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ルリナはダンスを披露する

 私は、ツバキに教わったとおりに身体を動かす。

 ニルも私に合わせようとしてくれるから、非常に動きやすい。

 踊りはじめた瞬間は緊張していたが、いざ始まってしまえば、むしろニルとこうやって踊っていられることが幸せだと感じていた。

 私は、無我夢中でニルとのひとときを楽しんでいた。


 こういう時間はすぐに過ぎてしまうもので、あっという間に幸せな時間は終わってしまった。


 ――パチパチパチパチパチパチパチ……。


 ものすごい拍手が沸き起こった。

 これって、私たちに向けられたものだよね……?


「ルリナよ。立場上今までたくさんの者たちとダンスをする機会があった。その中でもルリナはダントツで素晴らしい! いつの間に?」

「ツバキに教えてもらっていました」

「ツバキとも踊ったことはあったが、失礼ながら彼女よりも上手い。正直驚いたよ」

「ありがとうございます」

「本来社交界ではこのようなことは私から言うことではないのだが、言わせてほしい。私と結婚してほしい!」


 すると、またしても歓声と拍手が舞い起こった。

 どうやら、貴族の方々を納得させることに成功したらしい。

 それだけでなく、ニルから改めてプロポーズされたことが嬉しくて、涙が出てきそうになった。


「よろしくおねがいいたします。私、幸せすぎてまた気絶しちゃいそうです」

「それは困る。ルリナにはもうしばらくここにいてもらわなければならないからな」

「どういうことですか?」


 急にニルの表情が険しいものになってしまった。

 もしかして、私が気絶するかもなどと言ったことで怒らせた?

 いやいや、そんなことはないはず。

 じゃあいったいなんでそんな顔をするの?


「公爵よ!!」


 ニルが大声で叫ぶ。

 大歓声だった空気も一気に冷めるものに変化してしまった。



 公爵がガタガタと震えながら姿を現した。


「なにかルリナに申すことはあるか?」

「私も驚いております。ここまで成長するとは」

「彼女には私と専属のメイドが教育担当をした。だが、教えたのは基礎そのもので、覚えも早く、そのあとはほとんど自主的に成長していった」

「…………」

「これほど学習能力があるにも関わらず、無能すぎて追放などあり得ぬと思うが」

「…………」


 公爵はひたすら黙秘を貫いていた。

 遠くにいるシャインは、すでにダンスで失敗した影響からか、しゃがんだまま顔を隠している状態である。


「なにも言わぬか。では話を変えよう。変装して娼館へ通っていたことは調査済みだ」

「な!?」


 ものすごい勢いでどよめきが起こる。

 今の私ならどうしてなのかがよく理解できた。

 貴族はそういう場所には決して入ってはいけないという暗黙のルールが存在している。

 しかも、誤魔化すために変装までしていたとなればなおのこと。


 もはや、公爵が言い訳できるような状況でもなさそうだ。

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