46.ヤマトの本
俺 夢見てんのかな?
気付いたら森の中にいたんだけど
今の状況が分からないからメモする。
俺の名前は 飛竜大和 22歳 大学生
さっきゲームに出て来るような魔獣?化け物を見た
マジありえねー夢なら覚めろよ
腹が減った
川沿いを歩いてたら三人の冒険者?に会った
言葉は通じるみたいだ。事情を話して行動を共にする。
どうやらここ、俺のいた日本とは違うみたい
俺 異世界転移したかも?
もう、何日目なのか忘れた
三人と行動を共にするうちに、自分に能力がある事が分かった
チートすぎて笑える
「んー…文章書くの苦手なのかな、すごく短い文ばっかり」
簡素なメモの様な…日記の様な内容だった。
この厚めのノートは、異世界転移した時に持っていた物だと思う。ボールペンで書いてあるみたい。
今の所、文字の練習だったり、ただの愚痴とかメモ書きが多めで…宝の手掛かりは何も書かれていない。
(魔法があるとかすげーって…書いてる。私もそれ思ったけどね)
やっぱり、初代国王は日本人だった。
「あの…これ国王陛下に全部解読して渡すんですか?」
「そうだな…、そこはレイチェルに任すよ」
「はい、分かりました」
ヤマト王だって知られたくない事もあるだろうし。陛下には、内容をまとめたものを渡す事にした。
(愚痴ってる初代国王とか…知りたくないよね)
ここは、王子の執務室。
今日は、王子の時間が空いた為、一緒にヤマトの本の解読をする事になった。
念の為、防音障壁の魔道具を使い執務室の会話は外に漏れない様になっている。
私は、メモをとりながら本の内容を話した。
「ふむ…レイチェル、チートとは何だ?」
隣に座る王子が興味深そうに覗き込んで来る。
「チートって言うのは、そうですね…場合によっては、不正な行為の事を言ったりしますが…これは、常識を超えた能力って事だと思いますよ」
「常識を超えたか…」
「きっと、普通では有り得ない様な能力を持ってたんでしょうね…」
「そうか、初代国王はあっと言う間に国を作ったと言われている。この城も3日で建てたそうだ」
「ふぇ?3日で?」
(それが本当なら…すっごいチートだ…)
いったいどんなチート能力何だろうか。この本を読み終わったら少しは分かるのかな?
「ああ、歴史書に書いてある。詳しくは書かれていないが…」
(…この世界には、私の知らない色んな不思議がいっぱいあるんだろうな…)
そして今…このヤマトの本は、私の好奇心を掻き立てる。
少し妄想にふけっていた私の事が気になったのか…隣の王子は、私の腰をギュッと引き寄せた。
「ひゃっ!……何するんですか?!」
「別に?…」
そう言って、ちょっと不機嫌な顔をして私の書いたメモ用紙を覗き込んだ。
「…テオ様…。ちょっと近いんですけど?本が読みにくいですよ……」
「ん?そうかな、近くないと一緒に本が読めないだろ?」
(いやいや…訳が分からない…。読めるの私だけなんだけど…?)
三人掛けのソファーは、とても広いのにピッタリと隣に座り私の腰に手をまわしたままニッコリと笑う。まぁ…いつもの事だけど…。
最近の王子は、私の向かいのソファーに座らない。ここが定位置なのだと言う様に隣に座って来る。困ったものだ…。
私は、何となくぺらぺらとページをめくってみた。白紙のページは無さそうだ。そして、最後の方のページの1文が目に入った…
「あ…」
「ん?どうした?」
『俺はある物を隠す事にした。宝探しだ!見つけてみろ!』
「って書いてますよ…」
「…っ!?」
王子は、読めない文字をジッと見つめて…眉間に皺を寄せた。
「やはり、あったのか…。それにしても、宝探し…だと?!」
王子は、顎に手を当てた。
後ろに控えているマリーとハリスさんも顔を見合わせて驚いていた。
「で、何か手掛かりは書いてないのか?」
「えーっと…」
『 静寂が包む部屋の中 喉を潤す女を探せ』
「だそうです…」
「女を…探せ?人を探すのか?…200年以上前の人物を?」
「きっと、お墓の中で眠ってますねー」
ハリスさんは、扉の側の壁にもたれ掛かりながらマリーの入れたお茶を飲んでいる。
「ハリスさんもマリーもこっちに来て座って、一緒に考えてくれない?」
「了解」「はい、お嬢様」
二人を向かいのソファーに座らせた。
「……墓を掘り返せって言うのか?…ん?レイチェル…この模様は何だ?」
「模様ですか?」
王子はそのページの一番下を指さした。
「nazonazonazonazo…………」
とローマ字で端まで書かれてあった。
(今度は、ローマ字…、なぞなぞ…そう言う事か)
「これも手掛かりですね。なぞなぞと書いてあります」
「なぞなぞ?」
「んー……言葉遊びです。言葉の中に色んな意味が隠れていたりします。たとえば、『お茶はお茶でも子供達が喜ぶお茶はなんでしょう?』とか?」
そう言えば、なぞなぞなんて今世聞いた事ない。説明する為、小学生でも分かるレベルのなぞなぞを出してみた。
「お茶か?…子供が喜ぶお茶…」
「お茶…お茶…」
王子とハリスさんは腕を組んで考えているが分からない様だ。
そんな中マリーは、何か思い付いたのか手を上げた。
「私、分かりました!「おもちゃ」ですか?」
「正解!さすがマリーね!ふふふっ」
昔から時々、会話の途中でクイズを出したりしてたからマリーにとってこの問題は、簡単だったようだ。
「なるほどな…言葉遊びか。確かに子供が喜ぶな」
「言葉遊びをなぞなぞと言います。だから、このヤマト王の言葉はなぞなぞだと言う事ですね」
(それにしても、日本語で書き残すなんて…。それもなぞなぞを出すって、どういう事?)
「よし、なぞなぞの答えを考えようか…お前達も何か思い付いたら教えてくれ」
「了解ー」「かしこまりました」
王子は、ヤマト王の言葉を別の紙に書き写した。
「どこかの部屋の中なんでしょうね。たぶん」
「静寂が包む部屋の中か…静かな部屋…書庫か?」
「まずは、書庫に行ってみますかー?」
「そうだな、何か分かるかもしれないし…行ってみるか」
さっそく4人で書庫へと向かった。
中庭を通り奥の突き当りの扉が書庫だ。
何度も通ったけれど、王城の中は、やっぱり少し緊張する。
王子とハリスさんが書庫の扉を開けるとふわっと古い本の匂いがした。
「確かに静かですね…」
「昼寝にもってこいですねー」
「おい、ハリスここでいつもさぼってるのか…?」
「まさかー」
目をそらしたハリスさんは、入り口で待っていますと手を上げた。
「喉を潤す女の人に関係するもの探してみましょう」
「そうだな」
数十分後……
「ないな…」
「本も見てみましたが…今の所手掛かりはないですね…それに、こんなに大量の本の中から手掛かりを探すとなると…何年もかかっちゃいますよ」
「書庫じゃないのか?」
「そうですね…そう簡単には見つからないのかも」
その日は、結局あのなぞなぞの手掛かりは見つからなかった。
そして、王子の公務が忙しくなり…私はその間、マリーとリズさんと一緒に書庫や礼拝堂に行ってみたけれど、どこにも手がかりは見つからない。
そして、数日が過ぎた夜…。
私は、眠れずベッドの中でスマホを見つめていた。
本は、王子が管理している為いつでも見る事ができない。だから、私はヤマトの本のページ写メって来た。
(別に王城の敷地内だし…いいよね?)
指でスライドしながら…ノートの最後のページで手を止めた。
最後のページと言っても…裏表紙の白い所に少し大きめの文字で書かれてある。
『俺はある物を隠す事にした。宝探しだ!見つけてみろ!』
と、言う文字はなぜか私への挑戦状の様に思えて仕方ない。
(なんで、なぞなぞにしたのかな…。あ、それにふりがなをふってあるって事は…子供でも分かるように…とか?あんまり、考えすぎなくてもいいのかな)
「…静かな…何も聞こえない…シーンと静まりかえった部屋?」
(シーンと?今みたいに…あ…)
「あ、分かったかも…」
私はガバッと起き上がった。
(なんでこんな簡単な事、思いつかなかったんだろうか…)
夜中だと言うのにその答えをすぐ話したくて、夜着の上にガウンを羽織ると部屋を出た。
暗い廊下を少し歩いた先の大きな扉をノックすると「誰だ?」と中から声がかえってくる。
「レイチェルです」
そう答えると目の前の扉が開いて夜着を着た王子が私を見下ろした。
「こんな時間にどうしたんだ?」
「夜分に申し訳ありません…」
私は、王子と目が合ってドキッとして…そして、後悔した。
こんな夜遅くに男性のましてや王子の部屋を訪ねるなんて…はしたない事をしてしまったと…。
「やっぱり、明日にします…」
(私バカじゃないの?こんな時間に来るんじゃなかった…帰ろう)
一礼して帰ろうとした瞬間、王子に腕を掴まれ部屋へと連れ込まれた。
「ちょ…っ?!あの…」
腕を掴んだままソファーに並んで座ると揺れた瞳で見つめてくる王子に…私の心臓がドクンとはねた。
顔の半分を手で覆った王子は、
「はぁ…まったく…君は…」
そう言うと私の両手を握って眉間に皺を寄せた。
「???」
「レイチェル…。こんな夜の遅い時間に俺以外の男の部屋を訪ねてはいけないよ?約束して?」
やっぱり、王子は怒っているらしい。
「返事は?」
「はい。約束します…」
私が素直に答えると王子はホッとした顔をして頭を撫でてくれた。
「で?何かあったのか?」
その言葉に私は、肝心の目的を思い出して王子の手をキュッと握り返した。その瞬間、王子の肩が少し震えたが私は気付かない。
「あの、『静寂に包まれた部屋の中』のなぞが解けたかもしれません」
「!!!」
王子の瞳が大きく見開かれた。
「ほんとうか?」
「はい」
「答えを教えてくれ」
「……っ」
私は、答えを言おうとして急に恥ずかしくなった。
(あれ?これ言ったら笑われるんじゃない?)
「レイチェル?どうした?」
「あの…笑わないで下さいね?」
「ん?笑う訳ないだろ?」
その言葉を聞いた私は、王子を見上げたまま答えとなぜそうなのかを説明した。
「ぷっ!フハハハ!そうか!シーンとした部屋だから寝室かっ!」
「ちょっと!笑わないで!って言ったのに…」
私は、握られていた手を離して王子の腕をペシッと軽く叩いた。
「クククッ、すまん。すまん。レイチェルの膨れた顔も可愛いぞ?」
そう言うと両手で私のほっぺたを軽くつまんだ。
「テオしゃま…やめてくりゃしゃい…」
楽しそうに私のほっぺたで遊ぶ王子を睨みつけると、謝るかのように頬を何度か撫でて、そのまま頭を撫でて来た。
「初代国王は、面白い事を考えるもんだな。寝室か…誰の寝室か分かるか?」
「そこまでは…分かりません」
「そうだよな…。単純に考えて初代国王の寝室だろうが…父上の寝室では、ないと思う。王城内は何度も改装されてるみたいだからな。調べる必要があるな…」
「そう……ですね……」
王子は私の頭を撫でながら、しばらく無言で考え込んでいた。
私は、その沈黙の間…頭を撫でられ続けて睡魔に襲われたのか、瞼がだんだん重くなっていき…そのまま意識を手放した。
「ん?眠ってしまったか…。おやすみ、レイチェル…」
王子は、自分の懐で眠る愛しい人を優しく抱きしめると額にキスを落とした。




