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9033K列車 耐寒耐雪装備

輝サイド

 気温は21度。もちろん、マイナスの。

輝「ハァ・・・。」

吐く息は白い。

 薄手の長袖、厚手のYシャツにトレーナー。長袖の下には肌着と上タイツ。下はタイツに厚手の長ズボン。手には何時も使っている手袋に防寒用手袋を重ね、足下は2枚の靴下にスノーシュー。そして、頭には耳を覆うようにニット帽。これだけの耐寒耐雪装備を施している。しかし、肌が露出している顔には刺さるような寒さが襲ってくる。

輝「これが本物の北海道の冬って奴か・・・。」

 雪を踏みしめて、街の外れにある場所に向かって歩く。そこに向かって有る一定の幅で道が続いている。ここを通っていた士幌線、糠平ダムに沈む旧線の代わりに建設された新線跡だ。

輝「ここか・・・。」

雪のない広い部分を覗くと、下も真っ白なのが分かる。ここは本来川の筈だが、その川も全て凍っているようだ。そして、その隣に架かる橋。糠平橋梁と言うらしい。

 下側から写した写真があるけど、これってどこから降りていけるのかな・・・。

輝「ッ・・・。」

何かの気配。三毛別みたいな奴はノーサンキューだぞ・・・。そっちを見るとエゾシカがいた。深い雪に足の大部分を埋めるように歩いている。鹿は体重が重いし、足が細いからなぁ・・・。だから、足が簡単に埋まるんだよなぁ・・・。

しばらく近くを歩き回っていたが、その場所は分からなかった。目的の写真は撮れそうにないが、この夜空は撮っておいた方が良さそうだ。

 ホテルに入って最初の感想は「暑い」だ。外と屋内の温度差はかなり大きい。すぐにコートとトレーナーを脱いだ。これでも暑いくらいか・・・。泊まっている部屋のドアをゆっくりと開けた。

 ギイイイ・・・。どんなに静に開けようと思ってもドアからは少し大きめの音が出る。その音に気付いたのか布団が動いて、あさひが体を起こした。もちろん、架かっていた布団は重力に従うわけだから・・・。

あさひ「・・・おはよ・・・。」

輝「まずは服着ようか。」

あさひ「・・・エッチ。」

あさひは落ちた布団を自分の体に引き寄せた。

輝「昨日全部見たけどね。」

あさひ「そういうことは言わなくていいの。」

あさひ「ていうか、こんな朝早くから何処行ってたのよ。まだ5時だよ。ていうか、寒くなかったの。」

服を着たあさひは時計を見ながら言った。

輝「着込んでたから大丈夫だったよ。えっとねぇ、街の近くにある橋を見にね。」

あさひ「へぇ・・・。この近くにも橋って有るんだ。えっとタウシュベツで合ってるっけ。」

輝「合ってるよ。」

あさひ「タウシュベツ橋梁みたいな。」

輝「それとは全然違うかな、出来た時期がね。」

あさひ「ああ。ダムが出来るって決まった後に作った方か。」

輝「そうそう。」

あさひ「どうだった。」

輝「下にはどこから行けば良いのか分かんなかったなぁ・・・。だから上から撮った写真しかないよ。」

僕がカメラの電源を付けると、あさひは僕の近くに体を寄せてきて、

あさひ「見せて。」

と言ってくる。

輝「これ。」

あさひ「これもアーチなの・・・。」

輝「この時期はアーチが多い気がするなぁ。技術的な問題じゃないかな。」

あさひ「・・・まぁ、橋だもんね。これ以上は何にも無いよね・・・。」

輝「まぁね・・・今日は天気良いから、タウシュベツ川橋梁も近くで見れるよ。後、外はすっごく寒いから、ちゃんと着込んどきなよ。」

あさひ「分かった。ちゃんと着とくね。」

あさひはチラッと時計を見る。

あさひ「お風呂行ってこよう。」

輝「僕も行こうかな。」

あさひ「朝まで一緒には入らないからね。」

輝「夜は良いのかな。」

あさひ「・・・この頭はエロいことと旅行以外は考えてないのかなぁ。」

輝「かもね。」

あさひは大きくため息をついて、「否定しなさい」とだけ言った。


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