兄妹再戦
自分の心の仄暗い部分を意識してからというもの
私は悶々と過ごした
もちろんニーテがいないところで
ニーテがいる時は明るく努めた。
隙あらばチューした。
ある時母がニーテに乳をやってる姿を見て、羨ましくてジッと見ていたら、
「エリザベスはもうおねぇちゃんでしょ?」
と言ってきた
だから私は
「うん!私はお姉ちゃんだから、もうお乳が出るよ!」
と応えた。
母は一瞬キョトンとした表情を見せ
「やだわエリザベスったら」
と言って笑った。
「おねしゃん、おねしゃん。おねしゃんは きしい なゆの?」
「そうよ、私はニーテの騎士になるの」
「おにしゃんより、つおいの?」
・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・
嘘でもいいから「強い」と言ってやりたかった。
でも、
ニーテに嘘はつけない。
「今はまだ私が弱いけど、いつか必ず勝つわ・・・・」
闘志が燃え上がった。
兄に勝たねば、私がニーテの騎士になれない・・・
そして月日が過ぎ、私は騎士隊に入隊することが決まった。
ただ、私には正式に騎士隊へと籍を置く前に果たさなければならない約束がある。
兄を倒し、私がニーテの騎士になる
騎士隊への入隊が決まった者は、騎士隊の設備をある程度自由に利用できる。
私は練兵場で兄と向かい合って立っている。
・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
私は兄を見据え
「兄さん、ずっと待っていたわ・・・・・今日という日を」
すると兄はこともなげに、
「ああ、騎士隊入隊おめでとうエリザベス」
そう応える
「もう・・・・覚悟は出来た、ということね?」
「覚悟とは、物騒な物言いだな」
「私、今日は本気でいくから」
騎士隊きっての天才とその妹が手合わせすると聞いて、多くの観衆が練兵場に集まっていた。
「グレイー妹ちゃんに負けんじゃねーぞー」
「妹ちゃん、やっちまえー」
そして、私は片手を上げ、観衆に開始の合図を呼びかけた
「すいませーん、どなたか合図をー」
すると一人の騎士が、
「じゃ、じゃあ俺が」
始まる・・・・
「はじめっっ」
合図がなされた瞬間、轟音が響く。
兄が魔法を発動したのだ。
風弾。
以前食らった時より威力が増している。
中距離での魔法は、確認してからでは避けるのは至難の業だ。
さらに風系統の魔法は見えにくい上に範囲が広い。
観衆は皆グレイの正気を疑った。
同じ騎士とはいえ、実の妹相手にいきなり高威力の魔法をぶつける兄など存在しない。
だが・・・
グレイは・・・・
容赦なく・・・・・
次々と・・・・・・・
魔法を放っていった。
対する妹は・・・・
その魔法が当たるより早くグレイの射線から逃れるように疾走していく。およそ人の出していい速度ではなかった。
だが近づけば近づくほd風弾の弾幕は密になる。
そして・・・
ボンッ
まともに食らってしまった。
間髪入れず、風弾を連射するグレイ。
ボンッボンッボボンッ
エリザベスは
片腕を盾に踏ん張っている・・・・が動きを止められた時点でグレイの完封だ。
ボンッボボンッバシュッ
グレイの・・・完封の・・・はずだった。
急にエリザベスはグレイの風弾の効果をものともせず突貫した。
「ちィィッもう順応したか!!」
思わず横っ飛びで避けるグレイ。
エリザベスは逃すまいと詰める。
もう、魔法の距離じゃない。
そして、木剣同士がぶつかる。
もう剣技の距離ではない
グレイは以前と同じようにエリザベスの重心を崩そうとする。
エリザベスは崩れない。
バックステップで距離を取るも、
いや、取ろうとした瞬間踏み込まれ、剣の力を受け長そうとしても、エリザベスの剣が支点のように動かない。
やがて、練兵場の壁まで押されて、
「くっここから逆転する術を俺は持たん・・・俺の・・・・負けだ・・・・」
「しッ試合終了!」
誰もが信じられない光景だった。
身内とはいえ新人の騎士が騎士隊最強格の騎士を打ち破ったのだ。
「おいおいマジかよ!」「ありえねぇ!」「手ェ抜いたのか!?」
「いやいや、魔法も剣も潰されて、単純な力で押されたんだよ」
「意味がわからねぇ」「金返せ!」
お金賭けてたのか!?
と突っ込む気力もなかった。
騒ぐ観衆から目線を兄に移す。
「兄さん・・・・・」
「ああ、よくここま・・・」
「約束を・・・覚えていますか?」
約束?
兄は何事かと訝しむ。
「スマン、何か約束をしていただろうか」
「覚えていないんですか!?あの約束を・・・!」
私はフゥと息を吐くと、兄の瞳をまっすぐ見据え宣った
「妹を・・・ニーテを・・・私にください!」
「そんな約束などしていない」
一刀両断だった