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第10話 ちょっとした昔話

アクセスありがとうございます。

 俺の船が宇宙に飛び出し、合流する軍船へ進路を変えた。


 ガイドビーコンが軍艦から出されており、誘導されるように上下左右のない宇宙を航行する。


 ガイドビーコンは、大型の船や宇宙港が船を誘導するためのシステムであり、これ無しのマニュアルで定められた所に止まるのは困難だと言われている。


 ガイドビーコンの誘導を受ける装置が壊れてしまった場合は、特殊な船で誘導してから修理をするらしい。複数の装置を積んでおくので、全部壊れるという事例は、戦闘でもしない限り少ないとのことだ。


 誘導されるがままに軍艦のカーゴの中へ……


 あ、カーゴじゃなくて、きちんと船を止められる場所だな。イメージ的に空母みたいな感じかな?


 アームが俺の船を固定すると、移動用に橋がかけられる。


 動力を停止させると、軍艦からエネルギーを送ってもらい、船のシステムを動かすそうだ。


 アイドリングストップってことかね。密閉空間でエンジンをふかすとかダメだろうな。


 宇宙服を着ておいた方がいいと言われたのは、大型の船に小さな船をとめる場合、宇宙港とは違い重力もなく、空気も抜いた状態での作業なので、停泊所内を移動する時も、宇宙服が必要だそうだ。


 面倒ではあるが、船の出し入れ毎に空気を抜き入れしていると、無駄が多いのでこのような仕組みになっているらしい。大型船になれば、小型中型を複数格納できるので、なおさら無駄が多くなる。


 聞いてみれば納得できる話だ。


 ハッチへ向かうと、先ほどの隊長さんが俺たちを出迎えてくれた。隊長の後ろには、少し装飾の違う宇宙服を着ている人もいる。なんか偉そうな人っぽいな。


「えっと、武装輸送船ライジンの船長、ナインヘッドです。乗船許可をお願いします」


「艦長のモリスン大佐だ。あなた達の乗船を許可する。急な依頼を受けていただき、感謝する。マーレン中尉、君たちの部隊で案内してくれ。乗船中は、機密区画以外はマーレン中尉の同行があれば、自由に艦内を見て構わないから、寛いでいただきたい」


 偉そうな人は、やっぱり偉かった。大佐だってさ。かなり上の階級だと思うけど、この軍艦ってかなり大きいってことだよな。


 後、隊長さんってマーレンって名前なんだな。


「ナインヘッドさん、これからどういたしますか?」


「格納されている船を見せてもらってもいいですか?」


「中は見せられませんが、外からでよろしければ案内させていただきます」


 おぉ~言ってみるもんだな。


 マーレン中尉に案内され、船の説明を受ける。


 軍は基本的に、中型艦1隻と小型艦4隻で1小隊、大型艦1隻に小隊4つで中隊、中隊5つで大隊とされているらしい。


 軍艦は、市販の船より性能が高く作られており、宇宙船のヒエラルキーのトップに立つようになっているそうだ。


 宇宙の安全を守るために、軍は強くなくてはいけないのは分かるけど、ヤバいやつが力を持つと怖い気がするな。


「船の性能が良いってことは、普通の船ではまず逃げられないってことですよね? 失礼ですが、軍人もいい人だけじゃないと思うのですが、そういった時の対応ってどうしたらいいんですかね?」


 マーレン中尉は、苦笑いをした。


 この国の軍は、特権階級……貴族の関係者の入隊を許可していないそうだ。数百年前の話になるが、貴族の関係者がまだ軍隊に入隊できた頃、士官将官のほとんどが貴族の関係者だったそうだ。


 その頃は、軍事費の横領はもちろん、臨検と言って船に乗り込み、脅して金を奪っているのが当たり前だったそうだ。


 それなのに、何かあれば下の人間に責任を押し付け、自分は何も知らなかったというようなことをしていたんだとさ。


 裁く側の人間も貴族であるため、裁判をしても勝ち目が無いというのがこの国の状況だったらしい。王宮に陳情をしても、王宮内も貴族が蔓延っていたため、どうにもならなかったんだと。


 ある時、軍内で平民たちがクーデターを起こす。


 もちろん貴族たちは、力で制圧しようとしたのだが、軍艦を動かしているのは貴族たちではなく、クーデターを起こしている平民たちが中心だったので、貴族側はほとんど船を動かせず敗北したそうだ。


 甘い汁を吸っていた貴族でない人間も多かったが、そういう奴らは事前に拘束されていたため、貴族には対抗する手段がなかったんだとさ。


 王族は、独自の戦力を持っているため、軍のクーデターの鎮圧を行おうとしたが、軍のクーデターが成功した段階で、目的の9割を達成しており、成功すると同時にあるデータを国中に流したそうだ。


 そのデータを見た王族は矛先を貴族に変え、貴族たちを捕らえていったそうだ。


 国中に流されたデータは、貴族たちの不正の証拠だ。


 貴族たちは、当然の権利ということで、横領や脅しによる上納していた以外に、禁止されている人身売買などにも手を出していたり、宙賊を見逃すかわりとして、金銭や女などを受け取っていたんだってさ。


 この後は、罪の重さに応じて処罰していき、一時は貴族の数が4分の1になるほどだったそうだ。


 どれだけ悪い事してんねん!


 思わず突っ込みたくなったわ。


 それでもこの国に今も貴族が残っているのは、宙域毎に統治する人間は必須であり、管理をするという意味では、しっかりと知識を持っている貴族に任せる方がいいということで、貴族制は無くならなかったようだ。


 統治は任せたが、軍事力を持たせることはせず、軍を派遣するという形で、宙域の治安維持を行うように決められたそうだ。


 星の治安は、軍ではなく貴族が編成した警察が担っているんだとさ。


 駐留している軍が監査を行うので、貴族たちもおいそれと不正は出来ないようになっているんだってさ。


 要約するとこんな感じだったが、実際には1時間ほど軍船を見ながら話しを聞いた。


 最後に、軍の人間が貴族と通じた場合は、通じた軍人と貴族両方とも死刑になると言っていた。


 貴族が力を持たないように、色々考えられている国のようだな。


「軍の武装って、実弾系が多い気がするんですが、何か理由があるんですか?」


 俺は話を聞き終わり、疑問に思った事を聞いてみた。


「船に使われているシールドは、質量のある兵器の方が有効なので、軍の船は質量のある物が多いですね。宙賊は捕らえても徳は無いので、破壊が基本ですね」


 傭兵であれば、船を鹵獲して売ったり、どうせ死刑になる人間なので、人体実験に使うために国の機関が買ったりしているらしい。


 その話を聞いたとき、玉がキュッとなったよ。


 俺も実弾兵器を積むべきか悩んだが、母艦がない場合は補給の面や弾切れを考えると、使わない方がいいとマーレン中尉が教えてくれた。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブクマや評価をしていただけると幸いです。

これからもよろしくお願いします。

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