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33.お見せします

私は、テーブルの上に用意されていた書類にサインし、王子はその書類を護衛のハリスに渡すと、

「レイチェルのスキルや能力を見せて欲しい」

と、頼まれた。もう隠す事のなくなった私は、コクリと頷いた。



「はい。では、お見せしますね」

私は、何から見せたらいいのか考えた…。

(確か、あの部屋が見たいって言ってたけど説明するのが難しい…でも、隠せないし話すしかない)


いつもの壁の前に立った私は、左手の腕輪を前にかざした。すると、腕輪が光りフワッと白い扉が現れた。

「…っ?!」

王子は、無言で目を見開いてその光景を見ていた。

「これが、あの時の部屋です」

「あ、ああ…これが扉のスキルか…」

「……いえ、これは扉スキルとは少し違います」

(女神の加護だもんね…スキルと関係あるとは思うけど…)

「ん?…違う…とは?」

「ご説明は後でしますので、よかったら部屋の中へどうぞ?靴は入り口で脱いでくださいね」

「ああ、わかった」

私は扉を開けると靴を脱いで先に部屋に入った。王子も同じように入室しすぐそばのソファーに座った。マリーは、いつもの様にこちらの部屋にもお茶を用意しハリスと一緒に扉の側に控えている、王子とハリスは、見た事もない物であふれるこの部屋を見まわした。


「細かく話すと長くなるので簡単にお話しますね…。この部屋は、少し特殊で女神様から頂いた加護です」

(スキルだって誤魔化せばよかったかな…でも、あとで説明するのもめんどくさいしね)

「!!!」

王子は、ポカーンとした顔を一瞬見せたが顔を作り直した。

「…女神様の…加護?」

「はい。信じて頂けるか分かりませんが…前世で色々あって女神様にお礼として頂きました。この部屋にあるものは、八割は前世の物、二割は、持ち込んだ物と私が作った物です。この世界にはない便利なアイテムや娯楽アイテムを揃えた…私の秘密基地?みたいなものですね」

王子は、前に腕を組んで少し考えた後、

「そうか…わかった。俺は信じるよ」

と、言ってほほ笑んだ。

(信じてくれるの?本当に?…嘘だと思わないの?…)

私は、自分で話していて思った。知り合ったばかりの人が簡単にこの話を信じる事ができるのだろうか?

「………」

私が疑う様に王子を見ると、いきなり王子は笑い出した。

「くっ!フハハッ、そんな目で見ないでくれ。膨れた顔も可愛いがな」

「私の…嘘だと疑わないんですか?」

「そうだな…確かに信じられないような話だが…。視察で散々信じられないようなものを見て来たからな…。船乗りの病、ルピナス、せっけん工房、冷凍倉庫、公園、他に色々見て来た。全部レイチェルの提案だろ?」

「…そうです」

「すべて領民の為、人の為に考え、とった行動だな。そんなレイチェルの事だ女神様も感謝したのだろう。大丈夫だよ。俺はレイチェルを信じるよ。まぁ、細かい事はおいおい聞くとして…。ちょっと、この部屋を見て回ってもいいかな?」

「はい、どうぞ」

王子は、ちゃんと視察して私のしてきた事を知っていた。その事が嬉しかった。

ソファーから立ち上がった王子は、辺りを見渡し気になった事を私に質問してくるので説明しながら王子の後ろをついてまわった。


「この箱は?」

「それは、冷蔵庫ですよ」

「厨房にある。あれだな?」

「はい」

王子は、扉を開いて中を覗く。まだ、作ったばかりの冷蔵庫には少しの果物しか入っていなかった。

「この下は冷凍庫になっています」

「冷凍庫…」

私は、冷凍庫の扉を開けて見せた。ひんやりした冷気が辺りに漏れた。

「ふむ……すごく冷たいな。ん?これはなんだ?」

王子は、冷たいガラスの器を手に取った。

「あ…それは、ちょうど今日作ったアイスクリームです。食べてみますか?」

「アイスクリーム?」

今朝、ダミアンが新鮮なミルクが入ったと言うのでマリーと一緒に作ったものだった。

「美味しいですよ?食べてみますか?」

「ああ、頂こうか」

ソファーに座った王子は、冷たいアイスクリームをスプーンですくって口に運んだ。

「………」

「あの、甘い物嫌いでしたか?」

私は、何も言わない王子を見て口に合わなかったのかと少し心配になった。

「いや、すごくうまいな。冷たくて口の中でふわっと溶けて…いくらでも食べられそうだ」

王子は、嬉しそうに笑った。

「良かった。ふふふっ」

アイスクリームをとても気に入ったらしく…滞在中毎日食べたいとお願いされた。


「それにしても…不思議な部屋だな。…すごく居心地がいいな」

「そう言ってもらえると嬉しいです」

王子は、触り心地が良かったのか側に置いてあった白いうさぎのぬいぐるみを膝の上に乗せ撫でていた。

「…っ!」

(…殿下…その姿は…反則ですよ)

私は、こっそりスマホ取り出して写メった事は言うまでもない。


「………」

「レイチェル?そろそろ、扉のスキルも見せてくれるか?」

「え?はい、わかりました」


私は、手を前にかざし「インベントリ」と呟いて小さな扉を出し説明すると、王子は少し驚いたが腕を組んで「便利だな」と笑った。

「次は…創造の扉なのですが…お見せするには、時間がかかるので」

「創造の扉?」

「はい、さっきの冷蔵庫もそうですね。私が作りました」

「ん?え?あの冷蔵庫…レイチェルが作ったのか?」

「そうです。扉に関係する物を作成する事ができます」

「……それはまた、特殊な…スキルだな」

私は、部屋にある自分が作った物、炊飯器、キッチン、テレビなどを教えると王子は腕を組んで、

「これは…発想力が物を言うスキルだな…」

と言って考え込んだ。

私はただ前世であった物を創造してるだけだ…今世魔法もあるんだから、もっと不思議な物も作れそうだけど、今度兄が帰って来たら詳しく魔道具の事聞いてみようと思う。


「他にもスキルは、あるのか?」

「はい、じゃあ、次は靴を持ってくださいね」

「靴を?ああ、分かった」

(どこに行こうかな…森の空き地でいいかな?)


私は、壁に手をかざし 「 転 移 」 と呟いた。手が光り白い扉がフワッと現れた。

「ん?!今…転移と言ったか?!」

王子は目を丸くして驚いている。ハリスも同じ顔をして固まっていた。

「そうです。じゃあ、行きますよ」

扉を開いた先には、高い木に囲まれた空き地があった。4人は靴を履いて空き地に出る。

「転移か…すごいな。まいった…驚いた」

王子は、私の頭をポンと撫でて笑った。

転移の扉の説明をした後、空き地でいつもしている魔法訓練を見せたり他愛もない話をして部屋に戻った。


「レイチェル」

「はい」

「今日見たものはすべて秘密にすると誓う…。これから君は俺の婚約者だ。大切に君を守るから安心して欲しい」

そう言うと王子は、私の手をキュッと握って微笑んだ。

「はい。ありがとうございます」

王子は、夕食で呼ばれるまで私の部屋で過ごし、

「じゃあ、また後で」

と、優しく笑うと部屋を出て行った。

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