薬屋ヨランダ2
「あ、ワシがお主を龍みたいだと言ったことは忘れるんじゃ」
小首を傾げる。
「別にそこまで怒ってはいない。確かに年頃の娘に言う言葉ではないが・・・」
ヨランダの目がまるで残念なものを見つめるようなものに変わった気がする。
「違う、そうではない」
ヨランダ否定する
「何度も言っておるじゃろ?魔素は万物に影響すると・・」
「ああ」
首肯する
「魔素に決められた力の向きを与えて発動するのが魔法じゃ」
「詳しくはないが・・・・」
とりあえず頷く
「相変わらず脳筋じゃのー」
酷い言い草だ。
「は?」
ちょっと殺気をこめる。
「!っスススス、スマヌ!そそっそういうつもりじゃないんじゃ!後生じゃっ!とっとにかくっ!身も蓋もない話じゃが、お主が望めば、お主は龍になるということじゃ!」
何言ってんだ?このババァ?
「う、疑っておるの?まぁ当然じゃな。もちろん、魔法は思ったことをなんでも実現できるような万能なものではない」
「例えば、ある程度魔素に順応したものであれば、呪文も魔法陣も必要なく、魔法と同じ効果を発言することができる
「ふむ」
首肯する
「ただ、魔法使いと呼ばれる者たちのように、一定のレベルの効果を持つ魔法を発現するためには、呪文や魔法陣が必要じゃ」
「ただお主の身体は魔素の馴染みが良すぎる」
「先程突きを意識した際、お主の重さが龍並に増えたと言ったじゃろ?」
「ああ」
首肯する
「効果の大きさから考えて、中級レベルの魔法を発動したのと同じレベルじゃ」
「本来なら呪文も魔法陣もなく、それだけの効果を得られることはない」
「しかし、お主の素養がそれを実現させとる」
固唾を呑む
「さらに、魔素はそうやって・・・・つまり、呪文や魔法陣もなく反応させた時、必ずしも望んだ効果を得られるわけではない。・・・・つまり、不慮な結果をもたらす場合もある。」
ヨランダは私の瞳を見据え、
「何故、大猿相手に正面から戦えると思った?・・・」
まるで冷たい何かが背中を伝うようだった。
今まで当然のように認識していた自分自身が、まるで別の、異質なもののように思えた。
「スマヌ、ワシも言うほど魔素を理解しているわけではない・・・」
「わかった・・・・ありがとうヨランダ・・・」
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
「くっ暗い話はここまでじゃ!元気を出せ!飴ちゃん食うか?」
ヨランダはバタバタしながら突然飴私取り出し、私に握らせた。
私は飴を受け取ると、そういえば肝心なことを聴いていなかったことを思い出す。
「最近ニーテが来ているそうだな?」
ヨランダは目を見開く
「知らなかったのか?」
首肯する
「あの子は優秀じゃよ。要領がいい。魔法の適正もある」
「お姉ちゃんの役に立つんじゃーと張り切る姿を見ていると、ワシの枯れた心が潤いを取り戻すようじゃ・」
ん?このババァ、ニーテに色目を使っているのか?
ちょっと殺気を飛ばす。
「なっっなんじゃ!?」
睨む
「・・・・ニーテは渡さん」
「い、いらんわ、主の妹なぞ!」
睨む
「ニーテがいらん子だと?」
睨む
「じゃあどうすればいいんじゃ!?」
私はスッとヨランダに迫る顔を引っ込め、
「どうか妹をよろしくお願いします」
そう言って頭を下げた。
「なんか嫁入りする娘を思う父親のようじゃのう・・・」
半眼で睨む
「ヒィィィ!」