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40.姉が帰国しました

二日前、姉と一緒に帰ると父からの連絡があり、今日は朝から使用人達が慌ただしく働いていた。


母もそわそわして落ち着かないのか、なぜか私の秘密の部屋でチョコレートケーキを食べている。チョコレートを食べると心が落ち着くらしい…。

(それにしても、チョコレート好きなんだな…もう、ケーキ三個目なんだけど…)

パクパクとケーキを食べる母を見ながら、本を読んでいると…


コンコン

「お嬢様、伯爵様達が戻られました」

と、マリーの声がした。

それを聞いた母は、すっと立ち上がると足早に部屋から出て行った。

私もその後を追って玄関まで行くと、入口の扉の前で苦笑いしている父と、母に抱きしめられ、ちょっと苦しそうにしている姉の姿が見えた。


「ただいま、レイチェル」

姉は私に気付いてにっこり笑うと今度は、姉が私に抱きついてきた。

「おかえりなさい!お姉様」

3年ぶりに見る姉は、とても美しくなっているのにすごく疲れた顔をしていた。

「お姉様すごく顔色が悪いわ?長旅で疲れたのね。大丈夫?」


「ううん、大丈夫よ。今からお父様とお母様に色々報告しないといけない事があるから、また後でお話しましょうね」

優しく微笑んだ姉は、両親とともに足早に二階へと階段を上がって行ってしまった。

(何があったのだろうか…?)


どうやら、第三王子の誕生日の舞踏会でトラブルがあり、結局妃は決まらずに終わったらしい、しばらく、療養をする事になった様だ。



その日の夜、


コンコン

「レイチェル、ちょっといい?」

「お姉様?どうぞ入って」


姉は部屋に入ってくるとベッドで本を読んでいる私の横に座ってニッコリ笑った。


「もう3年になるのね…。あんなに子供っぽかったレイチェルがこんなに綺麗になって…一緒に居られなかったのが悔しいな…」

「お姉様…私もです。手紙も書けないし…寂しかった」

姉は、私の頭を優しく撫でてくれた。

「あなたも、私がいない間に色々あったのでしょ?」

「うん、お姉様も大変だったんでしょ?すごく、疲れているもの…」

「そうね…全部話すと長くなるわね。ふふふっ」


それから、お互いにあった事を話す事にした。姉は、隣国で妃候補達との陰険な争いに疲れた事、王子は、とても良い人で色々助けてくれたらしい。舞踏会で騒ぎになって結局、妃は選ばれず妃候補は全員家に帰される事になったのだと言う。


「そんなの、いじめじゃない…ひどい許せないわ!」

姉は、他の令嬢達に嫌がらせや、ドレスを汚されたり、罵倒されたりしたらしい。


「そうね…許せることじゃないわね。でも、みんな厳しい妃教育に疲れてしまって、みんな妃になりたいから必死だったのよ。私は別だけど、地味で病弱なフリして正解だったわ」


姉は、隣国へ行く前に変装した姿を見せてくれたのだけど、どこからどう見ても姉には見えないほど完璧に変装してあった。髪は赤茶色に変え三つ編みに編んで、前髪は鼻先まで伸ばして瞳を隠し、化粧で青白い顔をして今にも倒れそうな程だった。もちろん、ふくよかな胸もぺったんこに、あの両親のポカーンとした顔を思い出すと未だに笑ってしまいそうになる。


「辞退して帰って来たらよかったのに…」

「それが、辞退するほどの事をされなかったのよね。まぁ、最後の方は、ひどかったけど…」

「え?何があったの?」

「ちょっと、今は話せないのよ。舞踏会の事もだけど箝口令がひかれてるから…。解決したら話すわね」

「はい、お姉様」


「じゃあ、次はあなたの番ね」

姉は、私の手を握ってにっこり微笑んだ。

「はい、お姉様が隣国へ行ってから、しばらくして…」

私は、婚約を拒否された事、スキルや自分には秘密があった事、またテオドール殿下が現れてからの事を話した。


「そうだったの…。レイチェルが小さい頃から不思議な事を言っていたのは、それでなのね。それにしても、あなたも大変ね…私と同じで王族に関わったばっかりに…」

「そうなの、思わせぶりな態度はこりごりよ…」


この前も…スキンシップが多くて困ってしまった。スマホを渡して帰る時なんて特に…ずっと、抱きしめられたまま、離してくれなくて「帰りたい」って言っても「もう少しだけ」って…。結局、一時間そのまま過ごした。はじめのうちは、妹が欲しいのかな?と思う事にしていたけど…流石の私もおかしいと気づいてしまう。

(仮の婚約よね?テオ様に好きだとも言われていないし?なんなの?たらしなの?何考えてるのかな?)

考え出したら切りがない…。


「分かるわ!そうなのよ。肝心な事は全然言ってくれないし…。曖昧で思わせぶりで…どうしたらいいのか分からなくなるのよね…」

「私もそう思う…」


姉も隣国で王子から同じような目にあっていたのだろうか?私はこの3年間、姉に手紙を送れなかった。たとえ妃候補とは言え隣国の伯爵家の娘である為、情報漏洩に厳しく父との手紙のやり取りですら許されなかった。姉の安否は、側に仕えている侍女のベルがたまに街へ買い出しに出た時に簡単な現状報告を送って来るだけだった。


「まぁ、やっと、自由になった事だし?しばらくは、療養しなさいって言われたけど。これから家族と過ごせる事が一番嬉しいわ」

「療養も長くなると暇なのよ?私 経験者だから」


「「ふふふっ」」


「実はね…お父様達には話してないのだけど…私、王城の庭師の見習いをしていたのよ!楽しかったわ!この事は内緒よ?」

「うん、分かってるわ。やっぱり、お姉様の土いじり好きは昔から変わらないわね。ふふふっ」

「これでも、少しは我慢したのよ?でも、お部屋の目の前が素敵な庭園なんですもの…」


姉との会話は止まらず、そのまま二人で眠くなるまで話をして一緒のベッドで眠った。


その後、姉に自分のスキルや加護を見せるとすごく喜んで、今度、両親には内緒で幻想の森に遊びに行こうと約束をした。


次の話は、数日おいて投稿します。

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