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電子天女に嫌われたのは、Fランクの闇使い  作者: しるべ雅キ
激闘の異能者達

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第52話【密かに補充したのは、元Fランクの闇使い】

準備を終えた異能者達であったが、

充木(あつぎ)も同行すると知ってピンゾロが固まった。

「えー……っと? なして隊長が?」

「皆さんが転移した後に輸送機を一時退避させる必要がありますので」

 ぎこちなく振り向いたピンゾロが慎重に聞き返し、ヒサノは事も無げに微笑む。


「そりゃ分ってるけど、輝士(オーダー)ちゃんが操縦するものと思ってたからさ」

「どの区画も最低限の管理を残して救助に駆り出されてる、こっちにまで回す余裕なんて無いよ」

 手持ち無沙汰気味にピンゾロが頭を掻き、充木(あつぎ)はタブレット端末を操作してから肩をすくめた。


「いやいや、隊長が現場に出るのは危険でしょ~」

「そんなに心配するな、2年前までは現場で硼岩棄晶(フォトンクレイ)を駆除してたんだから」

 愛想笑いを浮かべたピンゾロが大袈裟に手を振り、充木(あつぎ)は負けじと余裕の笑みを返す。


「久々の現場で上機嫌なんです、観念してください」

「なら、仕方ないか~……(おれ)ちゃんも充木(あつぎ)隊長みたいになるんかねえ」

 複雑な感情を滲ませたヒサノが微笑み、切り替えるように大きく伸びをしたピンゾロは小さくため息をついた。


「ピンゾロに隊長は務まらんの」

「分かってらっしゃる、さすがはコチョウ先生」

「心配せんでも、電子天女(マスターデバイス)が適当な仕事を見繕ってくれるじゃろ」

 呆れ気味に首を振ったコチョウは、力無く笑ったピンゾロの背に軽く触れてから足早にブリーフィングルームの出口へと向かう。


「ふっ、まるで出来の悪いSF小説だ」

異能力(トーチ)はファンタジー系の創作を参考にした」

「あー……天女サマは今、そっちにご執心だったな」

 呆れ気味に立ち上がった翔星(しょうせい)は、続けて立ち上がってから立体映像を手のひらに出したサイカに曖昧な笑みを返してからブリーフィングルームを後にした。



「ティルトローター機か、実物を見るのは初めてだ」

(それがし)もでござるよ」

 本部裏手の格納庫へと入った羽士(はねと)は、壬奈(ミナ)と共にプロペラが上を向いた輸送機の観察を始める。


「ヘリコみたいな飛行機の事はよく分からないんだ、説明頼めるかい?」

「簡単な話だよ。今は上を向いてるプロペラが、飛ぶ時に前を向くだけさ」

「このような動きをするでござる」

 続けて格納庫へと入って来たピンゾロの質問に羽士(はねと)が機体を指差しながら答え、壬奈(ミナ)は手のひらに輸送機の立体映像を浮かべる。


「狭い場所での離着陸と高速での長距離移動が出来るんだ」

「今回の任務にうってつけだな、よく残ってたものだ」

 立体映像の動きに合わせて羽士(はねと)が説明し、ピンゾロの隣で映像を見ていた翔星(しょうせい)が静かに感心する。


「出払ってるのは人員だけだからな」

「救助も撤退も転移ゲートがあるから、機体は選び放題って訳か」

 輸送機のチェックをしていた充木(あつぎ)が振り向き、羽士(はねと)は口元を綻ばせながらLバングルを操作する。


「そう言う事だ。いつでも出せると言ってたし、さっそく出るぞ」

「では皆さん、乗り込んでください」

 腕組みをして頷いた充木(あつぎ)に続いてヒサノが輸送機に手を差し伸べ、一行は続々と機体に乗り込んだ。



「中は想像してたより立派だね~」

「そのまま転移出来ますからね、では席に着いてください」

「これから死地に赴くってのに、まるで遠足だね」

 2人掛けの座席が左右に整然と並ぶ機内に感心したピンゾロにヒサノが微笑み、続けて入って来た斑辺恵(はんべえ)は呆れ気味に近くの席に着く。


「せんせー、バナナはおやつに入りますかー?」

「バナナもおやつも無いけど、携帯糧食(これ)ならあるぜ」

 斑辺恵(はんべえ)の後ろの席に座ったピンゾロが冗談交じりに手を挙げ、更に後ろに座った翔星(しょうせい)がスティック状の袋を取り出した。


「さすがは翔星(しょうせい)ちゃん、ひとついただけるかしらん」

「もちろんだ。長丁場になると踏んで、人数分補充して置いたぜ」

 おどけるようにピンゾロが手を差し出し、手早く渡した翔星(しょうせい)は周囲にも配る。


「でもいつの間に?」

「サイカにちょっと頼んでね」

 反対側の席で袋を受け取った聡羅(あきら)が首を(かし)げ、翔星(しょうせい)(かす)かに頬を緩めた。


「まさか転移機能を使ったのか!?」

「使用したのは小規模ゲート、エネルギーは既に回復済み」

翔星(しょうせい)殿は輝士械儕(オーダイド)をかなり使いこなしておるようじゃの」

 思わず大声を上げた聡羅(あきら)翔星(しょうせい)の隣に座ったサイカが淡々と説明し、ひとつ前の席からコチョウが腕組みしながら何度も頷く。


「サイカを物みたいに言わないでくれ」

「ふふっ、翔星(しょうせい)さんはお優しいのですね」

「貴官の心遣いには、いつも感謝してる」

 複雑な表情を浮かべた翔星(しょうせい)焔巳(エンミ)が更にひとつ前の席から微笑み、サイカも上目遣いで柔らかく微笑んだ。


「勘弁してくれ……」

「初々しいですねぇ~、応援したくなってしまいますぅ~」

 力無く肩を落とした翔星(しょうせい)が大袈裟にため息をつき、通路を挟んで焔巳(エンミ)の隣の席に座ったマーダが嬉しそうに声を弾ませる。


「盛り上がってるところ悪いが、そろそろいいか?」

「了解、安全運転で頼んだぜ」

「久々の操縦なんだが、まあ善処する」

 操縦席から声を掛けた充木(あつぎ)は軽く敬礼をしたピンゾロに親指を立てから操縦桿を握り、輸送機を滑走路へと移動させて飛び立った。



「間もなく第373再開発区の上空です」

「思ったより早く着いたな……おわぁ!?」

 充木(あつぎ)の隣で副操縦士を務めるヒサノが後ろを向き、Lバングルで時間を確認した羽士(はねと)は突然の揺れに襲われて大声を上げる。


「何だぁ、今の揺れは?」

「くっ!? 何が起きた!」

 体勢を立て直したピンゾロが周囲を見回し、充木(あつぎ)も機体のバランスを保ちながら状況を確認した。


「作戦空域に入ると同時に、地上からバイソン級の電撃を受けた模様です」

「機体の損傷は!?」

 外部カメラの映像をヒサノが確認し、充木(あつぎ)は操縦席に展開したスクリーン型立体映像を確認する。


「シールドバブルの展開が間に合ったので軽微です、飛行に支障はありません」

「ありがとう、ヒサノ……しかし、いきなりとはな」

 輸送機を覆う大きな泡が電撃を弾く映像をヒサノが拡大し、緊張を解いた充木(あつぎ)は小さくため息をついた。


「ギリギリまで無視、来るとしてもバット級がせいぜいと思ってたけどね」

「まるでこっちの目的を最初から知ってたみたいだ」

「可能性は考慮していましたが、最悪のシナリオになってしまいましたね」

 Lバングルを起動した羽士(はねと)斑辺恵(はんべえ)が頷き、複雑な表情を浮かべたヒサノは手のひらに立体映像を浮かべる。


「だが面白くなって来た、敵さんの頭は相当切れるみたいだな」

「ん? どゆこと?」

 腕組みした翔星(しょうせい)が不敵な笑みを浮かべ、ピンゾロも腕組みしながら聞き返した。


「手負いの組織が兵隊を送り込んでくるのは、起死回生の策がある時くらいだ」

「逆に、そいつを返り討ちにすれば更なる打撃になる」

 息を整えた翔星(しょうせい)が持論を展開し、通路を挟んで反対側に座る聡羅(あきら)も静かに頷く。


「そゆことね。来ると分かれば準備も万全、罠も張りやすい訳か」

灯明(とうみょう)を消さなかったのも、ここに誘い込むためでしたか」

「そう落ち込むなよ、プラント級自体は本物なんだし」

 軽く頭を掻いたピンゾロが大袈裟に肩をすくめ、力無く肩を落とした(おさむ)を後ろの席から聡羅(あきら)が元気付けた。


「ダミーを作る暇が無い程に向こうも背水の陣だ、まだ勝ち目はあるさ」

「そう言う事だ、作戦は継続するけどいいか?」

 Lバングルに映像を浮かべた羽士(はねと)が確信にも似た笑みを浮かべ、充木(あつぎ)は操縦桿を両手で握ったまま振り向かずに聞き返す。


「もちろんだ、転移地点までの移動を頼む」

「任せろ、強行突破するぞ!」

 一同を代表する形で頷いた翔星(しょうせい)充木(あつぎ)が親指を立て、輸送機は地上から飛来する電撃を弾きながら飛行を続けた。



「ガジェットテイル展開、輸送機とリンクします」

「よし、防御と迎撃は任せた。地上戦力を削りながら目標まで移動する」

「了解しました。クラッカーバブル、発射」

 シャチの尾ひれ状のガジェットテイルと操縦桿をケーブルでつないだヒサノは、充木(あつぎ)の指示に合わせて機体下部から水泡を高速で撃ち出す。


「クラッカーバブル命中、地上戦力の駆除を確認」

「よし、転移可能地点まで急ぐぞ……くっ!? 何が起きた!?」

 弾けた泡の衝撃波にコアを砕かれた硼岩棄晶(フォトンクレイ)をヒサノがカメラの映像で確認し、充木(あつぎ)は満足そうに頷いた直後に衝撃で機体が揺れて聞き返した。


硼岩棄晶(フォトンクレイ)が針路上に集結してます、これでは仕留め切れません」

「仕方ない、別ルートから行くぞ。算出を頼む」

 カメラとセンサーを確認したヒサノが首を横に振り、静かに頷いた充木(あつぎ)は新たな指示を出す。


「どのルートも塞がれています、このままでは目標地点まで移動出来ません」

「万事休すか」

 地上の様子を分析したヒサノが再度首を横に振り、充木(あつぎ)は操縦桿から離した手を握って叩き付けた。


「ここからでも高度を下げれば、目的の座標まで転移出来る」

「無理言うな、これが限界だ」

 手のひらに立体映像を出したサイカが確信の表情と共に頷き、充木(あつぎ)は首を振って返す。


「なら決まりだ、ここから飛ぶぞ。隊長、ハッチの開放を頼む」

「止めても無駄なんだろ? こっちが囮を出来るタイミングで開放する」

 あっさりと決断した翔星(しょうせい)が後方を親指で指し示し、慣れた様子でため息をついた充木(あつぎ)は親指を立てて返した。

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