第19話 フラグってやつですかね?
アクセスありがとうございます。
コントロールから制御が戻ってくる。
「では、首都星へ向けて出発しましょう。航路は事前に調べておきましたが、自分でも考えてみますか?」
「今は止めておく。何を基準に航路を決めればいいか何て知らないから、その内教えてくれ。操船にも慣れておきたいし、セバスの航路でお願いするよ。コースの表示をお願い」
セバスにお願いをすると、すぐに航路が表示される。トランスポーターでも周囲の船に航路は伝わっているだろう。
ショートジャンプ予定地に移動するまで、少し時間がかかるので気になった事を聞いてみる。
「セバス、トランスポーターって、周りの船に航路を教えるんだろ? どのくらいの範囲で伝わる物なんだ?」
「そうですね。明確な決まりはありませんが、一般的に戦闘準備距離と呼ばれる、主砲が届かない位置まで届くように設定するべきですね。武装のクラスによって、トランスポーターの範囲が違ってくる形ですね」
なるほどね。でもそれって曖昧だよな……
「セバス、それだけでは不十分ですよ。ご主人様、法律上はそれでも問題ありませんが、トランスポーターの最大出力で航路を示すのがマナーですね。トランスポーターに関しては、規格が統一されているので、最大出力が決まっています」
「お互いがお互いに最大出力であれば、こちらの範囲に入って来ても反応が無ければ、相手に通信を入れ航路を示すように言えるってことでいいのかな?」
話の内容で何となくわかったが、これで正解のようだ。
「トランスポーターの発信がない船には、2回の警告をして反応がない場合は、敵対行動として撃沈可能となります。通信が入った段階で船をとめなかった場合でも、敵対行動となり撃沈しても問題ありません」
「なるほどね。もし本当にトラブルによるトランスポーターの不良であれば、停船すればいいんだろうけど、そしたらずっと動けなくないか?」
「その場合は、軍に連絡を入れその指示に従って動けば問題ないですね。ただ、整備不良として罰金と最悪の場合、操船資格のはく奪があります」
「じゃぁ、警告入れて停船しない場合以外は、敵対行動として問題ないってことだよな? でもさ、欺瞞航路で近寄ってくる宙賊もいるんじゃないの?」
「そうですね。ですがその場合は、通信を入れ連絡を取り合い、お互い必要以上に接近せず、離れた航路を進み目的地を目指すことになります。航路を退くように強制された場合は、大きく迂回して移動する方が賢いですね。その後、録画したやり取りを軍へ提出する形になります」
度が過ぎるようだったら、軍が介入して何かしらの沙汰があるようだ。
「じゃぁさ、今ここに映っている船に対して、警告した方がいい感じかな?」
レーダーに点が現れたのだが、トランスポーターの有効範囲に入っても、反応がないのだ。
「そうですね。警告を出しましょう。通信はレーザー通信で対象の船に強制通信を試みます……繋がりました」
「こちらX-354、こちらへ接近している船に告げる。トランスポーターを発信せよ。トラブルにより発信できない場合は、停船し指示を待て。それ以外の行動をとった場合は敵対行動とみなす。繰り返す……」
2回警告をしても、何の反応もないな。
「いきなり戦闘になる感じか? 戦闘はまだシミュレーションしてないんだけど、どうしよう……」
「メイ、ご主人様に変わり操船を、私は武装関係を担当します。ご主人様はレーダーなどをみて、警戒をお願いします」
おぉ~、さすが陽電子頭脳を搭載したアンドロイドだ。
席を移動して、レーダーの出力を上げる。
「レーダーのギリギリ届く範囲にアンノウン2隻。レーダー解析によると、この2隻もトランスポーターの反応なし」
レーダーってすげえな。トランスポーターの発信をしているかしていないか分かるんだな。
「敵対行動とみなし、攻撃を開始します」
セバスの無情な通信を最後に、戦闘に入った。
「メイ、敵船に頭を向けて船を安定させてください」
あえて回避行動をとるのではなく、船を安定させた状態にするらしい。狙われやすいが、こちらの狙いも正確になるかたちだ。
「相手の船は、クラス2。レーダーの反応から、クラス1の武装のみと推定。念のためクラス2の武装と想定し、こちらの射程に入り次第、発砲します」
後で説明してもらったが、武装はクラスが高くなればなるほど、射程が伸びる。物によっては関係ない物もあるが、基本的にはそういうモノだ。
例外は、EML(|electromagnetic launcher、レールガンというモノだな。あれは、弾の減速があっても届く範囲で効果を発揮する。
レーザーなどに比べて弾速が圧倒的に遅いので、動かない相手以外には基本的に当てられない。だけど、当たった時の効果は絶大らしい。クラス3のEMLでクラス8のシールドを抜けるそうだ。
シールドを飽和させるために、特殊弾頭でなくてもミサイルは有効らしい。
追尾性能は高いが、弾速の遅いミサイルが今でも現役なのは、シールドに対する効果が高いかららしい。
有効射程に入ると、陽電子頭脳で計算された砲撃が3回。1発目は素直に狙い、2・3発目は、回避先を予想した砲撃だった。
敵は驚いただろうな。クラス2相当の俺の船から、クラス4の武装の砲撃なんてあるとは思わなかっただろう。
エネルギーだけで撃てる武装とはいえ、3発も撃つ必要はあったのだろうか? チャージ状況を考え、余剰分を砲撃に回しただけなので、特に問題はなかったようだ。
1発目の砲撃が狙い通り、エンジンに命中する。それで航行不能となり、エネルギーの生産もできなくなったことにより、攻撃も不可能となった。
『てめえら! 俺たちが、ガイアファミリーの人間だぞ! こんなことしてもいいと思っているのか!』
お~、敵船から通信が入ってきた。
「ガイアファミリー……該当項目あり。およそ10隻程度の中規模宙賊ですね。一番大きな船でクラス4が確認されているそうです」
操船をしながらメイが、情報を伝えてくれた。
「おそらくですが、レーダー範囲ギリギリのアンノウンは、お仲間でしょう。もう少し近付いて、救助しに来たところを狙いましょう」
生餌か。戦争とかで使われる質の悪い戦術だよな。狙撃などであえて殺さず動けなくして、助けに来た敵を殺すという戦い方だな。軍だったら見捨てられないけど、宙賊はいわゆるクズの集まりだからな、逃げる可能性が高いかもな。
少し近付いた位置で、停船する。その間も、こちらの事を罵ってくる宙賊だが、いちいち相手にする必要もないので、音量を下げてセバスが対応してくれている。
残りの2隻はどうするのやら。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
ブクマや評価をしていただけると幸いです。
これからもよろしくお願いします。