第18話 ロマン兵器は一応あるらしい
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ゲートを使ったジャンプをすることになったが、それは思っている以上にあっさりとしたものだった。
ジャンプに必要な諸々の事は、全部ゲートがしてくれるようで、船はコントロールに言われたデータベースにアクセスし、リンクを保ったままゲートをくぐるだけでよかった。
ゲートで出現できるエリアが決まっているのは、このシステムの所為なんだろうな。調整すれば、敵国のド真ん中に飛んで奇襲をかけられるのかね?
でもそれだと、被害を与えられるだろうが、逃げる方法が無いから死んで来いって言っているようなもんだよな。さすがにそんな命令は、出せないだろうな。
革命軍が敵将を打ち取るための特攻ならしそうだけどな。
「どのくらい時間がかかるんだっけ?」
「およそ、1時間くらいだという話ですね。その間は船のコントロールも、ゲートのシステムが行っているようなので、こちらから操縦することは出来ませんね」
なるほどね。ゲートは、出入りだけでなく移動中のすべてを管理しているのか。セバスやメイに積まれている、陽電子頭脳を遥かに上回るサイズが乗せられているのかね。
独自の思考を形成するセバスやメイの陽電子頭脳だが、情報処理に特化した陽電子頭脳であれば、処理速度は何倍にも跳ね上がりそうだな。
まぁ、ゲームの仕様だと言われればそれまでだけど、考察するのはそれはそれで面白いよね。
「1時間は暇なんだな。そういえばさ、人型兵器みたいなものはないの? アンドロイドがあるなら、大型の人型決戦兵器みたいなのもありそうだけどさ、そこらへんどうなの?」
「言い難いのですが、あることにはあります。ですが、あまり戦闘向きではないですね」
そうなのか……人型兵器に戦艦クラスの火力を持たせて! みたいなのは、このゲームには存在しないんだな。
ただ、話を聞いてみると、存在はしているけど人型であるメリットが、微塵もないらしい。なので、金持ちの道楽で作って遊んでいるのが、人型兵器の実状らしい。
自由に動かせる攻撃用の腕があるのはメリットではあるが、それなら人型ではなく今の船に収納できる腕を付けた方が、余程効率的らしい。
効率的ではあるが、動かすためのシステムが複雑で、壊れやすいうえに故障しても直せる人が少ないという問題があるようだ。
重心や船のバランスが変わるため、操船が難しくなってしまうのだとか。酷い時だと、エンジンを噴かしただけで船体が回転したりしてしまうらしい。
要は、高速戦闘中には使い物にならないということだ。
武装船のクラスの高い兵器は、基本的に大きくなるため、船のクラスより兵器のクラスが高い場合、照準を合わせるためには、船の位置や角度を調整する必要が出てくる。
船よりクラスの高い兵器を可動式にすれば、必ず歪みが生まれて照準が狂うのだとか。
よく考えられているのか、上手くいかないもんだね。
人型決戦兵器は実用性のないものであるが、2~5メートルほどの強化外骨格……パワードスーツなんかは、人型の方が優れている面が多いらしい。
空や宇宙を飛ばずに、足を地面につけている状態なら、自由度の高い人型が優秀なんだとか。色々な事態に適応できるのが強みということだ。
ただ、同じサイズの兵器、例えば3~4メートル級の強化外骨格と軽装甲車両は同じくらいのサイズなのだが、値段が軽く20倍は変わってくるほど、強化外骨格は高価な物になる。
その強化外骨格も、20倍の軽装甲車両と真正面から戦えば勝ち目はないが、戦い方次第では勝利をもぎ取ることは簡単にできる。
どんな兵器にも優劣・メリットデメリットはあるが、使い方次第では費用の面などで、少ない方が勝つことも少なくない。
戦況に合った兵器を使えるかってことだな。
「そう考えると、船が小さいと取れる戦術が少ないってことか……」
「ご主人様、戦術が少ない以前の話です。宇宙船での戦闘で、敵船に乗り込むようなことをするのは、強化外骨格で身を包んだ屈強な兵士たちが、人質を救出する時くらいです。戦闘用のロボットを複数持っている船であれば、船体を傷付けずに回収するために、撃沈させないという話もありますが、それは少数派の意見ですね」
ふむふむ。
「船を破損させないのは、鹵獲した後、船を売り払うためってことか? でもさ、宙賊の船ってメンテナンスも最低限で、すぐにでも壊れそうなイメージなんだけど、それでも売れるもんなの?」
「時と場合によりますが、船として最低限動けばいいという需要もそれなりにあるんです。船内の清掃は、船内の空気を抜いて2~3日放置し、その後に洗浄してしまえば、問題ないですからね」
船内を洗浄するって大変じゃないか? と思ったが、洗浄液が霧状に噴出されている広い空間に、隔壁などをすべて解放した状態で放り込んでおけば、後は機械で全自動だってさ。
宙賊の使ってた船とか、臭そうだからそのまま使いたくないもんな。
そもそも、船の洗浄に関しては、新しい星などで未知のウィルスが発見さらた場合など、消毒をしないといけないことが多々あり、考えられた仕組みだとさ。
確かに未知のウィルスは、怖いだろうな。未知でなくともウィルスは怖いけど、既知のウィルスは、対策ができているから問題ないとのことだ。マイクロマシンなどで、予防することも可能になっているのだとか。
色々な話を聞いていると、
「そろそろ、ジャンプアウトの時間ですね。ジャンプアウトした後は、コントロールの指示で動いてください」
さすがにゲートから、ジャンプ先に指示を出すわけではないと思うので、ジャンプアウトした先に指示を出す人たちがいるんだろうな。
ゲートを使った場合は、先にあった物を押しのける形でジャンプアウトするから、自分たちの身を守るために、指示を聞いて移動させる必要があるってことだよな。
間もなくして通常の空間に戻ってきた。俺の船以外にもたくさんの船がそこにはあった。同じタイミングでジャンプした船なんだろうな。
『X-354、こちらコントロール。今からビーコンを送るので、そちらへ移動を開始します。そこへ到着したら、制御をお返ししますので、周りに注意して目的地へ向かってください』
「こちら、X-354、了解しました。案内、ありがとうございます」
『では、無線を切り誘導します。良い航海を』
ボンボヤージュって、挨拶みたいな感じで使われてるんだな。俺も機会があったら言ってみたいな。なんとなく、カッコいいからな!
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