機能とて使いようじゃよ。受けよ、突風大車輪!」
『『グォーッ!?……』』『『ブルァッ!?……』』
尚も要領を得ないピンゾロにウィンクを返したコチョウが棒の中心近くを両手で掴んで頭上で回し、巻き起こった風を受けた硼岩棄晶の動きが一斉に止まった。
「あらら……お見事」
「これなら今すぐ転移出来るじゃろ?」
「協力に感謝、座標調整終了」
呆然としながら感心するピンゾロを気にも留めずコチョウが親指を立て、頷きを返したサイカは胸部装甲にある転移機能のランプを点灯させる。
「そいじゃ、工場見学と洒落込みますか」
「まるで遠足だ、緊張感の欠片も無い」
調子を取り戻したピンゾロが大きく肩を回し、斑辺恵は笑いを噛み締める。
「そんなの俺達のガラじゃねえ。サイカ、頼んだぜ」
「了解。台刻転、起動!」
軽く肩をすくめた翔星に小さく頷いたサイカが転移装置を起動し、一同は瞬時に閃光に包まれて姿を消した。
▼
「工場と言ってもコアにエネルギー体を巻き付けるだけなのね」
「名前はこっちの都合だからな」
プラント級内部に降り立ったピンゾロが淡々と形作られる硼岩棄晶を呆れ気味に眺め、翔星は自嘲を込めた笑みを浮かべる。
「あれだけの大型の新種がいるのに、ここで作られるのは既存の奴等だけなのか」
「中で製造出来るサイズに限界でもあるんだろうさ」
続々と作り出される硼岩棄晶を眺めていた斑辺恵が種類の偏りに違和感を覚え、翔星は簡単な推察を交えながらRガンを構えた。
「確かにヒドラやケルベロスは外で合体、トレント級は地下から伸びてたもんな」
「ここのデータがあれば硼岩棄晶を根絶やしにする方法も見付かるかもしれない」
「了解しました、斑辺恵様。データの収集を……!?」
腕組みをしたピンゾロが噛み締めるように何度も頷き、周囲を見回した斑辺恵の呟きに賛同した焔巳は咄嗟に身構える。
『『グルル……!』』『『アォーン……!』』
「まあ、そうなるよな」
「わしらはここで足止めしながら時間ギリギリまでデータを収集するかの」
形作られたばかりの硼岩棄晶を前にピンゾロが身構え、コチョウも背中合わせに棒状の機器を構える。
「では、誰がプラント級の駆除を?」
「翔星に任せる、コアはすぐそこなんだろ?」
「そうだな、遠慮なくいただくぜ」
同じく焔巳と背中合わせに身構えた斑辺恵が聞き返し、肩をすくめたピンゾロに親指を立てて返した翔星は目的地へと走り出した。
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「そろそろ時間だ、準備はいいね?」
「もちろんでござる!」
プラント級の頂点を目の前にした羽士がLバングルを確認し、自信に満ちた声を返した壬奈は弓に氷の矢をつがえる。
「なら行くよ、クレセントアロー!」
「両刃雪崩・交叉半月!」
慎重に狙いを定めた羽士がスコップの先端に張った弓型の氷を撃ち出し、続けて壬奈も氷の矢を放つ。
砕けて無数の破片となった氷の矢は氷の弓と合わさって高速回転を始め、勢いが衰える事無くプラント級を切り裂きながら奥へと進んで行った。
「コアの破壊を確認した、作戦は成功だ」
「これぞ羽士殿と某の愛の結晶でござる!」
「うわわぁっ!? 壬奈、ストップ! ストップ!」
しばらくLバングルを通してプラント級を観測していた羽士は、安堵のため息をつくと同時に歓喜して力を込めた壬奈の太ももに締め上げられて大声を上げる。
「あっ……申し訳ござらぬ、羽士殿」
「喜ぶのは結構だけど、続きは帰ってからにしようか?」
「もちろんでござる!」
脚の力を緩めてから覗き込んだ壬奈は、赤面しながらも平静を装う羽士に満面の笑みを浮かべて頷いた。
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「ここで行き止まりだ、闇よ!」
『『グォォッ!?』』
後方の気配を翔星が闇に包み、追って来ていた硼岩棄晶が一斉に足を止める。
「間もなく設定した時間、駆除の準備を」
「準備なら出来てる、こいつで終わりだ」
足を止めたサイカが後方に注意を向けながら手のひらにアラーム映像を浮かべ、翔星はRガンの銃口に作り出した闇の針を一際輝く光の塊に突き立てた。
「コアの破壊を確認」
「どんな堅牢な要塞も中に入れば呆気ないもんさ」
消えた光の塊を分析したサイカが頬を緩め、翔星は警戒を解かずにRガンを構え直す。
「上部コアの破壊も確認、帰還任務に移行」
「……っと、確かにこいつはヤバいかもな」
険しい表情へと変わったサイカに襟首を掴まれた翔星は、地下空間全体の微かな揺れに気付いて神妙な表情を浮かべた。




