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電子天女に嫌われたのは、Fランクの闇使い  作者: しるべ雅キ
偽りの異能者達

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第25話【針を流したのは、Fランクの闇使い】

自分達の戦闘が記録されていると知った斑辺恵(はんべえ)は、

言い知れない焦燥を意地で押さえ込んだ。

「もう、ここに来て2か月か」

「そろそろ本部が恋しいかい?」

 見回りのために結界街のゲートを出た翔星(しょうせい)が空を見上げ、続けて出て来た礼真(らいしん)が心配と冗談を混ぜたような表情で声を掛ける。


「こっちの方がいいな、堂々と駆除が出来る」

「なるほど、翔星(しょうせい)らしいや。異能輝士隊(バディオーダーズ)は天職だね」

 軽く首を横に振った翔星(しょうせい)は不敵な笑みを浮かべ、吹き出すのを堪えた礼真(らいしん)は息を整えて微笑んだ。


「まあな、ここは服を考える必要が無いのもありがたい。色は気に食わんけどな」

「それだけの理由で異能力(トーチ)を使える翔星(しょうせい)にも驚きだよ」

 黒い外套を(ひるがえ)した翔星(しょうせい)が軽く肩をすくめ、目の前の黒い制服と自分自身の白い制服を見比べた礼真(らいしん)は複雑な笑みを浮かべる。


「天女サマのセンスには及ばんよ」

「この服は、いつか宇宙に出る船に乗る時のため」

 自らの異能力(トーチ)で黒く染めた制服を眺めた翔星(しょうせい)がため息をつき、前を歩くサイカはしばし上空を見詰めてから振り向いて微笑む。


「考えてみりゃデータリアンも硼岩棄晶(フォトンクレイ)も宇宙から来たんだよな」

「それなら宇宙での戦闘が視野に入ってても不思議は無いね」

「つまり異能輝士隊(バディオーダーズ)は船乗り候補だった訳だ」

 目から鱗が落ちた面持ちで空を見上げた翔星(しょうせい)は、隣で同じように上空を見詰める礼真(らいしん)に頷いてから納得するように頭を掻いた。


「もしかして宇宙船も建造してるのかな?」

「大方、本部の地下にでもあるんだろ」

 腰の工具入れに手を当てた礼真(らいしん)が子供のような笑みを返し、翔星(しょうせい)は適当に相槌を打つ。


「だとしたら、(ボク)には無縁の話だ」

(オレ)も同じだ、宇宙船に乗る訓練なんて一切受けてない」

 瞬時に酔いが醒めたような面持ちに変わった礼真(らいしん)が言葉少なに頭を掻き、翔星(しょうせい)は肩をすくめて返す。


「なら実現するとしても、もっと先の話だね」

「違いない、(オレ)には外周の見回りが性に合ってる」

 密かに安堵した礼真(らいしん)に頷いた翔星(しょうせい)が周囲を眺め、一行は見回りを開始した。



硼岩棄晶(フォトンクレイ)の発生を検知、種類はバット級」

 髪留めに付けた猫耳状の機器を数回動かしたサイカが足を止め、手のひらに立体映像を浮かべる。


「4体か……どうする?」

「今回はシンプルにひとり1体でどうだ?」

 数を確認した礼真(らいしん)が顎に手を当て、翔星(しょうせい)は簡単な割り振りを提案した。


(ボク)は賛成だ、夏櫛(カクシ)もいいかい?」

「異論はございませんが、コネクトカバーの有効範囲にはお気を付けください」

 軽く頷いてから振り向いた礼真(らいしん)にお辞儀した夏櫛(カクシ)は、礼真(らいしん)の全身を薄い光の幕で覆って微笑む。


「分かってる、頼りにしてるよ」

「かしこまりました」

 極力柔らかな笑みを礼真(らいしん)が返し、夏櫛(カクシ)は再度丁寧な仕草でお辞儀した。


(オレ)達はどうする? サイカさん」

「サイカ。約束は守ってほしい」

 腰のホルスターから(レイ)ガンを抜いた翔星(しょうせい)が振り向き、サイカは唇を尖らせる。


「悪い、まだ慣れてなくてね。取り敢えず、お互い勝手に動きますか」

「問題無い。手早く駆除すれば、貴官を援護できる」

 ばつが悪そうに頭を掻いた翔星(しょうせい)が近付いて来る影を指差し、軽く頷いたサイカは不敵な笑みを返す。


「言うねぇ。なら、お先に失礼」

「ガジェットテイル起動、瑞雲(ずいうん)展開、駆除に移行する」

「やれやれ、2人は似た者同士だね~」

 (レイ)ガンを下に向けて撃った反動で跳び上がった翔星(しょうせい)に続いてサイカが飛行装置を脚部に装着して飛び立ち、呆れ気味に見送った礼真(らいしん)(レイ)ガンを地面に向けた。



「照準内。(レイ)ガン、ダブルファイア!」

『アギョッ!?』

 自由落下しながら(レイ)ガンの銃口を向けた翔星(しょうせい)が引き金を素早く2回引き、熱線に両翼を穿(うが)たれたバット級が墜落する。


「ここで、終わりだ!」

『アギギョーッ!』

 (レイ)ガンの反動を加えて落下速度を上げた翔星(しょうせい)が銃口に闇の針を出し、逃げようと必死に羽ばたくバット級のコアに突き立てた。


「いっちょあがり、っと。次は行けるか?」

虎影灯襖虚(こえいとうおうきょ)、起動!」

『アギャギャッ!?』

 受け持ちの駆除を確認した翔星(しょうせい)は、上空を飛び回るサイカがガジェットテイルの先端に付けた懐中電灯から伸ばした光の刃でバット級を両断する姿を目撃する。


「さすがは輝士械儕(オーダイド)(オレ)の出る幕は無いか」

 複雑な表情で頭を掻いた翔星(しょうせい)は、軽く伸びをしてから近くの木に寄り掛かった。


「モーメントライド起動」

『ギャギャ?』

 翔星(しょうせい)達から少し離れた上空で夏櫛(カクシ)が跳ねるかのように空を飛び回り、バット級は狙いを定められずに右往左往する。


「こっちですよ。祇封雷舞(しほうらいぶ)、射出」

 バット級の背後に回り込んだ夏櫛(かくし)は、手にした針に纏わせた扇状の雷を飛ばす。


『アギギャーッ!?』

「微量の雷を足場にして飛び回るのか……味方で助かったぜ」

 雷の扇にコアを溶断されたバット級が断末魔の声を上げ、バイザー越しに上空の様子を観察していた翔星(しょうせい)は密かに安堵のため息をついた。


「捉えた、溟燠(めいおう)照射!」

『アギョッ!?』

 地上に降りて(レイ)ガンを構えた礼真(らいしん)が引き金を引き、電撃と熱線の波状攻撃を翼に受けたバット級は飛行能力を失い落下する。


「ボルトスティンガー、シュート!」

『アギャーッ!?』

 落下地点に先回りしていた礼真(らいしん)が先端の膨らんだ金属管を(レイ)ガンの銃口に挿して撃ち出し、膨大な電流にコアを焼き貫かれたバット級は悲鳴と共に灰燼に帰す。


「バット級が相手なら、(おく)れを取る理由も無いか」

 静かに頷いてバイザー外した翔星(しょうせい)は、礼真(らいしん)の元へと移動を始めた。



「おつかれ、みんな大丈夫かい?」

「この体に損傷は無い」

「ワタシも行動に支障はありません、礼真(らいしん)様」

 周囲の安全確認を終えた礼真(らいしん)が振り向き、空から降り立ったサイカと夏櫛(カクシ)が各々無事を報告する。


「仲間を呼んだ気配も無いし、今日はこのまま帰れそうだな……っ!?」

『『キィェーッ!』』

 (わず)かに遅れて合流した翔星(しょうせい)が伸びをした瞬間に4人の足元が大きく揺れ、頭部が6つに分かれた巨大な硼岩棄晶(フォトンクレイ)が姿を現した。


(レイ)ガン、ダブルファイア!」

路接(ろせつ)射出」

『『キィッ!』』『キィェェエッ!』

 咄嗟に後方へと跳んだ翔星(しょうせい)が熱線を照射すると同時にサイカも光の刃を飛ばし、巨大な硼岩棄晶(フォトンクレイ)の頭がそれぞれ悲鳴を上げる。


「何だ? 手応えがまるで違う」

「あの形状はヒドラ級です、遭遇例がシバダイシティに1件だけあります」

 着地すると同時に翔星(しょうせい)(レイ)ガンを構え直し、礼真(らいしん)を脇に抱えて後方に跳んでいた夏櫛(カクシ)は手のひらに立体映像を浮かべる。


「シバダイ……ピンゾロの所か」

「コアは各個体の頸部、胴体のバイパスによってコアの修復もする模様」

 (レイ)ガンを構えた翔星(しょうせい)(かす)かに頬を緩め、続けて電子天女(マスターデバイス)にアクセスしたサイカが新たな立体映像を手のひらに浮かべた。


「つまり、全部の首を同時に潰すまで復活を繰り返す訳だな?」

「シバダイシティの個体は、バイパスから電流を逆流させたそうです」

 ヒドラ級硼岩棄晶(フォトンクレイ)の構造を理解した翔星(しょうせい)が不敵な笑みを浮かべ、礼真(らいしん)を降ろした夏櫛(カクシ)は映像を切り替える。


「電流か……夏櫛(カクシ)、頼めるかい?」

「正確な座標があれば可能です」

「だとすると(ボク)達3人でバイパスを見付ける必要があるな」

 腰のケースから取り出した金属管をしばらく眺めていた礼真(らいしん)は、快諾した夏櫛(カクシ)の出した条件を満たす方法を考え始める。


「バイパスはコア同士をつなぐ役割、貴官の闇で浮かぶと推測」

「だが夏櫛(カクシ)さんは目が利かない、闇を一瞬だけ放ってから目印を撃ち込む」

「それで頼む、(ボク)達は頭部の注意を引き付ける」

 後方の会話を聞いていたサイカの提案を参考に翔星(しょうせい)が作戦を立て、大きく頷いた礼真(らいしん)(レイ)ガンを構えながら走り出した。


「任せろ、行って来るぜ」

『キィェェーッ!』

 軽く肩を回した翔星(しょうせい)が下に向けて撃った(レイ)ガンの反動で跳び上がり、ヒドラ級の頭のひとつが追撃する。


「させない、路接(ろせつ)射出」

『キァッ!?』

 地上からサイカが光の刃を飛ばし、頸部のコアを貫かれた頭は力無く倒れる。


「助かったぜ、サイカ。闇よ……そこか!」

『『キィィァッ!?』』

 地上を闇に包んだ翔星(しょうせい)が即座に闇を解いて(レイ)ガンを撃ち込み、ヒドラ級の残った5つの頭が一斉に悲鳴を上げた。


「モーメントライド起動、祇封雷舞(しほうらいぶ)最大出りょ……!?」

『キィェェエ!』

「きゃっ!?」

 空中に発生させた小さな雷の磁場に跳び乗った夏櫛(カクシ)が5つの頭を跳び越えるが、先に倒れていた頭が突然起き上がって進路を塞ぐ。


「もう再生したのか!? ならば、これで!」

『『ギィィァアアァッ!?』』

 夏櫛(カクシ)の失敗に気付いてヒドラ級の背に着地した翔星(しょうせい)が目印に(レイ)ガンを突き付けて何度も引き金を引き、ヒドラ級は断末魔の声を響かせた。



異能力(トーチ)の針をバイパスに逆流させたのか」

「イチかバチかの賭けだったけどな……くっ!」

 戦闘記録を確認した礼真(らいしん)が小さく感心し、肩で息を整えて頷いた翔星(しょうせい)(レイ)ガンを地面に向ける。


「どうしたんだ、翔星(しょうせい)

「大きな光が逃げてくように見えたんだ」

 何も無い地面を訝しんだ礼真(らいしん)が聞き返し、静かに首を振った翔星(しょうせい)(レイ)ガンの引き金から指を離した。


「なんだって!?」

「とんでもなく薄かったから、見間違いかもしれない」

 思わず大声を上げた礼真(らいしん)が慌てて地面を確認し、翔星(しょうせい)はバイザーを外した左手で眉間を押さえる。


「念のため報告しておくよ」

「よろしく頼む、何も無ければいいんだがな」

 神妙な面持ちで頷いた礼真(らいしん)がLバングルを地面に向け、(レイ)ガンをホルスターへと戻した翔星(しょうせい)は遠い目をして空を見上げた。

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