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電子天女に嫌われたのは、Fランクの闇使い  作者: しるべ雅キ
激闘の異能者達

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第54話【囲まれたのは、元Fランクの風使い】

無事地下空間に転移した翔星(しょうせい)達は、

待ち受けていた硼岩棄晶(フォトンクレイ)を退けて下層に向かった。

「次の掘削ポイントを今のうちに割り出しておくね」

「この作戦は危険度が高い、着地次第台刻転(だいこくてん)の使用を具申する」

 壬奈(ミナ)に吊るされて降下する羽士(はねと)がLバングルを操作し、サイカは手のひらに立体映像を浮かべる。


「転移機能の使用は避けたいんだ、帰りに使う必要があるからね」

「撤退の可能性も視野に入れてるのか」

 軽く首を横に振った羽士(はねと)が言葉に含みを持たせ、サイカに襟首を掴まれた翔星(しょうせい)は小さく頷いた。


翔星(しょうせい)の代わりなんてどこにもいないだろ?」

「それを言うならここにいる全員が、だ」

 否定する事無く頷いた羽士(はねと)が自信に満ちた笑みを返し、翔星(しょうせい)は大袈裟なため息を返す。


「やれやれ、緊急脱出プランは大幅修正かな?」

「当たり前だ。(オレ)だけ残るならともかく、逆はゴメンだぜ」

 Lバングルに出した立体映像を指で弾いた羽士(はねと)翔星(しょうせい)が遠慮がちに肩をすくめ、一行は黙々と降下を続けた。



「地獄の二丁目は寂しい所ね~」

「確かに敵影が無いのは不気味だね、掘削ポイントは向こうだ」

 着地と同時にピンゾロが周囲を懐中電灯で照らし、羽士(はねと)はLバングルに浮かべた映像と照らし合わせて指を差す。


「敵がいないなら好都合だ、出て来る前に仕事を済ませよう」

「あたしの出番ね、任せてちょうだ……い!?」

『グギィァーッ!』

 折り畳んだままのスコップを構えた聡羅(あきら)を追い越すように駆け出したカーサは、揺れる足元からせり上がる大樹のような物体に気付いて大きく後方に跳んだ。


「なんてね! こんなあからさまな待ち伏せに気付かない訳無いじゃない!」

「データ照合、トレント級と合致。ミックス級の増援に警戒」

「サイカちゃんは一度駆除した事あるのね」

 着地と同時にカーサが体勢を整え、しばらく見上げてから身構えたサイカにピンゾロが全身のバネを溜めながら聞き返す。


「それならコアの位置も分かるのかい?」

「記録によると眉間にあるそうです」

「ついでに言うと、ミックス級はちょうど中心じゃの」

 続く斑辺恵(はんべえ)の疑問に焔巳(エンミ)が立体映像を手のひらに浮かべながら答え、コチョウは頭上を指差した。


『『ギャギャギャギャ!』』

「とんでもない数ですな。羽士(はねと)殿、掘削ポイントは何処(いずこ)ですかな?」

「トレント級の真下だ、駆除しない限り下層には行けない」

 程無くして手と足の生えた果実型の硼岩棄晶(フォトンクレイ)が降り注ぎ、炎を灯したスコップを構えた(おさむ)羽士(はねと)はトレント級の根元を指差す。


「そこまで知恵が回るとはね」

「知恵もそうだが、情報伝達と分析も相当なもんだ。どこまでも楽しませやがる」

 懐から竹とんぼの羽を取り出した斑辺恵(はんべえ)がトレント級に複雑な表情で睨み付け、翔星(しょうせい)は心持ち弾む声と共に(レイ)ガンを抜いた。


「それで翔星(しょうせい)先生、前回はどうやって駆除したのん?」

台刻転(だいこくてん)でミックス級の壁をすり抜け、先にトレント級を駆除した」

 自然と円陣を組むようにピンゾロが背後に立ち、間に入ったサイカは胸元の転移装置に手を当ててからミックス級の奥にそびえるトレント級を指差す。


「今回は転移機能を使えない、別の手を考えよう」

「悠長に構えてる余裕は無さそうだぜ」

 複雑な表情と共に羽士(はねと)が首を振り、聡羅(あきら)は近付いて来るミックス級を睨みながら畳んだままのスコップを構えた。


「使える手札(カード)は限られてる、まずはトレント級への血路を拓こう」

「任務了解。熱線銃分離、作戦行動開始」

 小さく息を整えた羽士(はねと)がトレント級を指差し、サイカは2丁に分割した熱線銃を両脇に抱えて交互に撃ちながら飛び出す。


『ギャギャッ!?』『ギィェッ!?』

「あんな使い方も出来たのかよ……まあいい、サイカを追うぞ!」

「おっけ~」

 進路を塞ぐミックス級のコアを次々と撃ち抜くサイカに呆れながらも翔星(しょうせい)が駆け出し、親指を立てたピンゾロを合図に一行も駆け出した。



「標的確認、戦術効果最大」

『『ギィギャーッ!?』』『『ギャギィーッ!?』』

 敵大群の中央へと降り立ったサイカが2丁の熱線銃を左右に広げて回転を始め、銃から放たれた熱線は周囲を薙ぎ払いながらミックス級のコアを次々に焼き切る。


「マジで剣みたいに使いこなしやがって」

「でもこれで、トレント級までの道が拓けました」

 熱線の射程外で足を止めた翔星(しょうせい)が呆れ気味に呟き、同じく足を止めていた焔巳(エンミ)は熱線の照射が止まった先を指差す。


「確かにな、今のうちに近付く!」

(おれ)ちゃんも張り切っちゃうよ~!」

「やっぱりこっちの方が性に合ってるな、風よ!」

 (レイ)ガンを地面に撃った反動で跳び出した翔星(しょうせい)に続いて全身のバネを伸ばしたピンゾロが勢いよく跳び、斑辺恵(はんべえ)も手のひらに出した爆風の反動で跳び上がった。


「もう、斑辺恵(はんべえ)様ったら……」

「うちのピンゾロにも困ったものじゃ」

 遥か遠くへと消え去った影を見送った焔巳(エンミ)が唇を小さく尖らせ、コチョウも諦め気味に肩をすくめる。


「ええ、目的地は同じだからすぐに追い付くというのに」

「駆除は出来ても穴掘りは専門外じゃ、早々に足を止めるじゃろ」

「覚悟してください、斑辺恵(はんべえ)様。しっかり抱き締めますからね」

 含みを持たせて頷いた焔巳(エンミ)は、余裕の笑みを浮かべたコチョウと共に各々の飛行機能を展開してトレント級へと向かった。



「こいつは!……どういう事だ!?」

『『グギギギィ……』』

 トレント級の目前に辿り着いた斑辺恵(はんべえ)は、死角を作らぬよう背中合わせに伸びる3体のトレント級に気付いて驚愕の声を上げる。


「前に見た時より大きいと思ったら、厄介な手を使う」

『『ギャギャギャギャ!』』『『ギョギョギョギョ』』

 続いて着地した翔星(しょうせい)は、頭上に響く不気味な鳴き声に(レイ)ガンを向けた。


「今まで駆除してたのは、正面の奴が呼び出したミックス級だけって事ね」

「ならば、束の間の露払いと行くか」

「この程度の数なら、合流前に道を拓け……る!?」

 軽く肩を回してから身構えたピンゾロの隣で翔星(しょうせい)が口元を緩め、竹とんぼの羽を構えた斑辺恵(はんべえ)は背後の気配に気付いて息を呑む。


「ようやく追い付きましたよ、斑辺恵(はんべえ)様」

焔巳(エンミ)さん!?」

 翼状の機器を広げたままの焔巳(エンミ)に突然勢いよく背中から抱き着かれた斑辺恵(はんべえ)は、周囲を警戒しながらぎこちなく振り向く。


「ここはお任せください。罷ノ分(まかるのわけ)、起動!」

「ありゃりゃ? 焔巳(エンミ)ちゃんが3人に?」

 胸元に手を当てた焔巳(エンミ)が紅い光に包まれ、紅い光が消えると同時に3人に増えた焔巳(エンミ)に気付いたピンゾロが驚きの声を上げた。


「こちらの(ワタクシ)は牽制を。ニードルガン、射出!」

『『ギャッ! ギャッ!』』

 小型の銃を構えた1人目の焔巳(エンミ)がランダムな軌道で飛行しながら針を撃ち出し、深々と針が刺さったミックス級は一斉に1人目の焔巳(エンミ)へと向かう。


「こっちの(ワタクシ)は足止めです。硬化ガス弾、発射!」

『『ギャギァッ!?』』

 側面に回り込んでいた2人目の焔巳(エンミ)が大型の銃から弾頭を発射し、着弾と同時に溢れたガスに触れたミックス級は次々と動きを止める。


「では仕上げですね。熱線砲、照射!」

「「柩連焔刃(ぐれんえんじん)、起動!」」

『『ギギャァーッ!?』』

 最後の焔巳(エンミ)が大口径熱線砲の引き金を引くと同時に先の焔巳(エンミ)達が円盤状の武器を振り、熱線に焼かれながら円盤にコアを切断されたミックス級の悲鳴が響いた。



「「さあ斑辺恵(はんべえ)様、捕まえましたよ」」

「勘弁してよ、他のみんなも合流したんだし」

 殲滅を確認した3人の焔巳(エンミ)に囲まれた斑辺恵(はんべえ)は、遠慮がちに後方を指差す。


「まさか3体が背中合わせに生えていたとは」

「掘削ポイントは3体の中心部にある、新手のミックス級が来る前に駆除しよう」

 合流と同時に(おさむ)がスコップを構え、羽士(はねと)はトレント級の根元を指差した。


『『ギャギャギャギャッ!』』

「言ってるそばから来やがったぞ!」

「ミックス級を凌ぎつつトレント級を駆除して下層への掘削……どうすれば」

 遥か上から響く鳴き声に気付いた聡羅(あきら)が護拳に見立てたスコップを構え、Lバングルを起動した羽士(はねと)は思考がまとまらずに焦りを募らせる。


「簡単じゃないの! マスター、あれを使ってもいいわよね?」

「カーサなら出来るし、いいよな?」

 重苦しい空気を払うように黒いマントを(ひるがえ)したカーサが魔導書のような機器を開き、聡羅(あきら)は確信に満ちた表情を羽士(はねと)に向けた。


「ここまで温存出来ただけでも御の字だ、思いっ切り暴れてくれ!」

「だそうだ。頼んだぜ、カーサ!」

「まかせなさい! 震分身(しんぶんしん)、起動!」

 覚悟のため息をついた羽士(はねと)がLバングルにデータを入力し、親指を立てて微笑む聡羅(あきら)に力強く頷いたカーサは腰だめに構えた体勢で2体の分身を出す。


「ありゃりゃ、カーサちゃんまで3人に」

「原理は少々違いますが」

「構成は(ワタクシ)達と同じですのね」

 目の前で増えた輝士械儕(オーダイド)にピンゾロが大袈裟な仕草で驚き、焔巳(エンミ)は2人の分身が頭部に付けている額当てを通してカーサの分身を分析した。


「そ、そうなんだ……聡羅(あきら)も苦労してるんだな」

「ん? まあな……それより、すぐに穴が空く。準備しといてくれ」

 ぎこちない笑みを浮かべた斑辺恵(はんべえ)が慌てて視線を逃がし、視線に気付いて曖昧に頷いた聡羅(あきら)はトレント級を指差してから両脚のバネを溜める。


「フィールドスクリーン、モードESD!」

「ライトニングドリル、セット」

「「一気に決めるわよー!」」

 それぞれが手にした魔導書型の機器からページを剥がしたカーサ達が一斉に雷を纏ったドリルを作り出して右腕に嵌め、3体のトレント級に向かって走り出した。


「「ライトニング!」」

『『ギィギャーッ!?』』

 全身にも雷を纏ったカーサ達が更に速度を上げ、着地したばかりのミックス級を次々に跳ね飛ばす。


「「オーバー!」」

『『ギャギィーッ!?』』

 加速を続けるカーサ達は、壁のように並んで進路を塞いだミックス級をドリルで遠くへ殴り飛ばしながらトレント級に肉迫する。


「「ブレイクー!」」

『『グギェァアッ!?』』

 大きく跳び上がったカーサ達が3体のトレント級の眉間を同時にドリルで貫き、巨大な断末魔の声と共にトレント級は灰燼と化した。



「よくやった、カーサ!」

「進路も確保済みよ、マスター! これで残るはミックス級ね」

 戦況を注視していた聡羅(あきら)が素早く駆け寄り、分身を消して1人に戻ったカーサは下層に続く穴を背にして身構える。


「残ったミックス級に構わないで! 下層への移動を最優先にするんだ!」

殿軍(しんがり)は任せたぜ、羽士(はねと)。カーサ、もうひと頑張り頼めるかい?」

「当然よ! あたしには余裕なんだから!」

 大声で指示を出した羽士(はねと)に頷きを返した聡羅(あきら)が柔らかく微笑み、カーサは満面の笑みを浮かべて背中にしがみついた。

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