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20.隠し事できません

青い空 白い雲、そして、ここは戦闘訓練所!


辺境の地を守る為、クローズ領の辺境部隊が毎日ここで戦闘訓練を行い日々鍛錬している。


今日は先日言っていたスキルの成果と同時に魔法属性を調べる為、戦闘訓練所に来ていた。

もちろん、母も兄も一緒だ。


しかし、隊員達が訓練を行っている為、家族以外にバレる訳にはいかないと判断した私は父にスキルだけは邸で見せたいと頼み込んだ。父も了承してくれた。


魔法練習場へとみんなで移動し、父が私の肩を叩きにっこりと笑った。

「じゃあ、さっそく手本を見せようか」

私の心臓はドキドキしっぱなしだ。

攻撃魔法を見るのは、はじめてだったからだ。


「じゃあ、はじめようか」

「お父様、よろしくお願いします!」


「では、まず魔法の使い方だな。基礎は、習ったな?」

父は、人差し指を立てると指先に炎をポッと灯した。

「はい、習いました」

私も同じように炎をポッと灯す。

その様子を見た父は、嬉しそうに笑うと、

「よし、じゃあ、今度は、前に手をかざすんだ。そして、身体の中の魔力を手の平に集中させ、頭の中で使いたい魔法を想像して放つんだ。こんな風に」


父の右手からこぶし大の炎の玉が放たれ大きな的に当たった。

『 ボンッ 』

(わぁ!本当に魔法だ!)

「すごいです!」

「これは、初歩だから訓練さえすればできる様になる。じゃあ、レイチェルもやってみてくれ」

父は少し照れているようだ。

「はい、やってみます!」

右手を前にかざして、深呼吸した。

ふぅ…

(扉を出す時と同じ。魔力を右手に……集めて、んー…どのくらい集めるのかな?)

『ゴゴゴゴゴッ』

「ふぇ?!」

いきなり、目の前に父の5倍はある大きな炎の塊が現れた。

「おい!レイチェル!やりすぎだ!魔力を流すのを止めろ!」

父の叫ぶ声が聞こえた。

「え?わぁ!」

(そんな事言われても!ど、どうしよう。怖い!)

父は、私の右腕を背後から支えると、

「いいか?レイチェル 落ち着け…その炎の塊をあの的に当てる様に想像しなさい」

「はい!」

『 ゴォォォォ!ドゴーン! 』

放った巨大な炎の塊は、的を消し炭にし地面が大きくエグれてしまった。


「「「!!!」」」

「す、すごいな……流石に、これは驚いた」

「僕も、びっくりしました……」

「レイチェル、ケガはしてないわね?」

「はい。大丈夫です………」

はぁ、怖かった…。


遠巻きに見ていた隊員達も驚いて訓練の手を止めている。

「そうだな……このままでは、騒ぎになりかねない。人がいない所に移動するか」

「そうですね。僕もその方がいいと思います」

(あれ?なんか大変な事になって来たような…)


それから、邸の裏の森の中にある広い空き地で再度魔法属性を調べる事になったのだが、6属性中全部同じ威力で魔法が使える事が分かった。

(魔法…チートだった……どうしよう)


「大変な事になったな……」

「そうですね……」

「どうしたら、いいのかしら……」

三人の深刻な顔を見た私は焦った。

どうやら、全属性持ちは、めずらしく…今までに国に数人いた記録しかないらしい。


「あの、私は、今まで通り普通の令嬢でいたいのです。どうか、この事は……」

「ああ、分かっているよ。可愛い娘を国に取られてたまるか」

「え?国に取られる?」

私は、眉間に皺を寄せた。


「国に知れたら、理由をつけて迎えに来るだろうな。全属性持ちなんてほっとく訳がない」

「そうな…」

戦争要員として使い潰されるとか?考えたくないけど、国に使い潰されるのは嫌だ!

「噂だけど、第一王子が有能な者を集めているらしい。側妃候補を選んでいるんじゃないかと言われているんだ」

「…っ!」

兄が王都から来た商人から直接聞いた話らしい。

第二王子の次は、第一王子なんて…たまったものじゃない!

色々考えるうちに私の顔は青ざめていった。


「大丈夫よ!レイチェル。私達が何があっても守るわ!とりあえず、の属性は火属性にしましょう。先程、隊員達に見られたわ。それでいいわよね?ジェイク?」

「ああ、そうだな。そうしよう。あとは、邸に帰って考えるか、レイチェルのスキルの事もあるからな……」

「そうですね。僕も邸に帰って一度落ち着きたいですね」

「じゃあ、帰りましょ」

「はい、お母様」


ちなみに、空き地は地面がエグれて大変な事になっているけど、後で魔法で直しておくから大丈夫だと母に言われて安心した。

って事は、何度もこんな事になってるって事かな?

…もしかしたら、うちの家族はみんなすごいのかもしれない。





邸に戻った4人は、談話室でお茶を飲んでしばらく休憩した。


「レイチェルそろそろ大丈夫なら、スキルの成果を見せてくれ。場所はこの談話室でいいのか?」

「はい、大丈夫です。では、お見せしますね」

(とうとう見せる時が来てしまった。じゃあ、収納から)


3人の前で手を前にかざし、『収納』 と、呟いた。

手が光り小さな扉がフワッと空中に現れた。


「「「!!!」」」

三人は、見た事もない光景に驚いた。

「収納?」

兄は、首を傾げる。

「はい、イメージする為の言葉です」

(…ゲームしてたら分かるんだけど…説明難しいな…)

「なるほど、収納…これは、空間魔法か?」

「扉の中は、どうなっているの?」

「これは、『収納の扉』で、中は異空間になっていて沢山の物が収納できます」  

扉を開け暗い空間にティーカップを入れて見せた。

「まさか、魔道具の魔法カバンと同じなのか?!」

兄が目を見開いた。

「そうなのですか?わたし魔法カバンは良く知らないけど、この中は収納量に制限がなく食料も腐りません」

(この前、邸の裏の池の水を入れて試したら全部入っちゃったんだよね…もちろん、元に戻したけど)

「…これは、商人が喉から手が出る程欲しがるな……」

父は、腕を組んで扉を見つめた。

母は、期待した顔でニッコリと微笑んでレイチェルを見つめた。

「あんなにこもって研鑽していたのだから、これだけではないのでしょ?」

確かに、これだけの為にひきこもっていたのはおかしいと思うのは当たり前だ。

母はするどい。 

「はい、もう1つあります。これは、前世の記憶と関係があるものなので、あの、絶対に秘密にしてください」

「分かった。約束しよう」

3人が頷いてくれた。



「それでは、お見せしますね」

私は、談話室の奥の壁に左手の腕輪をかざし呟いた。

『ルーム』

腕輪が光り白い扉がフワッと現れた。


「「「!!!」」」

3人は、また好奇心の目を向ける。

さっそく、ドアノブを回して扉を開き、部屋入り口を指さして説明した。

「中に入る時は、靴を脱いで入って下さいね。靴は、この棚に置いてください」

やっぱり、部屋の中は裸足が一番落ち着く。

私の部屋なんだから、みんなにはこのルールに従ってもらわないとね。

「ああ、わかった」

3人は言われた通り靴を脱いで中へ入った。


「部屋を裸足で歩くなんて、面白いわ。ふふふっ」

「ここは?……普通の部屋の様だが。様式の違う変わった部屋だな」

床に座る習慣は、ないもんね…。座椅子なんて見た事ないはずだ。

「そうね。見た事もない物ばかりあるわ……」

「なんだろ?僕は、この文字見た事もないですよ。それに、紙が上質で…」

「本当だな…どんな加工を施してあるんだ…」

父と兄は、本棚に並んだ本を数冊ペラペラとめくった。


私は、ショッピングで見つけた前世の漫画と小説を数冊購入していた。

私にしか読めないし、この部屋から持ち出せない。架空の物語は、こちらの世界には干渉しないと判断されたのだろうか?理由は、分からないが商品一覧に普通に載っていた。


「この部屋には、前世の世界の技術で作られた物が置いてあるんです。文字もその世界の言葉で書かれています。このノートパソコンと言う道具で購入したものです。ここで言う魔道具でしょうか?」

(分かってもらえるかな?)

兄が、魔道具と言う言葉を聞いて目を輝かせた。

母は、不思議そうにノートパソコンを覗き込む。

「この道具を使ってどうやってお買い物ができるの?」

「じゃあ、試しに何か購入してみますね」

私は、商品一覧から板チョコを一枚購入した。

すると目の前のテーブルに板チョコがフッと現れ、母は驚いて口を押えると恐る恐るその板チョコを手に取った。

「不思議ね…」

「私もはじめは驚きました。良かったらそのチョコレート食べてみてください。美味しいですよ」

母は、包装紙をめくると一口食べて美味しい顔をした。

そして、チョコレートを食べながら、ふと何かを思い出したのかチョコレートをテーブルに置くと私の方を向いて口を開く。

「レイチェル」

「はい」

「あなた扉を出す時に、その左手の腕輪をかざしたわよね?その腕輪どうしたの?」

「…っ!」

ああ、やっぱり…、装飾にうるさい母の事だ。

腕輪に気が付くよね…。

どこで手に入れたのか聞かれるのが嫌でいつも使わない時は、ポケットにしまっていた。

(どうしよう…いっそ、本当の事を言うべき?)

「ちょっと、腕輪見せてもらっていい?」

「あ、はい、どうぞ」

母は腕輪を受け取ると両手に乗せてジッと腕輪を見つめている。

お母は鑑定能力でも持っているのだろうか…?

「………」

「レイチェル…この腕輪、神聖な物を感じるのだけど…。それに、この細かい装飾は普通の細工師では、作る事ができないわ」

確かに、幅の広い腕輪の細工は、複雑で細かく鍵模様の真ん中に嵌め込まれた魔石は、オパールの様に角度を変えると虹色に光った。

「…っ!」

それを聞いた父と兄は、驚いて本を閉じると黙って振り返った。

(うーん…)

「レイチェル!」

母は、眉間に皺を寄せ、いきなり私の頬を両手で挟んだ。

「はぅ?!」

「洗いざらい全部話しちゃいなさい!まだ、あなたが何か隠してる事は何となく分かるの、わたしの大事な娘なんだもの…」

私は、観念した。

「こ…この腕輪は…女神様から…頂きました!」


三人はその場で固まってしまった…。

しばらく沈黙の時が流れた…。


母は、頬を挟んでいた手を少し緩め、静かに口をひらいた。

「女神様から?」

「はい、わたしが前世で神獣様を助けたお礼に女神様から加護を頂きました。その加護がこの部屋です。腕輪はこの部屋の鍵です」

「………」

(…あれ?みんな…反応がない。この話に引いてない?)

私は、不安になって俯こうとしたが、母の手がギュッと挟んでそれを許さない。

(!!!)

「で?他には?」

「ほぇ?」

「他には、ないの?隠し事」

「ないです。全部話しちゃいました」

母は、顔を挟まれ目をパチパチさせる私を今度はギュッと抱きしめた。

「…っ?!」

「はぁー…やっと、やっと全部聞けたわ。ジェイク、ちゃんと聞いてた?」

「ああ、聞いていたよ。ソフィア」

(うん?何だろう…これは?え?)

まるで両親は示し合わせた様に会話をしていて、私は不思議に思った。

「ふっ!くくっ、レイチェル、不思議そうな顔してるね?父達はね。ずっと前から知っていたんだよ。レイチェルが何か隠している事を」

兄は、嬉しそうに笑う。

「え?!」

「レイチェルの部屋に見知らぬ扉がある事も、その左手の腕輪の事も、スキルが使える様になっている事も、まぁ、細かい事は分からなかったから、レイチェルが話してくれるのをずーっと待ってたんだ」

「そんな…」

(あ…そうか)

昼間にルームに籠る事増えて、マリーにも一人にしてッて言ってあった。他の人が部屋を訪ねて来ても分からないし不自然な扉に気付いてもおかしくない。腕輪だっていつも部屋で着けてた、スキルは…まさか、池の水抜いたの見られてた?…ずっと、知らないフリをして心配して、わたしの言葉を待ってたの?…ああ、誤魔化そうとした自分を殴ってやりたい。

母は身体を放し、腕輪をはめ直してくれるとにっこり笑った。

「この腕輪大事にしなさいね。無理に聞き出すような事してごめんなさいね?わたし達ずっと心配だったのよ」

「レイチェル、今度からは、何でも話しなさい」

「はい、お父様」

「よし、いい子だ」

父は、優しく私の頭を撫でた。


「今日の事は内密にな。レイチェル、良く研鑽(けんさん)したな。これからも頑張りなさい。魔法も時間がある時、見てあげよう」

「ありがとうございます!お父様」

「そうね、予想以上だったわ。でも、籠ってばかりいないで顔を見せてちょうだいね?」

「はい、そうします」

「あの魔法には驚いた。この部屋もスキルもだけど、僕も負けてられないな!いざと言う時に守れる様にもっと研鑽しないと…また、あの魔道具も見せてくれ」

「はい!お兄様!では、一緒に魔力操作を訓練しましょう!」

「え?!魔力操作だって?」

「「!!!」」

2年も前から魔力操作の特訓をしている事を話すと3人はまた驚いてしまった。





その日の夜

談話室でジェイク(父)、ソフィア(母)、ルーカス(兄)の3人は、レイチェルの事を話していた。

もちろん、防音障壁をはり内密に。


「レイチェルは、特別な娘かもしれないな。守ってやらなくては……」

「はぁ、僕は……、もう直ぐ王立学園に行かないといけないのか…。側に居てやれなくて残念」

「あの能力を悪用されたり騙されない様に今から教育しないといけないわね」


「全属性持ちか……確か、初代の王がそうだったな」

「初代の王ですか…。僕も王立学園の図書館で色々調べてみるよ」

「まずは、全属性持ちだとバレない様に魔力制御から教えるわね」

「ああ、頼むよ」


「将来は、殿下が守ってくれるだろうが……それまでは、普通の令嬢として過ごさせてやりたいからな」

「僕は心配ですよ。今の殿下じゃレイチェルを守れないと思います。色々噂になってますから」

「そうね…どちらも強くなる必要があるわね。それにしても、あの不思議な部屋、まだまだ色々ありそうね。ふふふっ」

「そうだな、驚きすぎて笑えてきたな」

「僕の妹は、見ていて飽きない。ハハハッ」


「レイチェルを嫁にやりたくないなんて言ったら殿下は、怒るだろうな……」

「殿下に、この事を全部話すのですか?信用していいのでしょうか…」

「どれだけ想ってくれていても、大事な娘を何度も泣かせるような人だったら許さないわ」

「そうだな。まぁ、レイチェルを守る為に殿下を味方につけるのも、いい事かもしれないが。幸せになってくれる事が一番だよ」

「そうね」「そうですね」


三人は、しばらくこれからの事を話し合いお茶を飲み終わると談話室を後にした。

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