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ルリナはシャインのダンスを見て……

 公爵は私に対して、初めて冷や汗のようなものを見せてきた。


「く……話は終わりだ。しょせん、ダンスで恥をかくことになるであろう」


 公爵は、その場を逃げるように去っていった。

 ダンスで恥はかかないようにしたい。

 ツバキとの特訓のおかげででしっかりと覚えたけど、本番でどうなるかはわからない。

 公爵の言葉も肝に銘じておくことにした。


 ♢


 ついに社交界でダンス披露の時間がやってきた。

 どのご令嬢も上手いし、ダンスを経て次々と婚約が決まっていく。

 これが社交界かぁ。


 あれ、次はシャインの番のようだ。

 ダンスは一人で踊ることもできるし、お相手を女性から指名することもできる。

 もちろん断ることもできるが、それは恥をかかせてしまう行為のようで、婚約者が決まっていない男性は踊る傾向が強いそうだ。

 シャインはどうするのだろう。


「第一王子。私と踊っていただけますか?」

「ふむ……私を選ぶか」


 この瞬間、社交界一番の賑わいをみせた。


「さすが公爵令嬢。初めての社交界にもかかわらずいきなり王子を選ぶとは……」

「公爵様のご令嬢ですからね。他の者では到底指名など恐れ多くできませんが、彼女ならば妥当でしょう」

「ダンスもさぞ素晴らしいことだろう……」


 みんなシャインに期待しているようだった。

 だが……。


「すみません、もう一度途中から良いですか?」

「…………? 調子が悪いのか?」

「申し訳ありません。次は必ず!」


 これで三度めのやり直しだ。

 動きもどこかぎこちないように見えるし、調子が悪いというよりも……。

 これ以上のことはなにも思わないようにしておこう。


「すまぬがもう終わりだ」

「そんな……」

「公爵の娘ということで楽しみではあったが、期待外れでガッカリだ」

「う……う……こんなことって……」


 シャインが茫然と立ち尽くしていた。

 遠目で見ている公爵は、まるで信じられないといったような表情を浮かべていた。


「おい、たしかお前は元々公爵の子であったな?」


 第一王子が私のことをギロリと鋭い視線で向けてきた。

 私はそのまま平然と、はいとだけ返事をした。


「次はおまえが踊る番だ。この状況を挽回してみせよ」

「は、はい! では……、ニルワーム王子。私と踊っていただけますか?」

「よろこんで!」


「公爵家はどうしてしまったのだ……」

「まさかここまで酷すぎるなんて……」

「あの追放された女ではダメだろう」

「なぜ第一王子はわざわざあんな者に指名を……?」

「それにしてもあの公爵がここまでダンスを放置していたとでも!?」

「もしかして、公爵様は教育に関しては無能?」

「口を慎むのだよ。本人に聞こえたらどうする!?」


 今度はどよめきが走った。

 だが近くにいたマーレットや私の友達、それから第一王子だけはむしろ楽しみといった表情をしてくれていた。

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