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50.予定地へ③


「よし、じゃあふた手に別れて調べようか。俺とレイチェルは1階を、ハリスとマリーは2階を調べてくれ」

「はい」「了解」「畏まりました」



玄関から右側には、広いリビング、キッチン。玄関真正面の階段脇を通って奥に、トイレ、洗面所、脱衣所、お風呂。左側には、広い和室、左奥の渡り廊下を進むと、八畳の和室が2部屋、洋風な寝室、広めの納戸があった。この邸は、一見前から見ると二階建ての3,4人が暮らせそうな小さな家に見えるが、実は奥に長く広く作られていた。どこもホコリを被っておらず、生活感は残っているものの人の気配はなかった。


「どうして、こんな所に別の邸を建てたんだろうな…」

各部屋を見て回りながら王子がぽつりとつぶやいた。


「それは…、どうしてでしょうね」

ヤマト王は、国を作ったものの実質5年で当時宰相だった人に国を任せ退位したらしい。

王城は、居心地が悪かったんじゃないですか?なんて、王城で育った王子には口が裂けても言えないけれど。


「それに…レイチェルのあの部屋と似ているな」

「え?…あ、そうですね」


この家にある家具や魔道具製品は前世でよく見た家具や家電製品と一緒の作りだった。

キッチンは対面式キッチンで洗面所に洗濯機、お風呂やトイレの作りすべて…。

こまかく言えば、シャンプーポンプやロールのトイレットペーパーなど今世ないものをあげればきりがない。

(ここはまるで…、ああ…、そうか。ヤマト王は帰りたかったのかな。落ち着ける場所、故郷に)

そう考えると心が少し締め付けられる気がした。


しばらくして、2階の調査をしていた二人が奇妙な物でも見てしまったのか、青い顔をして口に手を当て慌てて降りて来た。


「二人共…どうした?!大丈夫か?!」

「何かあったの?」

「「………」」


ふう、と息をついたハリスさんは険しい顔をして話し出した。

「えーー、2階には3部屋あったのですが…2部屋は、まあ普通の部屋だったのですが…。一番奥の部屋がちょっと異様でして…行かれますか?」


「ああ…、行ってみよう」

ハリスは、変な汗をかいている。

あのハリスが動揺するくらいだ…よっぽど何かあったのだろう。

王子は、眉間に少し皺を寄せて階段をのぼった。


私も後に続いた。


一番奥の扉を開いた王子は…「はあ?…」と声を上げると呆然とそこに立ちつくしてしまった。

(え?なんなの?何があるの?)

私は、王子と扉の隙間をぬって部屋の中へと入ってみると…そこには、


「あー………」と思わず呟いていた。


広めの部屋には、アニメやゲームのポスターが壁や天井にまでびっしりと貼られ、棚にはフィギュアやグッズがズラーッとならんでいる。

(これ…どうやって手に入れたんだろう?…スキルで?…それにしても、すごすぎる!)

いわゆる女の子を攻略するゲームのグッズや他にも色んなゲーム、アニメグッズがびっしり部屋を埋め尽くしていた。


「…これはなんだ?」

王子は、口を引きつらせながらわたしに聞いてくる。

「え?えーっと……、説明が難しいですね。んーっと…、オタ、じゃない。うーん、趣味?そ、そう!コレクションです!」


「「「コレクション………」」」


なんと説明したらいいか分からない私は、棚にあったフィギュアを手に取り、

「えーっと、こだわりのある愛好家?なのかな…?このピンク色の髪の少女が好きだったんですかね?…ヤマト王は…たぶん?まぁ、好きと言っても色々だと思いますけどね?……ハハハ」

(なんて説明したらいいのよー!なんてこったー!ヤマト王オタク説!浮上!)


フォローにもならない説明を聞いた王子の顔がサーッと青くなった…。


「………」


(あー、こっちでは、まだこんな文化ないもんな…。あ、良い事考えた!)


「ちょっと、みんなわたしのの部屋に来てもらえますか?詳しく説明できると思うので」


3人は思考停止してしったのか固まったまま黙って頷いた。

私は、腕輪を壁にかざして扉を作り、みんなで秘密の部屋へと移動した。


思考停止状態から解けたマリーに、お茶とお菓子を用意してもらい。

とりあえず顔色の悪い3人には、テレビの前のソファーに座ってもらった。

この前手に入れたDVDデッキを使って実際にアニメを見せた。

なぜか日本語の文字は読めないものの喋っている言葉は通じると言う…訳がわからない矛盾した事がおこったが説明するのが楽になって助かった。


2時間後…

「……と言う事なんです。なんとなく、分かって頂けましたか?この様な物語の中の人物を好きになって、姿絵や彫刻や色んな物が商品として売られていたら欲しくなる。集めたくなるんですよ…。集めてたらあんな部屋になっちゃうんです…」

「ふむ……、興味深いものだな。このような絵が動いて話す技術も文化があるとは」

「僕も気に入りましたー!」

「お嬢様…わたしはこの続きが見たいです!」

「ふふふっ、また今度ね!」


みんなに少しは分かってもらえたみたいでホッとした。


その後アニメを気に入ってしまった3人は、ますます休憩時間に私の部屋に入り浸る様になった。


結局、日が傾きその日は、あの邸の調査は後日と行う事になり転移で帰宅した。もちろん馬も一緒に。

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