第103話【引き止められたのは、元Fランクの闇使い】
新たな辞令を受けた翔星は、
港湾区画で礼真と羽士の2人と再会した
「ほぼ見知った仲だろうけど、改めて自己紹介と行こうか?」
「これも決まりだからな、まずは元Fランク組から頼んだぜ」
息を整えた祐路が円を作るように集まった面々を見回し、テツラは斜め向かいの翔星に手を差し向ける。
「分かった。時影翔星、一応光使いだ」
「キミが噂の闇使い、キッド・ザ・スティングだね?」
軽く手のひらを向けてから頷いた翔星が簡単な自己紹介を終えると、向かいから紺色の水兵服とロングパンツに身を包んだツイナが突然近付いた。
「大仰だな、つらぬき太郎で充分だ」
「謙遜しなくてもいいよ、ボクはキミに期待してるんだ」
「輝士械儕の異能者はひとりだけと認識」
平静を装い首を振る翔星にツイナが更に踏み込み、割り込むようにサイカが間に入る。
「安心しなよ、子猫ちゃん。キミの大事な異能者は奪わないから」
「この体の個体名はサイカ、猫はガジェットテイルのモチーフと認識」
「実に興味深い反応だ、もっとたくさん話を聞きたいな」
目を細めて頭を撫でる手をサイカに淡々と払われたツイナは、自分の口元に手を当ててから顔を近付ける。
「そういうのは後で話し合ってくれ、まずは全員の自己紹介だ」
「うちのツイナが迷惑掛けた、いつもはこうじゃないんだ」
「ゴメンね政之、今は自重するよ。すまない、続けてくれ」
わざと聞こえるように咳払いしたテツラにカーキ色のコートを羽織った異能者の政之が頭を下げ、サイカの手を放したツイナは元の位置に戻った。
「自分は斑辺恵、炎使いだ。鎌鼬の斑辺恵の方が知られてるかな?」
「斑辺恵様の輝士械儕を務める焔巳と申します」
真剣な表情と共に名乗った斑辺恵が竹とんぼの羽を懐から取り出しながら表情を崩し、続けて焔巳が隣で丁寧な仕草でお辞儀をする。
「俺ちゃんは鵜埜戒凪、風使い。ピンゾロって呼んでくれ」
「ピンゾロの輝士械儕をしとるコチョウじゃ」
タイミングを見計らったピンゾロが本名とあだ名を名乗り、続くコチョウは胸を張って自己紹介した。
「次はオレ達でいいか? 期雨聡羅、雷使いだ」
「マスターの輝士械儕をしてるカーサよ」
順序を指なぞった銀髪の頭を掻いた聡羅が名乗り、隣に立つ紺色の水兵服を着た少女の姿をした輝士械儕のカーサも胸に手を当てる。
「拙僧は炎使いの今隅蔵、以後お見知り置きを」
「マーダで~す、蔵くんと一緒によろしくね~」
黒髪を短く刈った巨漢の蔵が合掌をしてから一礼し、灰色の水兵服を身に付けた長身の輝士械儕のマーダが軽く手を振る。
「次は僕だね。祀波羽士、氷使いだ」
「某は壬奈、羽士殿の輝士械儕でござる」
紹介した順を指でなぞってから眼鏡に手を当てて戻した羽士が短く自己紹介し、続いて白い水兵服を着た輝士械儕の壬奈が黒髪を揺らしてお辞儀した。
「最後は僕達だね。隹戸礼真、雷使い。この艦の機械メンテ全般を担当する」
「礼真様の輝士械儕を務める夏櫛と申します」
同じく指でなぞった礼真が軽く名乗ってから眼鏡に指を当て、白い水兵服を着た夏櫛が紫水晶のような色の髪を揺らしてお辞儀する。
「蒔峯政之、土使いだ。この艦の火器管制を担当する」
「輝士械儕のツイナだ。さっきはすまなかったね、子猫ちゃん」
「紹介は終了と判断、最後のひと組に自己紹介を要請」
頭を掻いた政之に続いて自己紹介したツイナが手を振り、サイカは不機嫌そうに祐路に手を差し伸べた。
「山源祐路、水使い。ここの艦長に任命された、よろしくな」
「輝士械儕のテツラだ。しっかし、18人しか参加できないとはね~」
紹介の一巡を確認した祐路が緊張した表情で軽く頭を下げ、胸を張ったテツラは複雑な表情と共に集った面々を見回す。
「これでも多いよ、発想跳びが無ければ僕達も病院送りだっただろうからね」
「違いねえ。それじゃ、任務を説明するぜ」
つま先で床を蹴った羽士が反動でずれた眼鏡を指で戻し、テツラはしばし豪快に笑ってからブリッジのモニターを起動した。
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「調べたところ、UFO級は地球に向かってるぜ」
「ゼロ番街の大仕掛けに気付いて戦力を分けたのね~」
宇宙空間に浮かぶ光球をモニターに映し出したテツラが予測針路を表示し、ピンゾロは腕組みしながら眉を顰める。
「UFO級はプラント級と同様、硼岩棄晶を生産する能力を保有すると推測」
「あの大きさだ、生産する数もプラント級とは段違いだろうぜ」
手のひらに光球の立体映像を浮かべたサイカがモニターに転送し、Lバングルに過去の戦闘記録を浮かべた翔星は不敵な笑みを浮かべる。
「結界を張り巡らせてるゼロ番街にも硼岩棄晶を拡散させた事を考えれば、地球の各地に戦力を送るのも訳無いだろうね」
「残ったUFOはひとつだけですが、地球に残した戦力では苦戦は必至ですな」
Lバングルを操作した羽士が行動予測を作成し、蔵は静かに首を横に振った。
「UFO級の地球到達は、観測した速度からみて7日後ってところだぜ」
「ちょっと!? もうすぐじゃないの!」
全員の注目を集めるべくモニターを指差したテツラがカウントダウンタイマーを追加で表示し、カーサは思わず大声を上げる。
「慌てるなよ、そのための宇宙船なんだから」
「完成次第出航、UFOの脇腹にそのまま突っ込む算段だ」
咄嗟に塞いだ耳から手を離した祐路が足元を指差し、テツラは鏃のような映像を矢印と共にモニターに追加した。
「随分と綱渡りだね~」
「否定はしないさ。その分、間に合わせる工夫は出来るだけしてくれてるぜ」
モニターを指差したピンゾロが矢印を追うように動かし、静かに首を横に振った祐路はモニターの映像を銛の先端のような形をした宇宙船に切り替える。
「今乗ってる宇宙船って、こんな形なのね」
「速度と実用性を重視、砲塔の排除は苦渋の決断」
「とはいえ、艦首には超出力の大型熱線砲を4門内蔵。側面にも各種レーザー砲と火器は充実してる」
感心しながら眺めていたピンゾロにサイカが最初期の図案を浮かべた手のひらを見せ、政之はLバングルを操作して宇宙船に搭載した火器を説明した。
「高速で接近しながら熱線砲をUFO級に撃ち込むのが、作戦の第一段階だぜ」
「熱線砲でUFOを仕留められりゃ御の字ってところよ」
続けてテツラがモニターの画像を操作し、祐路は曖昧な表情と共に頭を掻く。
「つまり宇宙船の働き次第では、俺達の出番も無くなる訳か」
「大丈夫だよ、翔星達の出番は絶対にあるから」
熱線砲を撃つ宇宙船の映像に複雑な視線で見詰めた翔星が腰のホルスターに手を当て、礼真は笑いを堪えながらモニターを指差した。
「第二段階は衝角ごと宇宙船をUFO級にぶつけ、翔星達に乗り込んでもらう」
「UFO級もプラント級と同様、コアを保有」
モニターの操作をしたテツラが宇宙船の画像を光球に重ね、サイカは手のひらに光球の立体映像を浮かべる。
「そいつを元Fランク組と聡羅達増援部隊組とで潰す訳か」
「いや、オレ達は艦の防衛だ」
「作戦が成功しても帰る場所が無くなったら意味が無いからね」
周囲を見回した翔星が突入メンバーを予測するが、静かに首を横に振った聡羅に続いて羽士がモニターに映った宇宙船を指差した。
「あのデカブツを動かすんだ、コアが2つだけとは限らないぜ?」
「ゼロ番街にてUFO級をスキャン、ひとつのコアが内部を移動していると判明」
コアを上下の両端に分散したプラント級硼岩棄晶の画像をLバングルに浮かべた翔星がモニターと見比べ、サイカは手のひらにデータを浮かべる。
「そんな便利なものがあるのか」
「電子天女は貴官の闇を再現する装置を開発」
「とうとう俺もお払い箱か」
密かに舌を巻いた翔星は、サイカが手のひらに浮かべたデータ画像を眺めてからついたため息に安堵を込める。
「闇の再現には複雑な調整が必要。現状、使用可能範囲はゼロ番街上空のみ」
「それではダメだよ、サイカくん。もっと心を込めないと」
静かに緊張を滲ませたサイカが淡々と説明し、2人の様子を眺めていたツイナは静かに首を横に振った。
「理解不能、説明を求める」
「異能者を引き止めるのなら、自分の気持ちを素直に伝えるんだ」
小首を傾げたサイカに微笑んだツイナは、手のひらに浮かべたデータを投げ渡すように転送する。
「この体には貴官が必要、残留を要請する」
「硼岩棄晶を駆除出来るのならな」
手のひらに浮かべたデータを確認したサイカが上目遣いで外套を掴んで見詰め、翔星は腰のRガンに手を当てながら頷いた。
「初々しいな、政之と初めて逢った時の事を思い出すよ」
「だから、ツイナ……こういう場では止めてくれよ」
サイカの顔を眺めながら目を細めるツイナに肩を抱き寄せられた政之は、周囲の視線を気にしながらそっと宥める。
「レクリエーションはそこまで、作戦会議に戻りましょ」
「カーサの言う通りだ、そろそろ軌道修正するぞ」
小さく咳払いしたカーサにテツラが豪快に笑ってからモニターを指差し、一同は静かに頷いてから視線をモニターへと向けた。




