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薬屋ヨランダ

 エルフというのは非常に胡散臭い。



「我らエルフはの、古来より精霊と共にある森の民なのじゃよ」



自分は数百年生きたエルフだ。とか、エルフは肉は食わない!とか、



「森と共に生き、魔法に長け、弓を取らせば一騎当千の・・・・」



いやいや、肉食ってるでしょ?割とどこでもいるよね?騎士隊に弓がド下手で長剣ブンブン振り回すゴツいエルフがいるけど?



「おぉ森の声が聞こえる・・・・肉は食っておるぞ?普通に」



「心を読むとか、急に本格的な神秘性を強調するな!」



「神秘じゃもん〜エルフは神秘の民じゃもん〜」


なんか腹立つ。・・・・・




 薬屋ヨランダの店は人通りの少ない小道の先にある小さな店だ。ちょっとした民家を改造したような作りで、ずんぐりむっくりしたフクロウみたいな置き物が店の前に置いてある。

ヨランダ曰く、それは魔除けで、悪意のある存在をこの店に近づけないためだとか。


    ホントか〜?


店内にはホレ薬と書かれた桃色の液体の入った小瓶、強壮剤と書かれた黒い丸薬入りの瓶、変ないも虫の干物の瓶詰めなどがところ狭しと陳列してある。怪しい。あと値段、絶対ぼったくってるよね。

ヨランダバァ曰く、見る人が見れば宝の山なんだとか。


「ヨランダ〜いる?」


「・・・・いらっしゃい、なんだ嬢ちゃんかい。いつもの薬じゃな」


この一見美少女、金髪緑眼ののじゃロリバァさんがヨランダだ。



「ああ、頼む」


パタパタと足音を鳴らし店の奥に消えるヨランダ。

手持ち無沙汰でとりあえず品物を眺める私。実はヨランダの店で珍妙な品々を観察するのが割と好きだったりする。


ヨランダがまたパタパタと足音を鳴らし戻ってくる。


「はいよ、いつもの薬じゃよ。金貨一枚ね」


「ありがとう」

金貨を手渡し礼を述べる。

・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

「そういや、嬢ちゃん、東の大猿を討伐したんじゃって?」


「ああ、知っているのか?」


「ああ、あの大猿はたびたび現れては人里を荒らす凶悪な魔物じゃった。・・・嬢ちゃんはどうやってあの化け物を倒したんじゃ?ヒトがまともに戦って勝てる相手じゃなかろう」


「どうやってって、こう脇腹からグサーって」

剣で突き刺す真似をする

・・・・・

・・・・・・

ヨランダは目を見開き、一瞬何を言われたか分からない表情をしていたが、やがて柳眉を動かし、呆れるようにフゥとため息を吐き私を睨み上げ、



「アホじゃろ」

と、

やがてワナワナと肩を震わせて、ダンッと会計台に拳を振り下ろす。


「いいか、嬢ちゃん、あの大猿はな、ほとんどの魔法に耐性を持っとる!」


「知っている」

首肯する。


「おまけに、図体の割に素早いんじゃ!」


「ああ」

首肯する


「昔、水の魔法で猿の頭を包み、そのまま窒息させたって話も聞いたが、素早く動く相手の頭を水魔法で覆い続けるなんて芸当ができる者なぞ、いるはずがない!」


「ヨランダは?」



ヨランダ、また一瞬固まる

「ま、まぁワシの神秘パワーさえあれば、ちょっと頑張れば?できるかもしれんの?へへ・・・ではなくっ!お主、大猿を剣で殺したんじゃろ?眠っている間に近づいて殺したとでもいうのか?」


「ふ、馬鹿を言うな。奴が眠っていたのならもっと刃が通りやすい場所を狙うさ」


「ということは、奴と正面からぶつかって殺したってことじゃな?」

ヨランダは迫る

「ああ」


ヨランダは私を睨みつけたまま、フゥと息を吐き、一歩下がると、

「ちなみにお主、今の体重はいくつじゃ?」


「なんだやぶから棒に、年頃の娘に体重を問うなんて、失礼だろう?」


「いいから答えるんじゃ」

ヨランダは半眼で睨む


「50キロ前後だとは思うが・・・・・」


「ふむ」

ヨランダは眼鏡を傾けさらに睨む。いや覗き込んでいるのか?

私はなんとなく居心地が悪く我が身を掻き抱く。


「気持ち悪いぞ」

失礼なバァさんだ。


「ふぅむ魔素の巡りは問題ないようじゃが、若干圧が増しているような気がする・・・・ちょっと表に出るんじゃ」


表に出た


ヨランダが空中を指差しながら

「ちょっとそこに大猿の脇腹があると思って、その時のことを思い出して剣で突く真似をするのじゃ」


私は嘆息し、ヨランダに言われるまま、空手に剣を握る振りをして、一瞬目を閉じ、イメージする。そしてヨランダの指の刺す方、つまり幻視した大猿の脇腹に目掛け剣を構え、固定し、下から掬い上げるように体ごと思いきり踏み込む


ボゴォ


地が割れる


そのままの姿勢で数秒、静止する。


ふーーー

ヨランダが大きく溜息を吐く。


「お主は龍か」


小首を傾げる

「どこからどう見ても人間だが?」


「重さがの、・・・重さがちょっとした龍ぐらいある・・」


なんて?


「いや、ほら、龍ってあの巨大な体で空を飛び回る、不思議生物じゃろ?」

ヨランダは慌てるように言葉を重ねる。

「いっ、一瞬ではあるが、お主の体重が昔見た龍ぐらいあっての?」


「ふむ」


「だから、嬢ちゃんは実は龍なんじゃないかと・・・」


私は思わず手刀を構える


「ヒィィィっお助けーっ後生じゃーっ」


ハッとする

思わず固まる。


数秒の静寂・・・


「これは大丈夫なものなのか?」


ヨランダは片手で口を多い視線を彷徨わせ、しばらく逡巡する・・・


「・・・・・わからん・・・」


また視線を巡らす。


「断言はできんが、お主の身体には悪影響はないじゃろう。むしろ正常なほうじゃ」



「じゃが、心はわからん。力の制御もの?こればかりは嬢ちゃんが折り合いをつけていくしかあるまい」


何故か無性にニーテに会いたくなった。


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