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9.悪事を成敗する(テオドール)


影は、指示を出した翌日には情報を手に入れたらしく俺の前にフッと姿を現した。

報告書は要点をまとめた分かりやすいものだったが、その内容に顔を曇らせた。


「そうか、引き続き動向を探ってくれ」

「御意」

ハリスの情報は、当たっていた。

あの脅迫文も令嬢の行方不明もジャスミン嬢の指示だろう。

だが、証拠がない。それに、また令嬢を誘拐しようとしているようだ…。

(どうしたらいい…)


俺は、顎に手を当て頭をフル回転させる。

(令嬢の誘拐か…まだ、標的は決まっていない。俺に近づく令嬢が消える…だったら)

そして、目の前のソファーであくびをするハリスをじーっと見つめた……。

(呑気にあくびなんかしやがって…こいつ、俺が必死に考えてんのに…)

「な、なんですか?そんなに見つめられたら照れますねー。へへっ!」

「うん。お前じゃ駄目だな……」

「はい?」

ハリスは、意味が分からないと言いたげに首をかしげる。

「お前に女装させてもバケモノにしか見えん」

「ちょ!なんですか?女装って?……確かに、こんな筋肉ムキムキの令嬢がいたら怖いですけどね。バケモノは、ないですよー!」

「ハハッ!すまない。バケモノじゃなくて怪物だったなっ!」

「えー!」

「まぁ、冗談はそのぐらいにして。……やっぱりアイツに頼むしかないか」


その日の夜、なんとか説得して囮役が決まった。

(さぁ、あぶり出す計画を立てなくては……1度父上に相談してみるか)





ある日の昼下がり


王都の街の中心に1台の馬車が止まった。

馬車から黒髪の青年が先に降りて来てキャラメル色の髪の愛らしい令嬢をエスコートする。


二人は時々見つめ合って微笑み、腕を組んで大通りを歩く美男美女は、まるで恋人同士の様に甘い雰囲気をかもし出している。

それを見た周りの人達は、「ほぅ」と、ため息をついた。


「ちょっと!あれは、第二王子殿下よ。隣にいるのは婚約者かしら?」

「とても、お似合いだわ。どこのご令嬢かしら?」

「先日も見かけたわよ。あの人気のカフェで二人でお茶を飲んでる所を見たわ」

「素敵ねー。羨ましいわー」


王子は、ニッコリ微笑んでエスコートを続けた。人気の菓子店、宝飾店をまわり、

二人は広場の噴水近くのベンチに座り 耳に顔を近づけ囁き合う。


『殿下…』

『なんだ?』

『もう笑顔が限界です……顔の筋肉が引きつりそうです……』

『もう少し辛抱しろ。噂を流して貰わねばこの計画は失敗してしまうだろ?俺だって我慢してるんだよ!はぁ、レイチェルと来たかった……』

『殿下 そんな顔しないで下さい。怪しまれますよ?』

『ああ、そうだった。もう少し大通りを歩いてから城に戻るぞ』

『御意』


二人は立ち上がって腕を組むと再び歩きだした。


(あとは、犯人が何を仕掛けてくるかだな)






ヘンデン侯爵邸


コンコン

「お嬢様少しお話が」


「入りなさい」

「失礼いたします」

ジャスミンの従者が腰を低くし部屋へと入って来た。


「話って何かしら?」

その冷たい声に従者の身体がぶるりと震えた。

「は…はい。数日前から王都の大通りでテオドール殿下と美しい令嬢が腕を組んで歩いているのを何度も見かけたと言う情報が入っております。どうも、婚約者候補ではないかと噂になっております」

「…そう、で、誰なの?その女は」

「さぁ、見た事もない令嬢だった様で、宝飾店に立ち寄り髪飾りを注文し、後日また一緒に取りに来ると言っていたそうです」


ジャスミンは、椅子から立ち上がるとテーブルの上にあった物すべてを手で払った。


ガシャン!バリンッ!

「!!!」

床には、無残な花と花瓶とティーカップの破片が散らばり絨毯にシミを作った。それを見た従者は、深々と頭を下げ震えていた。


「へえー、それで?それはいつなの?」

「6日後と」

「そう、わかったわ。下がってちょいだい」

従者は、顔を上げることなく足早に部屋を出て行った。


「…邪魔ね」

ジャスミンはしばらく無言で考え、何か企んだ顔をすると割れた破片を拾い集める侍女に言った。

「ノーラ アレの準備を」 

ジャスミンは、ニヤリと笑った。

「はい。かしこまりました」

ノーラは、一礼して部屋を出ていった。


「その女にも消えてもらうわ。ふふふっ」


その時、風もないのに窓辺のカーテンがゆらりと揺れた。







6日後、


俺はまた宝飾店に囮令嬢と訪れている。影からの報告通り、遠巻きに怪しい男達が俺達の後をつけて来ていた。

(予定通りだな…)

「ご注文の髪飾りは、こちらでございます」

装飾店の店主が白い手袋をはめ美しい箱をテーブルの上に置き蓋を開けた。四葉のクローバーをモチーフに所々サファイアを散りばめ、青い魔石をあしらった美しい髪飾りだ。

俺は、その髪飾りを手に取り、


「最高のできだな。素晴らしい」 と、褒めた。

(ああ、レイチェルの髪に似合いそうだ)


隣に寄り添う囮令嬢もニッコリ微笑む。


「ありがとうございます。またのお越しをお待ちしております」

店主は、深々と頭を下げた。


髪飾りを受け取り店を出ると、そこは王子を一目見ようと集まった人達でごった返していた。

すごい人だかりに呑まれ俺は囮令嬢を見失った。

(よし、計画通りだ。あとは、あいつに任せて待機だな)

俺は、護衛達を呼ぶと人だかりを速やかに解散させ、馬車へと戻った。




その頃、囮令嬢は背後から現れた数人の男達に路地裏に連れ込まれていた。


囮令嬢の腕を掴んでいた男が思いっきり突き放し、囮令嬢は地面へと倒れこんだ。

(くっ、まだ、我慢だ…)

「おい、この女で間違いないな?」

「王子と一緒にいたんで間違いないでしょーぜ。ヒヒヒヒッ」

男達は、ニヤリと笑った。

一人の男が囮令嬢に近付き顎をつかんだ。

「良い女だな。これは高く売れる。売っちまうか?」

「もったいないよなー引き渡すのー。売る前に味見させてくれよー」

「おいおい、お前だけずるいだろ!」

「それにしても美人だなー」

その男が顔を覗き込んだ瞬間、男はお腹に強烈な一撃を受けて倒れた。

「「「!!!!!」」」

「は?」

男達は、何が起こったのか分からず立ち尽くしている。

そこに回し蹴りが飛んできて、残りの男達もアッという間にボコボコにされ床に転がった。


(はぁ…反吐が出る。半殺しにしても足りないくらいだ。こいつら令嬢を売るつもりだったのか、ひどい事をする。許せないな……)


囮令嬢は、床に転がった男達を手早く縄で縛り上げ拘束すると、馬車で待機している殿下に報告にもどった。




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