表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/307

暗い気持ち

 軍隊狼を撃退してから数日後・・・

私は父に呼び出されていた。


・・・・・

・・・・・・・

・・・・・・・・・・


い、居心地が悪い・・・

無言でこちらを見つめる父。

・・・・


「軍隊狼を追い払ったそうだな・・・」


私は視線を落とし、

「はい・・・・」


一息置いて

「危険な真似はやめろと言ったであろう?・・・・」


私は顔をあげ、懇願するように父を見つめ

「し、しかし、放っておけば、あの商人達は全滅しておりました!」


さらに、

「こ、困ってる者を助けるのは、騎士として当然ではないでしょうかっ!?」


答えを待つ。

・・・・・

父は嘆息し、やがて

「お前は、騎士ではない・・・」


「騎士家の娘ですッッ」

咄嗟に反発する。


「騎士の娘であれば、騎士が来るのを信じて待て・・」


「しかしッッ・・・・」


「カーラも心配する・・・・」

言葉が


「じき妹も生まれてくるのだぞ・・・」

出てこない


「あまり母に負担をかけるな・・・・」


項垂れる。父上の言うことは正しい。

「・・・・はい」




やがて私に妹が出来た。



妹はかわいい。

何が?




       存在が



妹を見ていると、私の中の何かが、こう、なんていうかな?モヤモヤするというか、うーん。

わかるかなぁ?なんだろう、うーんあえて言葉にするなら、



      美味しそう


そう言葉を紡いだ瞬間私の心に「こわい」という感情が芽生えた。

こわい、こわい、何より私自身がこわい。


自分の心の暗い部分を自覚してからというもの、私は一心不乱に剣を振り続けた。王国を守る騎士となれば、きっとこの暗い感情はなくなるはず。そう信じて・・・・


今まで逃げ回っていた兄との手合わせもこの頃からよくするようになった。


兄は二年前に騎士になり天才と評されるほどの実力を見せた。剣技もさることながら、魔法の才も並外れているのだ。


そんな兄は私との手合わせで容赦なく魔法を使ってくる。


魔法剣士が多用する身体強化魔法をはじめ、非殺傷レベルの風弾、水弾、雷。


      私は妹だぞ!どこの世界に手合わせで妹に魔法を放ってくる兄がいるのだ!?


昔はそんな兄に手も足も出ず、反感を抱いていた。

だが今の私は余計な事を一切考えず、兄に突進していける。

魔法の才のない私では遠距離など話にならない。


だから近づく。


風なんて、水なんて、雷なんて・・・・・・


      小賢しいっ


避けるのではなく、兄が狙うより早くその範囲から外れる。そして近づけば魔法は打てない。

兄は身体強化魔法頼みの超人的なバックステップで距離をとるが、

私はお構いなしに肉薄する。

やがてお互いの剣の間合いに入り、木剣が打ち合う。


ゴッッ


木剣同士がぶつかり、鈍い音が響く。


そして剣を通し、力と力の押し合いが・・・・


始まらなかった。


兄はぶつかる一瞬、剣に力を込めたかと思うと、私の刃の下から体をずらし、突進する力を逃すように体を入れ替えた。


私の体が流れて、地面から足が離れる。空と地面が逆転する。


「カハっっ」


転がされた。

・・・・・

あっ太陽眩しっ


不意に訝しげな兄の顔が倒れる私を見下ろす。


「無事か?」


私は口をへの字にして、

「実の妹相手に容赦なく魔法撃ってくるグレイ兄さんが言う事じゃないよ」

と応えた


「仕方ないだろう。お前が相手なんだから」

やっぱり私のことが嫌いなんだろうか。


「接近戦になったからって油断はするな。重心を崩さぬよう意識しろ」


ぐぬぬ


「最近のお前は変だぞ?エリザベス」


「兄さんには関係ないよ」

俯く


兄は顎に手を当てしばらく逡巡すると


「ニーテか?」


ギクっ


「図星か・・・・」

無言は肯定


「ニーテがどうしたというのだ?」


俯いたままポツポツと

「あの子が・・・・ニーテが・・・・」




     「可愛いのです」



・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

「・・・・ふむ」

先を促す兄。


「あの子は・・・・・ニーテは・・・・本当に私の子供なのかな?」

懇願するような目を兄に向ける

「違うな」

即答する兄

「ニーテは父上と母上の子供だ」

まるで裏切られたように目を見開く私。


「いや、あの子は父上と母上の子だ」

困惑する兄


私は視線を落とすと、木剣を戻し、

項垂れるように屋敷に戻っていく。


兄は妹の背中を見送ることしか出来なかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ