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2.わたし実は


私は、ジェイク・クローズ伯爵の次女として生まれた。

母親譲りのハニーブロンドの髪と父親譲りの青紫の瞳をした、ちょっと変わった普通の少女だった。

優しい両親と美男美女の双子の兄姉に囲まれ、次女と言う事もあって厳しく躾けられる事もなく結構自由に暮らしていた。


私が10歳の誕生日を迎えた頃から平穏な生活は少しずつ変わり始めた。


この世界では、10歳の誕生日を迎えた子供たちに、女神様から祝福されスキルを授かる事ができる。

そのため近くの街の祝福の神殿を訪れなければならない。


10歳の誕生日を迎えた私も女神様の祝福を受ける為、父と二人で近くの祝福の神殿へと訪れた。

神殿は、白くて丸い大きなドーム状の建物で、父は私の手を引いて神殿に入ると長い赤絨毯を一緒に歩いて奥へと進んだ。

神殿の奥には、美しい女神様の像が立っていて少し不安になった私は、キュッと父の手を握った。


「お父様…」

「大丈夫だよレイチェル、今から女神様が祝福をくださるんだよ?安心して行って来なさい」


私はコクリと頷くと、今度は側にいた神官様に手を引かれ祈りの間へと連れていかれた。

天井の高い白い部屋の真ん中には、とても大きなクリスタルで作られた女神像が立ってすごくきれいだった。

神官様に女神像の前まで連れていかれると、「ここで女神様に祈りを捧げなさい」と言われ、

私は、両ひざをつき両手を胸の前に組んで祈りを捧げた。

(どんなスキルを貰えるのかな)

ドキドキしながら目をつむる。


しばらくすると、身体が少しぽかぽか温かくなるのを感じ、次の瞬間ズキンズキンと頭痛がした。

(んっ?!あ、頭が…痛い…。スキルを貰うのって大変なのね)

我慢できない痛さではなかったけれど、それよりも、ズキンズキンと痛むたびに、頭の中に知らない記憶が流れて来た……

(え?なにこれ、あれ?……そんな)

私は、祝福の儀式の最中、前世の記憶をゆっくりと思い出した。


それは日本と言う国で育った記憶。

家族や友達、自分の死因などを深く知ろうとすると、ズキンズキンと頭が痛み 私は、フッっと意識を失った。



私は、真っ白な何もない空間で目を覚ました。

(あれ?ここは…どこだろ?)

起き上がって見上げると、シルバーグレイのふわふわした長い髪を揺らし、黄金色の綺麗な瞳をした美しい女性がウサギの様なもふもふの動物を抱いて空からふわりと降りて来た。


まったく、訳が分からない。

私は確か、女神様の祝福を受ける為に神殿に来たはずだった。

どうして、こんな事になってしまったのだろうか。

とりあえず、目の前の女性に問う事にした。


「あなたは…だれ?」

「わたしはこの世界の女神です」

「女神…さま?」

女性は、そうですと言ってにっこり笑って頷いた。


女神様の話では、この世界で生まれるはずだった神獣が、手違いで別世界(地球)で生まれてしまったらしい。女神様はすぐに神獣を助ける為、近くの森へと誘導している最中、道路に飛び出してしまった神獣を私が身を挺して助けたのだと言う。

女神様の申し訳なさそうな顔を見て察するに、私はその時、車か何かにひかれて命を落としてしまったのかもしれない。


「この子を助けてくれてありがとう」

「どういたしまして?」と返事を返した。


私には、その時の記憶はないけれど神獣を助けられた事は良かったと思う。

そして、女神様は話を続けた。


「助けてくれたお礼をする為に、あなたの魂を私の管理する世界で転生させました。スキルとは別に私の加護を与えましょう。転生したあなたに沢山の幸せがあらんことを」

「ありがとうございます。女神様」


(そうか、わたし転生しちゃったんだね…)


女神様は、優しく微笑むと眩しい光につつまれ、私もまた意識がゆっくりと遠のいて行く。

(あれ?そう言えば、お礼の加護って…なんだったんだろう?…)

『 あなたがほしいものを1つ思い描いて、それが加護になるわ 』

薄れゆく意識の中で女神様の声が頭に響いた気がした。



意識が覚醒して目を開けるとそこは、見た事もない部屋のベッドの上だった。

「レイチェル!目が覚めたのか?ああ…よかった…」

「ん…、あれ?お父様、ここは…?」

「祈りの途中で倒れたんだよ。ここは神殿の医務室だよ」

(そうか、倒れたのか…)

「まだ、もうしばらく休んでいるといい。帰りの馬車を呼んであるから気分が良くなったら邸に帰ろう」

「はい、お父様…。あのところで、わたしのスキルは何だったのでしょうか?」

(まさか倒れたから貰えなかったとかないよね?)

「ああ…お前のスキルは『扉』だ」

「ふぇ?『扉』…ですか?…とびら…とびらって?」

「神官様にも聞いてみたんだが…どんなスキルか分からなかった。きっと、レイチェルの為に女神様がくださった特別なスキルなんだよ」

父はそう言うとにっこり笑って私の頭を優しく撫でてくれた。

(まぁ、分からないものは仕方ない…。帰ってゆっくり考えようかな)

前世の記憶を取り戻したせいか、物事を落ち着いていて考えられるようになった。



帰りの馬車の中、いつもより大人しい様子の私を心配した父に何度も「大丈夫か?」と聞かれたがニッコリ笑って「心配かけてごめんなさい。もう大丈夫」と返事をした。

まだ少し馬車に揺られると頭が痛むが我慢できないほどじゃない。


(ああ……情報量が多すぎて整理しきれない。頭が痛いのはきっと、このせいじゃないかな?)


痛みが続くようならお医者様に見てもらおうかな。

記憶が戻った事で分かった事は、今世は前世に比べ発展はしていないもののラノベでよくある魔法の世界だと言う事だ。



さすがに今は家族には言えないけれど、言える日がくるだろうか?

私は、窓の外を眺めながら心の中でため息をひとつついた。

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