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41.幻想の森へ探検に

「お姉様、準備はいい?」

「ええ、いいわよ」

「じゃあ、開けるわね」


そう言って転移の扉を開いた先は、幻想の湖のほとり。

今日私達は、前に約束をしていた幻想の森に遊びに来た。


「わぁ、素敵な所ね……」

「お母様のお気に入りの場所なんですって」

「分かる気がするわ。ふふふっ」


帰国してから、姉は邸の庭のベンチで物思いにふけっている事が多かった。

でも、一週間後「私は自分磨きをするわ!」と言って私と一緒に午前中訓練をしたり、魔力操作の特訓、お菓子作りや街で買い物と充実した毎日を送っているけれど…。やっぱりふとした瞬間に…遠い空をずっと眺めていたり…。姉は気付いてない様だけどため息をつく事がとても多い。


今日は、両親が急遽視察に行くと留守にした為、気分転換も必要だと言って約束していた幻想の森に誘って正解だったと姉の笑顔を見てホッとした。


「転移できるなんてすごいわね」

「便利でしょ?ふふふっ」

「そうね。でも使う時は気を付けるのよ?」

「うん、分かってるわ」


何かあった時の為に幻想の森に出掛ける事を、マリーと姉の侍女ベルには伝えてある。姉にも先日スマホを渡して使い方を教えたし、私達は普通の令嬢より遥かに強いので大丈夫だとは思うが、何かあれば転移の扉の結界もあるし、すぐにそのまま邸に帰ろうと姉と約束した。


湖の中を覗き込んで、優雅に泳いでいる魚を眺めている姉は、とても、キラキラした瞳をしていて私は嬉しくなった。


「やっぱり、来て正解だった。じゃあ、探検しますか!」

私は、握りこぶしを上げて満面の笑みを姉に見せた。

「ふふふっ、そうね。いきましょう」


私達は手を繋いで森の中を進んで行く。姉は土いじりが大好きで自然の中にいると機嫌が良い。今にもスキップしそうな感じで繋いだ手をぶんぶん振って私を引っ張って行く。


まるで行く当てでもある様に進んで行く姉が不思議で、聞いてみる事にした。


「お姉様?どこに向かっているの?」

「え?そんなの…適当よ!探検なんだもの…」

「ふふふっ、もう、探検って言うか…迷子じゃない」

「いいのよ!迷子になったらレイチェルの転移の扉で帰ればいいわ?」


可笑しくなって二人で笑いながら小道を歩いた。



しばらく歩いた先で…横の茂みがガサガサと鳴った。


「「!!!」」


「お姉様…、何かいる?」

「ええ、そうね…。大丈夫よ。レイチェル…ちょっと待ってて」

姉が茂みをかき分けて見つけたものは…、

「まあ、見て!あんな所にコロンがいるわよ」

前に見たコロンと言う精霊の使いだった。

「え?お姉様見た事あるの?」

「ええ、私 精霊が見える様になってから、時々遊んでいるのよ?」

(それ…初耳なんですけど?)

「え?!見えるって?遊べるの?私も遊びたい……」

姉はどうして精霊が見えるようになったのか気になったけど、それより、遊べるって?すごく魅力的な言葉に私は、あのふわふわモフモフのコロンに触りたくて仕方がなかった。

「じゃあ、行って見ましょ」


姉が茂みの向こうへ行くとコロンが警戒もせず近づいてきた。

「あらあら、あなた達遊んでくれるの?ふふふっ」

「キュー!キュキュ!」

「私の妹を紹介するわね。仲良くしてあげてね」

すり寄って来るコロンを見て姉は手招きしてくれた。

私は、そっとコロンに近づくとコロンは真ん丸な瞳をパチパチして見つめてくる。

「か…可愛いすぎる」

「撫でられるのが好きみたいよ?」

姉はすでに草の上に座って数匹のコロンに囲まれて頭を撫でている。

(お姉様は…一体ルミエール国で何があったんだろう…?)


私も姉の隣に座って、そっと頭を撫でてやると「キューキュー」と気持ち良さそうに鳴いて瞳を閉じた。

「ああ、もふもふ…最高だ」

ふわふわの毛に覆われて、まるで綿菓子の様なコロンを膝に乗せて撫でまわした。

(この触り心地癖になりそう…)

「レイチェル、よかったわね」

「お姉様、ありがとう。大好き!」


「「ふふふっ」」


姉は、コロンを撫でながら精霊が見えるようになった事を話してくれた。姉は、隣国で庭師見習いをしている時に庭園でおばあさんを助けたのだと言う…。

おばあさんは、実は地の精霊王で姉は、『幻の庭園』の主に選ばれたらしい。


「幻の庭園の主…」

「そう、とっても、不思議な庭園なの。草の生えた所だったら、いつでも行く事ができるの」

姉が聞いた話では、『ここにあって、ここにない…どこにでもある』と言うのだ。それを聞いた私は、思った。

(どこにでもあるんだったら…どこにでも行けるんじゃないの?)


「ねぇ、お姉様…ここにあって、ここにない…どこにでもあるんでしょ?まるで私の転移の扉みたいね」

「え…っ?!」

姉は、それを聞いてしばらく考えている様だった。私はそれ以上質問をするのをやめた。だって、そう言う不思議な事って自分で見つけた方が楽しいからね。


コロンも満足したのかフワッと消えてしまったので、また、森の小道を一緒に歩いた。


前を歩く姉がいきなり立ち止まると…、目の前の地面が盛り上がり


 ポコン! とスライムの様な生き物が飛び出して来た。


「ひゃ!危ない!」

私は、驚いて姉を庇おうとしたが、姉はその生き物を抱きしめた。

(…え?)

「アリエル様ぁぁぁー!」

「ミプル?…どうしてここに?」

(ん?ミプル?…てか…しゃべった?)

なんだろう…一体何が起こっているのだろうか?


「お姉様?その生き物は……?」

「ああ、この子は地の精霊の使いなのよ」

「え?」

ミプルと言う精霊の使いは、ぴょんぴょんと地面に降りると少し俯いて、礼儀正しく挨拶をした。

「はじめまして、ミプルと申します」

「はじめまして、妹のレイチェルです。お話しできるなんて…すごいわ」

私はしゃがんでニッコリ笑った。

ミプルは、喜んでいるのか身体をぷるぷる震わせて頭のふたばの葉をぴょこぴょこさせた。

(わぁ…ゼリーみたい…)


「それで?庭園で何かあったの?」

「いえ、今日は別のお使いで来ました」

「別の?」

「はい、実は……神獣様がレイチェル様にお会いたいそうです」

「「え?!」」

驚いて…姉と顔を見合わせた。

(神獣様?…)


「神獣様は、この森の奥に住んでおられます。そして、あの幻の庭園にも近いのですよ」

「そうだったのね…」

「でも、私に会いたいなんて……」

(まさか…無断でこの森を探検したのがいけなかったの?)


「神獣様は、直接会ってお礼を言いたいそうですよ?」

「お礼?あ…まさか」

(前世で助けたと言う神獣様の事だろうか?)

「レイチェル?心当たりがあるのね?」

「はい、前世で…ちょっと」

「じゃあ、行かないといけないわね。ミプル、案内してくれる?」

「はい、かしこまりました。着いて来てくださいね」

ミプルは、ぴょんぴょんと森の小道を進んで行く。

「レイチェル、大丈夫よ。行きましょう」

「はい、お姉様」


姉は、肩をポンと叩くと私の手を引いて歩き出した。姉はいつも決断力があって頼もしい。三年間の妃教育をやり遂げて帰って来た姉を見習わないといけないと思いながら後をついて行く。

しばらく歩くと大きな大木が2本立っていて、周りはいばらの茂みが覆っている。ミプルはその大木の間で立ち止まった。


「神獣様ー!おつれしました」


少しの静寂の後、目の前のいばらの蔓がズズ…ズズズと動き出しアーチを作った。


「「…っ!!」」


しかし、前に幻想の森に入る時のアーチに比べて…暗く長いトンネルになっていた。

(なんだろ…向こうが見えない…?)

「………」

「さあ、行ってらっしゃい」

姉は私の背中を押した。

「え?お姉様は?」

「神獣様は、レイチェルに会いたいと言ってるのよ?大丈夫、ここでミプルと待ってるわ」

(そうよね。ひとりで行くのは心細いけど…私も会ってみたいし)

「はい、分かりました。行ってきます!」


私は笑顔で姉に手を振って、トンネルの中を進んだ。


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