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電子天女に嫌われたのは、Fランクの闇使い  作者: しるべ雅キ
偽りの異能者達

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第17話【石ころを投げたのは、Fランクの怪力男】

互いに手の内を明かした翔星(しょうせい)とサイカであったが、

サイカ本人にも不明な装備が判明して謎が更に深まった。

「確か虎より龍より強い生き物だったか?」

「現状、龍から雲や風が派生したと推測出来ます」

「派生は生物でなくてもいいのか?」

 腕組みしながら目を閉じた翔星(しょうせい)は、ガジェットテイルからゴーグルを取り出した夏櫛(カクシ)の報告に質問を返す。


「はい。起点の生物さえ連想出来れば可能です」

「確かにそうでないと手札(カード)が限られちまうか」

 ゴーグルを外した夏櫛(カクシ)が柔らかく微笑み、翔星(しょうせい)は納得して頷く。


「結局謎は深まるばかりか」

「でも駆除の効率は上がる。もうしばらくよろしくな、サイカさん」

 Lバングルを閉じた礼真(らいしん)が首を振り、翔星(しょうせい)は気にする風も無く伸びをした。


「貴官に提案、今後はサイカと呼んでほしい」

「何でまた急に?」

 身に着けていた装備をガジェットテイルに戻したサイカが短い水兵服姿に戻り、翔星(しょうせい)は全く理解出来ない様子で聞き返す。


「呼称の短縮は効率を上げる」

「分かった、本来の異能者(バディ)が見付かったら『さん』付けに戻るぞ」

「承知した」

 真剣な表情と共に立体映像を手のひらに浮かべたサイカは、条件付きで了承した翔星(しょうせい)に顔を綻ばせて頷いた。


「よかったですね、サイカさん」

「人間との良好な関係は我々の義務、労いに感謝」

「随分と大仰な物言いだな」

 テーブルの向かいで微笑む夏櫛(カクシ)にサイカも微笑み、翔星(しょうせい)は呆れてため息をつく。


「我々にとって異能者(バディ)は、それだけ貴重な存在」

「なるほどね、(オレ)が解放されるのは随分と先のようだな」

 深く頷いたサイカが真剣な眼差しで見詰め、視線から逃げるように目を逸らした翔星(しょうせい)は大袈裟な仕草で肩をすくめた。



「今日は設営中に来たのか、何とも空気の読めない奴等だ」

 時は少し戻ってシバダイシティ近くの湖畔の昼下がり、テントを張る手を止めた政之(まさゆき)が湖につながる川を見据える。


「数は少ないし、(おれ)ちゃんが駆除して来るよ」

「わしも行くぞ。ひとりにしたら、どんな無茶をしでかすか分からんからの」

 同じ方向を睨んだピンゾロが肩を回し、ガジェットテイルを展開したコチョウが不敵な笑みを浮かべて隣に立った。


「その方がいい、政之(まさゆき)はボクが守るから」

「小官も硼岩棄晶(フォトンクレイ)(おく)れは取らないし、何も心配いらないよ」

 心持ち弾むような声で賛同したツイナに肩を強く抱き寄せられた政之(まさゆき)は、複雑な笑みを浮かべながらも自信を持った様子で頷く。


「ここは戦力を分散する方が賢いか、分かったぜ」

「決まりじゃの、では行って来る」

「くれぐれも気を付けて」

「撤収の準備が出来次第、小官達も向うよ」

 軽く頭を掻いてから頷いたピンゾロがコチョウと共に川へと走り出し、ツイナと政之(まさゆき)はそれぞれ手を振って見送った。



『『アギャギャギャーッ!』』

「まずは先発隊のバット級か」

「数は3体、仲間を呼ぶ前に片付けるぞ」

 川(づた)いに飛ぶバット級硼岩棄晶(フォトンクレイ)を確認したピンゾロが立ち止まって全身のバネを溜め、コチョウは偵察用ドローンを経由して数を確認する。


「賛成だ、先に行ってるぜ!」

「まったく(せわ)しないのう、サイクロンマフラー起動じゃ」

 力強く頷いたピンゾロが地面を蹴って大きく跳び上がり、コチョウは呆れ気味に翅状の機器を広げた。



「もらった!」

『ギャギャッ!』

「ありゃっ!?」

 狙い澄まして伸ばしたピンゾロの手がバット級に(かわ)されて宙を切り、ピンゾロは腕から地面に落ちる。


「ここはわしに任せるのじゃ。ライドハーケン、シュート」

『アギャギャッ!』

「むっ! ちと厄介じゃの」

 入れ替わるようにコチョウが放った衝撃波もバット級が難無く(かわ)し、コチョウは慎重に構えを取り直した。



輝士(オーダー)ちゃんが苦戦するなんてね、射撃は苦手なんだが……」

『ギャギャッ?』

 足から何度衝撃波を放ってもバット級に当てられないコチョウを眺めていたピンゾロが(レイ)ガンを構えるが、放った熱線は掠る事無く宙に消える。


「やっぱり駄目か」

「あのバット級どもは変異体じゃ、退いて体勢を立て直すぞ」

 自嘲気味に(レイ)ガンを眺めたピンゾロの横にコチョウが降り立ち、神妙な面持ちで湖畔の方向を指差した。


「変異体?」

異能者(バディ)輝士械儕(オーダイド)の行動を先読みして攻撃を(かわ)す個体じゃ」

 全く心当たりの無い様子でピンゾロが聞き返し、コチョウは飛び回るバット級の動きを警戒しながら簡単に説明する。


「それって硼岩棄晶(フォトンクレイ)(おれ)ちゃん達のデータを共有するって事か?」

「専門家の領分じゃが、あるとしても狭い範囲じゃろ」

 軽く屈伸したピンゾロが大袈裟に肩を回し、コチョウは静かに首を横に振る。


「ん? どゆこと?」

「長い間ここにおる蒔峯(まきみね)殿とツイナ殿を見ればわかるじゃろ?」

 跳び上がる予備動作を中断したピンゾロが首を(かし)げ、コチョウは含みを持たせた笑みを返した。


「確かに全部が全部を引き継いでたら、苦戦なんて騒ぎじゃないな」

「あのバット級がわしらのデータを持っとるなら、試す価値は充分あるじゃろ」

 納得した様子で頷いたピンゾロが複雑な笑みを浮かべ、コチョウは確信に満ちた頷きを返す。


(おれ)ちゃん達が駆除したバット級は、あの2人と戦ってないからな」

「撤収の準備も終わった頃じゃろうし、そろそろ行くかの」

 意図を理解したピンゾロにコチョウが再度頷き、2人は撤退を即断した。


「とはいえ、今さら退くのも難しいな」

「うむ、退路を塞ぎに来ておるの」

 空を見上げたピンゾロが苦い顔を浮かべ、コチョウもバット級を警戒する。


「さて、コチョウ先生。ひとつ試したい事があるんだけど、いいかな?」

「策があるのか? わしがフォローする、存分に暴れるといい」

 近くの石を拾ったピンゾロが強く握り締め、コチョウは腰に手を当てて頷いた。


「では、お言葉に甘えて。これでも食らえ!」

『アギャッ!?』

 大きく振りかぶったピンゾロが石を投げ、バット級は飛膜に大きな(あな)穿(うが)たれて河原に落ちる。


「もういっちょ!」

『アギギャッ!?』

 新たな石を拾ったピンゾロが握り締めてから投げ飛ばし、次のバット級も飛膜が(やぶ)れて墜落する。


「砕いて金剛石(ダイヤモンド)並みに圧縮した石を散弾みたいに投げたのか」

「これなら射撃が苦手な(おれ)ちゃんでも当てられる、もひとつおまけ!」

『アギギョーッ!?』

 感心しながら分析するコチョウに含み笑いを浮かべたピンゾロが更に石を投げ、最後のバット級も飛膜に無数の(あな)が開いて飛行能力を失った。


「文字通り羽をもがれたコウモリだ! まずは、ひとつ!」

『アギョッ!?』

 地面を蹴って踏み込んだピンゾロが丸太のようなバット級の首を掴み、力任せに(ひね)ってコアを砕く。


「こっちもいただきじゃ! ライドハーケン、シュート!」

『アギャッ!?』

 回し蹴りと共にコチョウが衝撃波を放ち、這って逃げようとしていたバット級のコアを砕いた。


「これで残りひとつ、いただくぜ!」

『アギギョーッ!』

 狙いを定めたピンゾロが跳び上がると同時に最後のバット級が半身を持ち上げ、飛膜に隠した幾本もの針を矢のように撃ち出す。


「くっ!? 往生際が悪いんだよ!」

『アギャッ!?』

 咄嗟に左腕で両目を庇ったピンゾロが強引に首を掴み、最後に残ったバット級もコアを砕かれて灰になった。



「大丈夫か!? ピンゾロ!」

「問題無い、ちょっとドジった」

 慌ててコチョウが駆け寄り、ピンゾロは軽く手を振って無事を知らせる。


「ケガをしておるな。モルタルホイール起動」

「大袈裟だな~、こんなかすり傷なんて舐めときゃ治るって」

 体をくまなく確認したコチョウがベルト正面から薬研(やげん)型の機器を取り外し、ピンゾロは手のひらを向けて複雑な笑みを返した。


「なら、わしが舐めようかの?」

「そいつは(おれ)ちゃんの趣味じゃないな」

 頬の傷をコチョウが見詰め、ピンゾロは静かに首を横に振る。


「では、決まりじゃの」

「やっぱり口では(かな)わないか、頼んだぜ」

「任せるのじゃ」

 悪戯じみた笑みを浮かべたコチョウは、観念して頭を掻いたピンゾロに薬研(やげん)型の機器を回転させながら近付けた。


「もう傷が塞がってやがる、便利なもんだね~」

「顔は大丈夫のようじゃの、次は手じゃ」

 機器からの柔らかな風を浴びたピンゾロが頬を数回撫でて素直に感心し、自信に満ちた笑みを返したコチョウはピンゾロの左手に視線を向ける。


「ちょっと皮を切っただけだ、異能輝士隊(バディオーダーズ)の制服は頑丈に出来てるよ」

「当然じゃ、人間を守るのはわしらの義務じゃからな」

 遠慮がちに左手を差し出したピンゾロが綻びひとつ見当たらない袖を呆れ気味に眺め、鼻息荒く頷いたコチョウは薬研型の機器を手にしたまま胸を張る。


「そりゃ何ともご立派で」

(義務ね……他の輝士(オーダー)ちゃんもそうなのか?)

 塞がって行く傷を見詰めながら棒読み気味に言葉を返したピンゾロは、心の中で言葉の真意を訝しんだ。

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