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電子天女に嫌われたのは、Fランクの闇使い  作者: しるべ雅キ
偽りの異能者達

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第28話【弾幕を増やしたのは、Fランクの怪力男】

真の属性を明らかにした斑辺恵(はんべえ)は、

焔巳(エンミ)の正式な異能者(バディ)となった。

「ほら政之(まさゆき)、ほっぺに付いてるぞ」

「これくらいは自分で……」

 湖畔に並べた折り畳み椅子に腰掛けたツイナがそっと指を近付け、隣に腰掛けた政之(まさゆき)は遠慮がちに手のひらを向ける。

 

政之(まさゆき)のためなら何でもするよ」

「今はその……」

「そうだったね、ここから先は部屋に帰ったらにしよう」

 向けられた手のひらに指を絡めて微笑んだツイナは、目を逸らした政之(まさゆき)の視線を追って複雑な笑みを浮かべた。


「わしらに構わず、とはいかんの」

「待機命令が撤回されるまでは、どうにもならんよな~」

 ツイナと目が合ったコチョウが視線を逸らしつつ頬を掻き、隣で頭を掻いたピンゾロも空を見上げる。


「これも電子天女(マスターデバイス)の決定だからね、仕方ないさ」

「ツイナちゃんは物分かりが良くて助かるよ、政之(まさゆき)も惚れる訳だ」

 緊張を解いて頬を緩ませたツイナが静かに首を横に振り、安堵の笑みと共に手を振って返したピンゾロは肩を震わせて笑った。


「な、何を言ってるのかね、ピンゾロ君!?」

「ありゃ? 何かまずかった?」

 大袈裟に息を呑んだ政之(まさゆき)が声を裏返し、ピンゾロは棒読み気味に聞き返す。


「そうか……政之(まさゆき)はボクのいない時でもボクを想ってくれてたんだね」

「ちょっと、ツイナさん?」

「何を遠慮する事があるんだい?……!?……こんな時に野暮な硼岩棄晶(フォトンクレイ)だなぁ」

 指を絡めていた手を強く握ったツイナが動揺する政之(まさゆき)を押し倒す勢いで迫るが、途中で止めて不機嫌な表情を湖とつながる川に向ける。


「この件は、あれを片付けてから話し合おう」

「もちろんだ」

 安堵のため息をついた政之(まさゆき)が愛想笑いを返し、ガジェットテイルから鷹の翼状の機器を広げたツイナは力強く頷いて移動を開始した。



「ふむ……アント級にバイソン級、リザードにハウンド、ワームまでいるね」

「混成部隊だとでも言うのか!?」

 しばらくして立ち止まった政之(まさゆき)が足元から伝わる振動に眉を(ひそ)め、ツイナは庇うように前へ出る。


「それだけではあるまい、質も向上しとるはずじゃ」

「変異体か……」

 偵察用小型ドローンからの映像を分析したコチョウが首を横に振り、ピンゾロは正面を見据えながら軽く肩を回した。


山源(やまもと)殿達はヒドラ級の変異体に遭遇したそうじゃ」

斑辺恵(はんべえ)のいる街だったな、何かデータはあるか?」

 深く頷いたコチョウが手のひらに立体映像を浮かべ、ピンゾロは体のバネを溜めながら聞き返す。


「うむ、6つの頭の隙を突いてバイパスに攻撃したそうじゃ」

「ヒドラ級の話ね……それで、今回はどうするよ?」

 映像を切り替えたコチョウが軽く頷き、思わず緊張を崩したピンゾロは腰に手を当てて息を整えた。


「各々の特徴を活かした連携が目的じゃろう」

「なら簡単だ、連携する前に各個撃破すればいい」

 ドローンの映像を手のひらに映したコチョウが不敵な笑みを浮かべ、ピンゾロも簡単な作戦を立てる。


「分断は小官に任せてくれないか?」

「そうだな。政之(まさゆき)は援護、ツイナちゃんは援護の護衛。それでいいかい?」

「当然だ、命に代えても政之(まさゆき)は守る」

 静かに革手袋を取り出した政之(まさゆき)の提案を取り入れたピンゾロが視線を移しながら配置の許可を取り、目が合ったツイナは力強く頷いた。


「さて、(おれ)ちゃん達はどう攻めるかね」

「テツラ殿の言葉を借りれば、避けるのは当たりたくないからじゃ」

「いつの間にか、お知り合いなのね」

 軽く体をほぐしたピンゾロは、手のひらに新たな立体映像を浮かべたコチョウに複雑な笑みを返す。


「そういう作りじゃからの」

「とはいえ、これ以上に無いくらいに有用なアドバイスだぜ」

 胸を張ったコチョウが当然のように頷きを返し、肩の力を抜いたピンゾロは脚のバネを溜め始めた。


「そうじゃの、では行くか」

「いいですとも!」

 緑色のマフラーを首に展開したコチョウが(はね)状の機器を広げ、ピンゾロは力強く親指を立てる。


「こりゃ! 縁起でも無い事を言うでない」

「怖気付いたなら、先に行くぜ!」

「まったく仕方のない男子(おのこ)じゃのう」

 思わぬ返答を(たしな)めたコチョウは、力いっぱい跳び上がって手を振ったピンゾロに小さくため息をついてから飛び上がった。



金剛散弾(こんごうさんだん)! 出し惜しみしないぜ!」

 着地と同時に石を拾って散弾のように砕いたピンゾロが後ろ足で立つイグアナのようなリザード級に向けて投げ、間髪入れずに新たな石を拾い砕いて投げ飛ばす。


『グェァッ!?』『ブモァァッ!?』

「弾を増やせば盾も貫く、狙い通りだぜ!」

 盾のような前足の円盤を撃ち抜かれたリザード級が後方にいたバイソン級と共に悲鳴を上げ、ピンゾロは手応えを感じながら周囲に目を向けた。


『グルル!』『アォーン!』

「っと、そう来るか」

 バイソン級の更に後方に隠れていたアント級とハウンド級が左右に分かれて跳び出し、ピンゾロは息を整えて身構える。


「ライドハーケン・真空二段返し!」

『グルゥッ!?』『アォッ!?』

 次の瞬間コチョウの声と共に衝撃波が空から降り注ぎ、アント級とハウンド級は元いた位置へ戻るように(かわ)す。


「ふん、散開なぞさせぬわ!」

「出番だぜ! 政之(まさゆき)先生!」

「任せろ! 土よ、壁になれ!」

 コチョウの着地に合わせてピンゾロが合図を送り、地面に手を当てた政之(まさゆき)は土の壁を作り出して硼岩棄晶(フォトンクレイ)の進路を閉ざした。


「さてコチョウ先生、ここまでの戦いをどう見るよ?」

「リザードとバイソンが正面で足止め、アントとハウンドが側面から挟撃じゃな」

(おれ)ちゃんも同じ見立てだぜ」

 次々とせり上がって硼岩棄晶(フォトンクレイ)を分断する土の壁を眺めていたピンゾロは、簡単な分析をしたコチョウに頷きながら脚のバネを溜める。


「ならば本命は」

「そこだな!」

 含み笑いを浮かべたコチョウに合わせてピンゾロが重心を落とし、2人は同時に空高く跳び上がった。


『キィーッ!』

「させぬわ! ドライブキック・熱風重力返し!」

『キェッ!?』

 2人の足元から地下を進んで来たワーム級硼岩棄晶(フォトンクレイ)が飛び出すが、空中で体勢を整えたコチョウの回し蹴りを頭部甲殻に受けて折れ曲がるように倒れる。


「いい位置だ! これで(とど)め!」

『キィェァーッ!?』

 倒れたワーム級の首に着地しつつコアを掴んだピンゾロが(ひね)り砕き、ワーム級は悲鳴と共に灰燼に帰した。


「まずひとつ!」

『アォーンッ!』

 着地したピンゾロの気配に向け、壁向こうのハウンド級が雄叫びを上げる。


「衝撃波で壁を破壊する気か!」

「大丈夫だよ、壁は圧縮してある」

 異変に気付いたツイナが身構え、政之(まさゆき)は手のひら向けて落ち着かせる。


「いつの間にそんな事を……」

「ピンゾロの訓練に付き合ってた時さ、小官の壁もいい具合に強化出来たよ」

「さすがは政之(まさゆき)だよ、今のうちに駆除しよう」

 目を細めて呟いたツイナは、得意そうに微笑む政之(まさゆき)を大袈裟に称賛しながら鷹の翼状の機器を広げた。


「賛成だ。時間は稼げるけど、敵の手の内は未知数だからね」

「面白いねぇ! ひとり1体でどうよ?」

 慣れた調子で政之(まさゆき)が頷き、ピンゾロは壁を警戒したまま親指を立てる。


「構わぬが、早い者勝ちじゃ!」

「その話乗った! 極光剣(きょっこうけん)、抜刀!」

「やれやれ、どうしてお姫さん方は血の気が多いのかね」

 不敵な笑みを浮かべて空高く飛び上がったコチョウに続いてツイナが飛び立ち、呆然と見送ったピンゾロはため息交じりに頭を掻いた。


「そうでもないさ、冷静で頼もしいよ」

「よく見てるね~、(おれ)ちゃんも行きますか!」

 複雑な笑みを浮かべた政之(まさゆき)が軽く首を横に振り、小さく肩をすくめたピンゾロは大きく曲げた膝を伸ばして跳び上がる。


「そのうちピンゾロにも分かるよ。壁よ、開け」

『グォッ!?』

 曖昧な笑みと共にピンゾロを見送った政之(まさゆき)が壁に人が通れる穴を空けながら土を圧縮した短刀を作り出し、アント級の死角に回り込んでコアに突き刺した。


「ふむ……少し壁を狭めるか」

 灰のように消えたアント級を確認した政之(まさゆき)は、壁に手を当てて意識を集中する。



『アォッ!?』

「壁が! 政之(まさゆき)か、ありがたい!」

 突如狭まった四方の壁がハウンド級の動きを止め、ツイナは柄の長い細身の剣を構えて急降下する。


『ギャインッ!?』

政之(まさゆき)の愛、確かに受け取ったよ」

 首ごとコアを切断されたハウンド級が断末魔の声と共に灰燼と化し、払った剣を納めたツイナは壁の遥か先に熱い視線を送った。



「さすがは蒔峯(まきみね)殿じゃ。ドライブキック・疾風プラズマ落とし!」

『グェァァァァアッ!?』

 狙いを定めて閃光を纏ったコチョウが急降下し、リザード級が上に構えた円盤を砕いた勢いで本体も閃光に包んで焼き尽くす。


「ちと、やりすぎたかの?」

 壁の外に飛び出して着地したコチョウは、狭まった壁から炉のように吹き上がる火柱を腕組みしながらしばらく眺めた。



「これなら避けようが無いよな」

『ブモォッ!?』

 壁の上に乗ったピンゾロは、箱のように収まったバイソン級に飛び乗って頸部のコアを力任せに(ひね)る。


「まずはひと段落、ってところか」

 駆除を確認してから壁の外に跳んだピンゾロは、息を整えながら対岸にある森の奥へと目を向けた。

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