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シスコン拗らせ姉の究極の悟り



 〜〜〜〜〜〜ッッッ


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ



嗚呼、・・・・神よッッッッ・・・・・


何故ッッッ!?   何故なのですかッッッ!?



何故ッッッ・・・妹とッッ・・・・・・



子作りができないーーーーーーーーーーーーッッッ!




私は神を呪った・・・・・。こんなっ・・・・こんな悲劇があっていいのかと・・・





 ラーマ王国の王都シヴァは雑多な町である。緑豊かで資源も多く、海運が発達し、物珍しい品がこの都を流れていく。初代の王は交易で財をなし、国を大きくした。三代目国王の時代、西のエウルア魔王国からの侵略を受け、辛くもそれを退けた。それ以来、ラーマ王国は交易と武力を重んじる国として発展していった。


 私の妹の名はニーテ・アグニ。代々騎士を輩出しているアグニ家の次女に生まれた。騎士の家と言っても生まれる子全てが剣の才能を持っているわけではなく、残念ながら妹は姉である私と違い、剣の才能はなかった。・・・・

だが・・だがッッッ!!諸君!これだけは言わせてほしいッッ!


実は私の妹は「天使」なのだ・・・・


小さい頃からお姉様、お姉様と、コロコロ笑いながら私の後をついてきて・・・・小さいおててで私に縋りついてくる・・・嗚呼あたたかい・・・・なんて可愛らしい・・・・嗚呼、ニーテ、嗚呼ニーテ、なんて、なんて、


「美味しそう」・・・・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



はッッッイカンイカン!ついつい妄想の中で妹をじっくりたっぷり舐め回すところだった・・・

ふぅ、どうもあの子のことを考えると気が緩んでいかんな。猛省せねば・・・・

私はこれでも王国が誇る最強の騎士、エリザベス・アグニなのだから。


 3日前のことだ。王国東部辺境、ハヌマン領で事件が起きた。身の丈3メートルとも4メートルともいう、緋色の大猿が出たらしい。その地域では、よく猿の魔物が出没し、家畜をさらい、田畑を荒らしたりという事件が起こっていた。だから皆、ハヌマン領から獣害の知らせを聞いた時、いつも通り数が増えすぎて被害が大きくなっただけだろうとたかを括っていた。

 

魔猿は雑食の魔物である。基本的に木の実や昆虫を食し、警戒心が強く、木の上を移動し、人前には滅多に姿を見せない。しかし奴らは森の実りが減ると、動物の肉も食らい、肉の味を知った奴らは、凶暴化する習性を持っていた。さらに厄介なのが知能が高い事だ。奴らは人間によって痛めつけられると、その人間の顔を覚え、恨む。そして数年経ってもその人間を忘れず、恨みを晴らすため殺す。決して油断できない相手だ。


 日が落ちると外はやや肌寒く、歩けば枯葉の潰れる音が響いた。いくつもの街を経由し、馬で7日かけ走った。やがて大きな山を背にハヌマン領が見えた。遠くから見る領主館のある街は白い塀で覆われ、街の中心には大きな金付きの教会があった。街の門まで辿り着き、門兵に挨拶をする。門兵は我らを見るや、まるで悲願が叶ったように喜び我らを迎え入れてくれた。厩舎に馬を預け、領主館へと案内される。

 

「嗚呼、遠路はるばる、よくお越しくださいました!」


「ああ、ハヌマン卿、はじめまして、エリザベス・アグニだ。しばらく世話になる。」


「ええまずは旅の疲れもあるでしょう。本日はお身体をお休めください。お話は明日からにしましょう。」


「感謝する。」



 翌朝、私達は作戦会議の場に集まった。


「改めて、本日は、我が領に救援に来ていただいて、誠にありがとうございます。私がハヌマン領領主、デニス・ハヌマンでございます。」


間を開けて隣の背の高い騎士が答える

「私はハヌマン領の守護を務める王国騎士隊第13部隊長エリックであります。」


そして私が

「王国騎士隊、第一部隊隊長、エリザベス・アグニであります。」


「此度は王都より遠路お越しいただき、ありがとうございます。では早速なのですが、これより作戦会議を始めたいと思います。」


「よろしくお願いします」


「では私から現状を簡単に説明いたします。件の大猿は、一カ月前、ここより東の村で最初に確認されました。大きさは一階建の民家ほど。片手で牛一頭を振り回す膂力がございます。村を襲った時はその大猿は7〜8頭ほどの一回り小さい…つまり通常の大きさの猿どもを引き連れ、村を蹂躙いたしました。」


「ふむ」


「その際、村の住人が13名ほど殺されています。」


「村では通常の猿が降りてきた時、火などを近づけて追い払ったりしているのですが、繰り返す内に、奴らも火に怯まなくなり、凶暴個体は手がつけられません。」


「我ら13騎士隊も大猿に向かって火の魔法を放ったのですが、耐性があるのか、奴には全く効きませんでした。」


「さらに厄介なのが奴らの連携です。大型が咆哮を上げ、威圧し、注目を集めて、通常型が屋根など死角から襲いくるのです。通常型は凶暴化すると目で捉えるのも困難で、騎士が何人もやられました」


「それから大型は知能が高く人質も用います。特に女子供を好んで盾にする事が多いみたいです。


その膂力でもって人を振り回し、時には咥えて、まるで人が泣き叫ぶ様を嘲笑っているかのように振る舞うのです」


人を弄び、そして人のように笑うその様は、まるで得体の知れない、何かのようでした」


「エリック隊長、余計なことはいい。必要なことだけ説明してくれ」


「すみません、エリザベス隊長」


「で、どうするのだ?我ら第一騎士隊は地の利がない。それでも我らを呼んだということは打撃力がほしいからだろ?13隊はどうやって我らの戦場を整えるのだ?」


「それはお任せ下さい。必ずや猿どもを釣ってご覧にいれます」



   夜が明けた・・・・

地味だ・・・・。うん、普通の作戦だ・・・・。うんもっとこう、もっとこう、なんかあるだろう?領地を恐怖のドン底に陥れた魔物だぞ?怪力で知能も高く、手がつけられない。そんな魔物だぞ?

いやいや、気が抜けてる訳ではない、油断は全くない。相対したら屠る自信はある・・・だがなぁ、こういう時は誰もがあっと驚くような奇策を用いて大猿殺しをなすべきだろう?

 は、イカンイカン。うむ堅実でよく練られた作戦だと思うぞ?実にいい!


 作戦の準備を終え、領主館ロビーに集まる。

「ではエリザベス様、エリック様、どうか我が領を、民を救ってください」

「「了解した」」


まず我々は村へ向かった。誘き出すまでもなく、奴らが現れいれば、そのまま正面からぶつかるつもりだった。

しかし村は生き物の気配すらなく閑散と・・・・

いや、訂正しよう。ところどころ人の体の一部らしきものが落ちている。

戦闘跡も激しい。衝撃で壊れたドアがキィキィとなってる

人の頭、子供、上半身だけか?女の首が捻じ曲がって頭が半分食われているな。


なんとなしに一軒の民家に入る。

三人家族かな?テーブルの上の皿を見て襲われる情景が脳裏に浮かぶ。

その時、

ガタッッッッガタガタッッッッッ

物陰に何かいるっ猿か!?

地を這うように俊敏に動いた影に思わず蹴りを入れる

「グゲッッッッ」

小さな影は向かいの民家に背中を打ちつけ落下する。

確認する・・・・

しばしの静寂・・・・

首を傾げる・・・・

しばしの静寂・・・

確認する・・・・

うん、なんか人っぽい・・・・しかも子供っぽい・・・・うんしかも本気で鳩尾を蹴り上げちゃったっぽい・・・・

うん、なんか私が殺したっぽい・・・・・・




おのれ猿めッッッッッッッ



なんと狡猾なッッッッ

私は思わず拳をギュッと握りしめ唇を噛む。


「卑劣な猿めッッッッ絶対に許さないからなーーーーーーッッ」


「ウぅ」

その時、伏せた子供が呻いたような気がした

はっ

私は思わず駆け寄った。

「少年、無事か?」

私の声に他の隊士も集まってくる・・・

「どうしました?隊長!」

「いや、生存者を見つけた!回復魔術を!」

「はっっ」

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