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電子天女に嫌われたのは、Fランクの闇使い  作者: しるべ雅キ
偽りの異能者達

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第30話【壁に阻まれたのは、Fランクの闇使い】

怪力の正体を明かしたピンゾロは、

コチョウと共に硼岩棄晶(フォトンクレイ)の大群を退けた。

「随分と上機嫌だな、何かあったのか?」

 昼食を終えた翔星(しょうせい)は、隣に腰掛けて微笑みを噛み締めるサイカに声を掛ける。


焔巳(エンミ)とコチョウに正式な異能者(バディ)が見付かった、次は貴官の番」

「ん? そこはサイカさん……」

「サイカ、可能な限り約束は守ってほしい」

 手のひらに立体映像を浮かべたサイカは、唇を尖らせて翔星(しょうせい)の言葉を遮る。


「悪かったね、サイカ。それで、何で(オレ)の番なんだ?」

焔巳(エンミ)異能者(バディ)斑辺(まだらべ)(けい)、コチョウは鵜埜(うの)戒凪(かいな)

 ばつが悪そうに翔星(しょうせい)が頭を掻き、サイカは手のひらの映像を切り替えた。


「そっか、コネクトカバーのからくりも解けたからな」

「では貴官も」

 軽く頷いた翔星(しょうせい)が複雑な表情で納得し、サイカは間髪入れずに顔を近付ける。


「構わないけど、少し待ってもらえるか?」

「理由次第」

 思わず身を仰け反らせた翔星(しょうせい)が愛想笑いを浮かべ、元の位置へと戻ったサイカは規約を記した立体映像を手のひらに浮かべた。


「正式な異能者(バディ)になれば、待機命令は解除されるんだろ?」

「肯定。斑辺(まだらべ)(けい)鵜埜(うの)戒凪(かいな)の両名は本部に帰還済み」

 小さく深呼吸した翔星(しょうせい)が聞き返し、頷いたサイカは映像を切り替える。


(オレ)礼真(らいしん)に頼み事をしてる、そいつを受け取るまでは待ってくれないか?」

「承知した、そろそろ見回りに行く時間」

「そうだな、行くか」

 神妙な面持ちを取り繕った翔星(しょうせい)は、あっさりと頷いたサイカに安堵しながら立ち上がって食堂を後にした。



「さっきは2人で何を話してたんだい?」

「今後の事について、ちょっとね」

「必要なら詳しく報告する」

 見回りの途中で声を掛けて来た礼真(らいしん)翔星(しょうせい)が言葉を濁し、サイカは表情を崩さず割って入る。


「そうじゃないよ。ただ、翔星(しょうせい)とサイカさんの関係が珍しくて興味が湧いたんだ」

礼真(らいしん)様には常にワタシがいましたから」

 警戒を解くように愛想笑いを浮かべた礼真(らいしん)が素直に理由を明かし、夏櫛(カクシ)は補足の説明をして微笑んだ。


「なるほどね、(オレ)とは逆だ」

「貴官の記録を参照、もう少し人に頼る事を推奨する」

 小さく肩をすくめた翔星(しょうせい)が複雑な表情を返し、しばし空を見上げたサイカが袖を引く。


「頭では分かってるけど、異能輝士隊(バディオーダーズ)に入るまでは殺す自分が大きすぎた……!」

「こちらでも硼岩棄晶(フォトンクレイ)を検知、警戒態勢に移行」

 大袈裟にため息をついた翔星(しょうせい)が頭を掻く手を止め、サイカも裾丈の短い水兵服を消してインナー姿に変わる。


「1体だけ?……今までと違う形状のようですが」

「行けば分かる」

 髪留めのアンテナを伸ばした夏櫛(カクシ)が首を(かし)げ、一行は不敵に笑った翔星(しょうせい)を先頭に森へと向かった。



「この辺りのはずなのに、何もいない?……!」

「下だ!」

『グギィァーッ!』

 森に入った礼真(らいしん)(レイ)ガンを構えた翔星(しょうせい)の声を合図に後方へと跳び、巨大な物体が周囲の木をなぎ倒しながら現れる。


「まるでただの木だ……これも硼岩棄晶(フォトンクレイ)なのか?」

「該当データなし、トレント級として電子天女(マスターデバイス)に報告」

 巨大な樹木のような硼岩棄晶(フォトンクレイ)礼真(らいしん)が唖然とした表情で見上げ、手のひらに立体映像を浮かべたサイカは空を見上げた。


「新種って訳か」

「見た目はどうあれ、あれも硼岩棄晶(フォトンクレイ)。コアを潰せば片が付く」

 息を整えた礼真(らいしん)(レイ)ガンを抜き、翔星(しょうせい)(レイ)ガンの銃口に闇の針を作り出す。


「あの硼岩棄晶(フォトンクレイ)には首と足がありません。翔星(しょうせい)さん、コアの探知をお願いします」

「任せろ、闇よ!……なっ!? 解除だ!」

 裾丈の短い着物に身を包んだ夏櫛(カクシ)が足のバネを溜め、翔星(しょうせい)はトレント級に向けて広げた闇を即座に消す。


「どうした!?」

「見りゃわかる、でかいだけの木偶(デク)では無いって事だ」

『『ギャギャギャギャ!』』

 慌てて聞き返した礼真(らいしん)翔星(しょうせい)が首を横に振り、樹上からトレント級を囲むように無数の鳴き声が降って来た。


「あれは……ミックス級とでもお呼びすればよろしいのでしょうか?」

「随分と嬉しくない盛り合わせだね、まさかあれ全部が硼岩棄晶(フォトンクレイ)だとでも?」

 種々様々な果実を模しながらも人の背丈を越し、(いびつ)な顔と手足の付いた怪生物の群れを確認して首を(かし)げた夏櫛(カクシ)礼真(らいしん)が複雑な笑みを浮かべる。


「その通りだ、コアはそれぞれのド真ん中にある」

「形状と配置から考えて、トレント級(ほんめい)を潰さない限り無尽蔵か」

「現時点ではミックス級の排除以外に接近手段は提案不能」

 冷静な翔星(しょうせい)の返答に礼真(らいしん)が苦々しい表情を浮かべ、サイカはガジェットテイルの先端に付けた懐中電灯を手に取りながら前に出た。


「ワタシ達で道を開きますので、翔星(しょうせい)さんはトレント級をお願いします」

「射線が開き次第コアに目印を撃ち込む、礼真(らいしん)もそれでいいか?」

「もちろんだ。今ここでコアが分かるのは翔星(しょうせい)だけ、頼りにしてるぜ」

 避雷針のような武器を構えた夏櫛(カクシ)の意を汲んだ翔星(しょうせい)が作戦を立て、快く了承した礼真(らいしん)(レイ)ガンを構える。


「任せろ。(レイ)ガン、ダブルファイア!」

「こっちも援護の足しにする、溟燠(めいおう)照射!」

『ギャギャッ!?』『ギィェッ!?』

 軽く頷いて(レイ)ガンを構えた翔星(しょうせい)に続いて礼真(らいしん)も引き金を引き、闇と熱線と電撃を受けたレモンと桃のような硼岩棄晶(フォトンクレイ)が悲鳴と共に足を止めた。


虎影灯襖虚(こえいとうおうきょ)起動、瑞雲(ずいうん)展開! 推して参る!」

『ギッ!?』『ギャッ!?』

 手にした懐中電灯から光の刃を伸ばしたサイカが脚の飛行装置を展開して地表を飛び、キウイフルーツとパパイヤのような硼岩棄晶(フォトンクレイ)を纏めて斬り伏せる。


祇封雷舞(しほうらいぶ)起動! 逃がしません!」

『ギョェッ!?』

 避雷針のような武器に扇状の雷を纏わせた夏櫛(カクシ)が後方に続き、サイカの攻撃から逃れたマンゴーのような硼岩棄晶(フォトンクレイ)を両断した。



『ギギョッ!?』

「次から次へとキリが無いですね、礼真(らいしん)様はもう少しお下がりください」

「そうは行かない、奴等の目的は明らかに(ボク)達の分断だ」

 洋梨のようなミックス級を斬り払った夏櫛(カクシ)が後ろを振り向き、目が合った礼真(らいしん)は静かに首を横に振る。


「ですが、このままでは……」

『ギョギェッ!?』

 困惑した夏櫛(カクシ)が扇を振り、側面から飛び掛かって来た柿の形をしたミックス級がコアを斬られて消滅する。


『ギィァァアーッ!……ギィァ?』

(ボク)は大丈夫、夏櫛(カクシ)翔星(しょうせい)の援護を頼むよ」

『ギョェアッ!?』

 リンゴのようなミックス級の突進を受け止めた礼真(らいしん)は、先端の膨らんだ金属管を眉間に押し当てて電流を浴びせながら微笑んだ。


「気持ちは嬉しいが、しばらく離れててくれないか?」

『ギィァッ!?』

「どういうつもりだ?」

 静かに首を横に振った翔星(しょうせい)がオレンジのようなミックス級に闇の針を突き刺し、礼真(らいしん)は慎重に聞き返す。


「仲間を闇に巻き込みたくないからな」

「なるほど、打開策としては妥当か」

 軽く肩をすくめた翔星(しょうせい)が左手に作り出した小さな闇を見せ、意図を察した礼真(らいしん)は大きく後方に下がる。


「ご理解感謝する、闇よ!……!?」

『『ギャギャギャギャ!』』

 (レイ)ガンを手にしたままの右手で軽く敬礼した翔星(しょうせい)が左手の闇を周囲に広げるが、一斉に後方へと下がったミックス級を警戒して闇を手元に戻す。


「どうした!?」

「奴等は闇の中でも壁を作れる」

 異変に気付いた礼真(らいしん)が駆け寄り、翔星(しょうせい)は横に並んだミックス級を指差した。


『『ギャギャギャギャ!』』

「このままでは詰み、万事休すか」

 続々とトレント級からミックス級が降り注ぎ、礼真(らいしん)は苦々しい顔を浮かべる。


「手はある。そうだろ、サイカ?」

「肯定。貴官のランク確認を提案する」

「そいつでこの戦況をひっくり返せるのか?」

 (レイ)ガンの銃口に闇の針を出した翔星(しょうせい)は、軽く頷きを返したサイカにLバングルを向けて聞き返す。


「貴官が正直に答えれば、この体はトレント級に近付ける」

「そいつは面白そうだ……時影(ときかげ)翔星(しょうせい)()使い!」

「最終プロテクト解除。台刻転(だいこくてん)起動許可を確認」

 淡々と返答したサイカは、広げた左手を空に向けた翔星(しょうせい)の言葉を合図にして胸部装甲の中心を光らせた。

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