21.扉スキルは万能でした
先日、兄は王立学園に入る為 王都の邸へと向かった。
見送りの日に兄は、「僕がレイチェルに相応しいか見てくるよ」と不敵な笑みを浮かべ意味不明な言葉を残して行ってしまった。
いったい何の事だか分からないけれど、兄がいなくなり寂しく思っていたのもつかの間…
母のスパルタ指導がはじまり、護身術も習いだした。
(私……誰かに襲われるの?)そう思いたくなる程、母は真剣に教えてくれている。
魔法は、魔法制御を訓練中、二度とあの様な暴走した魔法を使わない様に誰かをケガさせてからでは遅い。
最近(私の魔力量底なし?まさか、チート?)なんて思った時もあったが、先日、母のスパルタ訓練で枯渇を経験し魔力量が多いだけで底がある事を知った。
母曰く
「自分の限界を知る事は大事!」だそうです。確かに!
「ああ…マリーの入れてくれるお茶は身体に染み渡るわ。おいしい」
午前中の指導が終わり昼食後の冷たいハーブティーが身体を癒してくれる。
「ふふふっ、お疲れ様です」
「マリーもお疲れ様、私と一緒に護身術の指導受けてたのに息切れすらしないんだから、流石ね」
「そんな、お嬢様を守れるように、もとから体術の鍛錬をしておりますので」
「頼もしい侍女ね。私なんて筋肉痛で歩くのもきついのに……」
先日、マリーにも秘密を打ち明けた、信じて貰えないかと思っていたら、
「お嬢様、私は信じますよ!小さい頃から面白いお話をたくさん私にしてくださいました。納得いたしました」
なんて言われて拍子抜けしてしまった。小さい頃から無意識のうちに前世の事も話していたらしい。
(お母様もそんな事を言っていたし、ああ、子供の頃の私の口は何を言ってたの?)
打ち明けた事でいい事もある。スキルの能力を調べる為あれこれ試すのも一人では限界があったからだ。マリーと秘密を共有できた事でスキルの能力を色々知る事ができた。あの部屋には、私が認める人しか入る事ができない。扉から半径1メートルは結界が張ってあり魔法や物理攻撃は弾かれる。本当に聖域の機能がついていた。使いようによっては、自分の身を守る事ができる。
最近挑戦し始めた事がある。
それは、『転移の扉』
午後からはマリーと二人で何度も転移ができないか試す時間。
もし成功すれば移動も楽になる。宮廷魔術師の中には、魔法陣を使い転移魔法を使える者がいると言う噂だが(マリー情報)定かではない。
「じゃあ、マリーの部屋に転移するわ」
「はい、じゃあ、私は部屋で待っていますね」
マリーは、自分の部屋へ足早に向かった。
このセリフ何度目だっけ…と思う程、最近言ってる会話だ。
「よし。マリーの部屋をイメージして……」
右手を前にかざして、 『 転移 』 と、呟いた。
手が光って、白い扉がフワッと現れた。
(今度こそマリーの部屋に繋がっていますように……)
何度も何度も試してきたが、扉の先は壁だったり真っ暗な怪しい空間だったり、半分現れて消えてしまう時と扉すら現れない事もあった。
そう簡単には習得できないのだろう。
何度か白い扉が現れた事を考えると転移の扉は存在するのだと思う。
不可能ではないはず、今回はイメージがしやすい様にマリーの部屋まで行って部屋の様子を目に焼き付けて来た。
(おねがい!マリーの部屋につながって!)
私は、ゆっくりドアノブを握り扉を開けた。
その先には……
「「!!!」」
マリーの姿があった。
「マリー!やったわ!成功よ!」
「やりましたね!おめでとうございます!」
二人で抱き合って喜んだ。
それから、何度も転移を試してみたが、どうやら行った事がない所には繋がらないらしい。
魔力を手に集める量も関係しているのか、この感覚を覚える必要がありそうだ。
まずは散歩と言って内緒で出掛け、邸の自分の部屋まで転移できるか確認した。
もちろん、人のいない所を選んで試している。今のところ遠距離でも問題なく扉は発動し、成功率はほぼ100%に近い。
(転移の扉は、習得したと言っていいわね。転移ができるのであれば…次は…)
私は、ノートを開きメモをとる。
(そうよ。なんでも扉にすれば…道具だって作れるんじゃないの?)
メモをとっては、スキルを試すを繰り返した。
結果、『スマホ』が完成した。他にも数種類のスキルを完成させ、私はこの事を両親に報告する事にした。なぜ報告するのかと言うと「隠し事はするな!」ときつく言われたからだ。
私は、父の執務室に母も呼んで説明する事にした。
「は?!転移ができるようになった?!」
父は、すごく驚いていた。「これは大変だ」と口に手を当て呟いている。
「すごいわ!どこへでも行けるわね」
「それが…、どこへでもは無理なんです。わたしが行った事のある場所だけみたいで」
「それでも、十分すごいわよ!」
私は、執務室と自分の部屋とを繋ぐ白い扉を作って見せた。
「「!!!」」
両親は、扉の先がレイチェルの部屋である事を何度も確認した。
「…レイチェル、このスキルは安易に人の前で使わない様に…いいな?」
「はい、気を付けます。お父様…それから、これを」
私は、スマホを父と母に手渡した。
「これは…なんなの?小さな扉みたいだけど…」
私の作った『スマホ』は、画面の待ち受け画像が扉の絵になっている。
通話、メール、撮影、録音、録画機能を付けてある。
ちなみに一台作るのに1日かかる代物だ。魔力充電で使用する仕組みだ。
この物を作るスキルを、『創造の扉』と名付けた。
作れる物は、扉に関係のある物だけ、魔力も結構使う為、魔法訓練のない休日にしか作成できない。
(ずっと、欲しかったのよね。これで、いっぱい写メを…撮れる!)
「これは、『スマホ』と言います。お父様、お母様 まず、その扉に手の平を置いて魔力を流してください」
「ん?…こうか?」「わかったわ」
魔力を送られたスマホは、一瞬パァーっと光って元に戻った。
「それで登録は終わりです。では、使い方を説明しますね。これは遠く離れた人と通話ができます。他にも機能があるので説明しますね」
「「!!!」」
両親は、手に持ったスマホをジーっと見つめた。
私は、自分のスマホを取り出すと着信の取り方を教えた。
「通信が来たら小鳥のさえずりが聞こえます。扉に名前が表示されたら…指で、こう…横にスーッとなぞって、扉を開けて下さいね。開いたらスマホを耳に当てて下さい。わたし今から自分の部屋に戻ってお父様とお母様に通信しますから」
「わかった」「ええ、わかったわ」
未だ両親は、半信半疑の様だ。
着信音を小鳥のさえずりにしたのは、他の知らない人達に違和感を与えない為。もちろん、無音にする事ができるようになっている。
さっそく、自分の部屋に戻った私は、二人にグループ通話をかける。
『ピッ、ピチュン、ピチチチチッ』
「「!!!」」
両親は、言われた通りにスライドし、画面の扉が開いたのを見て、スマホを耳にあてた。
『もしもし?お父様、お母様、聞こえますか?』
「「!!!」」
「ああ、聞こえるぞ」「聞こえるわよ!」
スマホから娘の声が聞こえて来て両親は、すごく嬉しそうに笑った。
『これがあれば、どんなに遠くにいてもお話ができますね?いいでしょ?このスマホ』
「ああ、すばらしいな」
「ええ、ルーカスとアリエルにも持たせたいわ」
『大丈夫です。お母様!ちゃんとお兄様とお姉様のスマホも作る予定です。あ、他の説明もしたいのでそっちに戻りますね。通話を終わる時は、扉をまた、スーッと横に閉じて下さい』
「ああ、わかった」「ええ、わかったわ」
通話を終えてしばらくするとレイチェルが執務室へと帰って来た。
「レイチェル、よくやった!だが、このスマホを所持するのは、レイチェルの秘密を知る者だけにしてくれ」
「はい、分かっています」
「他には、どんな機能があるの?」
「あ、そうでした。それはですね…」
私は、他の機能についても説明をした。両親は、少し困惑しながらも私と一緒にスマホを操作して質問をする。
「ふむ…この機能は、実にすばらしい」
「ええ、撮影を使って思い出を残せるわね」
「そうですね!あ、お父様とお母様を写メってあげます!」
「しゃめって…?」
私は、スマホを構えると二人の姿を画面に映した。
「あ、もう少し近づいて…。じゃあ、このスマホを見て笑ってくださーい!」
両親は、言われるまま笑顔を作った。
ポチッ
「はい、撮れました。メールで送るので保存してくださいね」
送られて来た画像を見た二人は、ボッと顔を赤くした。
「素敵ね。これ大事にするわ」
「ゴホン…そ、そうだな。ソフィア」
(うわぁー、うちの両親ラブラブすぎだわ…)
それから、他にも数種類のスキルを披露した私は両親の元を後にした。
レイチェルが出て行った執務室で、両親は話し合った。
「今度は転移にスマホに…他にも色々…。レイチェルの能力は、底が知れないな……だからと言って隠す為にその才能を摘んでしまう事はしたくない」
「そうね、この能力は、あの子を守ってくれるはず大丈夫よ」
「それにしても、最近レイチェルに茶会や婚約を匂わせる手紙も届いている。誤魔化してはいるがな…」
「ええ…船乗りの病の件以降、わたしが出向いたお茶会でも少し噂になっていたわ」
「ふむ…できるだけ目を離さない様にして、手に負えない様なら殿下に一度相談するのもいいのかもしれん」
二人は、レイチェルが出て行った扉を見つめた。




